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第2話、イワシ
メグミは空を見上げた。
白い靄が、空に見える。
”超特大台風”が過ぎ去った後、ある理由でとてもでないが飛行艇を飛ばせない。
「電子機器が使えないな」
「しばらく様子を見るか」
飛行艇の翼のハッチの一部を開いて、テントにした。
竿を出してルアー釣りを始める。
30センチ大のイワシが釣れた。
イワシのワタを抜いて串刺しにして、簡易コンロで焼く。
「レーションばっかじゃ嫌になるからな」
突然、スコールが降り始める。
慌ててテントに入った。
しばらくすると雨は止んだ。
一日待っても空の状態は良くならなかった。
「仕方ないな」
飛行艇の真ん中に、ハンドルを回してエル字型のマストを出し、帆を張った。
”水無月”をヨット状態にして、基地の方向に進みだした。
「早く空に上がりたいなあ」
メグミは一人ぼやいた。