第14話、ボーンスター
スーパーハリケーン一過、晴天である。
”文福茶釜”は二本のマストに、帆を一杯に張って快走中だ。
帆の調節は、”気象部”が収集したデータなどを使って半自動で行われる。
風が強い時では、スクリュー推進より、船足が出るときもあった。
風が十分吹いていないときは、”半帆、半暗車”航行を行う。
「きれいだね~」
青い空を背景に、白い帆のコントラストが美しい。
フライトジャケットから、煙草とオイルライターを出した。
煙草の箱には”ボーンスター”と書かれていた。
ピン、ヴォッ
煙草に火を点けた。
「ふーーー」
白い煙と共に、精神を安定させる香りが、周りに漂う。
◆
特定保健用嗜好品、合成煙草”ボーンスター”
限られた土地の中で、植物の煙草を育てることは無理である。
そのため主原料は、”魚の骨”で作られている。
本物の煙草に比べて、味、香りともにかなり再現されているらしい。
常習性は当然なく、吸い続けると骨が強くなる。
フレーバーとして、ビタミンCを含んでいるものもあり、政府は船乗りに”喫煙”を推奨している。
◆
「ん。となりいいかな」
トウジョウ艦長が近づいてくる。
「どうぞ」
懐から、くちゃくちゃになった”ゴールデンフィッシュ”と書かれた煙草を出した。
大きく黒く塗りつぶされた魚の絵が描かれている。
マッチ箱を取り出し一度振って、カラリと音をさせてから、取り出して火を点ける。
トウジョウは、甲板端の手すりにもたれながら、煙を吐いた。
「ヒイラギ准尉のこと、ありがとね」
「パイロットは、もう一人いたんだけど飛行時間がそんなに変わらなくてね」
メグミの表情が微妙に曇った。
「ああ。いや、もう一人は今、結婚して、新婚旅行に行ってるよ」
他、色々話していると
「艦長っ」
カオリ大尉の声が聞こえてきた。
「おっと。サボってるのがばれちゃう」
天気が良ければ明日、離艦することを伝えた。




