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[画像付き] 気象観測員『メグミさん』。 地表のほとんどが海に沈んだ近未来の地球で、日々がんばってます。  作者: トウフキヌゴシ
第一章

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第10話、ヒイラギ

 トウジョウ艦長に呼ばれて来たのは、10代半ばの小柄な女の子だった。


「に、日本陸軍”観測部”所属、ヒイラギ・サカイ准尉でありまひゅ」


 ・・・噛んだ。


 ガチガチに緊張している。

 ショートカットの黒髪にくるくると回る大きな目が、小動物を思わせる。

 茶色の、ウェットスーツにもなる飛行服を着ていた。


「見ての通り、彼女は訓練学校出たての新人でね」

「飛行時間も短いんだ」

「幸い。うちの飛行艇は”水無月”のH(複座)型だし」


 ちなみに、メグミの機体はT(単座)型である。


 ”観測部”の仕事は、今回メグミが協力したように”測距”や”偵察”である。


「”気象部”は、腕っこきのパイロットが揃ってるでしょう」


 任務の性質上、”気象部”は単独行動が多い。

 経験も豊富になる。

 また部署ごとに必要とされる技能が異なるため新人を育てるときは、技能の偏りを防ぐため、他部署の人間も関わる。

 俗に言う”カッコウ”や”托卵”と言われるものである。


「・・・大した腕でもないんだけど」


「いえいえ。今回の”測距”は素晴らしかったですっ」

「ほぼ、一回のレーザーの照射で測れたって感心してました」

 ヒイラギが前のめりに言う。


「分かりました。最悪スーパーハリケーンを”潜水”でやり過ごすけど大丈夫?」


「大丈夫でありますっ」


(元気ね~)


「これより、ヒイラギ・サカイ准尉は、メグミ・タチバナ中尉の指揮下に入ります」

「しっかり学んできなさい」

「うちのヒイラギをよろしくお願いします」

 他にも、”出発前にトイレに行け”とか、”忘れ物はないか”とか、”体調は大丈夫か”とか、”お守りは持った”とか、細々と言っているカオリ大尉を見た。


 艦の副長が”オカン”や”オフクロ”と陰で呼ばれる理由が何となく分かったような気がした。



 艦右舷の飛行艇格納庫に来ている。

 ”水無月”H(複座)型は、機首が伸びてキャノピーが横開きになっている。

 陸軍の茶色のカラー(海軍は群青色)が新鮮だ。

 後部座席のメインモニターを、持ってきた”気象部”のものに変える。

 重力に対して90度、横向きの後部座席に這うように座った。

 横転式の格納庫は新人にとって鬼門だ。


(お手並み拝見ね。落ち着いてできるかしら)


 ヒイラギも前部座席に這うように座る。

 すぐに、シートベルトを着けた。


「こちら、”子狸”。格納庫の扉を開いてください」


「こちら”親狸”了解」


 格納庫の扉が上に開く。


「機体を水平へ」

 前後のアームが90度倒れ、機体が水平になる。


「着水させてください」


「おっと。先に翼を開きなさい」

 メグミがレバーを操作して、折りたたまれていた翼を開く。


「ありがとうございますっ」


「アーム収納してください」


「アーム収納」


「”水無月”着水」


「着水を確認」


「”水無月”エンジン始動」


「”水無月”幸運を。メグミ中尉。”子狸”をよろしくお願いします」


「了解。まかされて~」


 ゆっくり”文福茶釜”から離れた。


 二人は、横開きのキャノピーを手動で閉める。

 あまりいいことではないが、メグミは目視でなるべく確認したいため、低空ではキャノピーを閉じず、シートベルトも極力しない癖がついている。


 ヒイラギは、エンジンの出力を上げ離水体勢に入る。

 青い海面に白い筋を残して”水無月”は離水した。


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