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悠遠物語  作者: オワタ
第一話 港町ポルトフィーナ
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第一話 6ページ目


 メモリル街道の先。

 ベルク平原はそこにある。

 ピア達も舗装された道を外れてベルク平原へと足を踏み入れた。

 地図に沿っていると確かにモンスターは少ない。

 しかし全くいないわけではない。


「マリネちゃん、これ、白花のポプリ。使うと弱いモンスターが近寄ってこなくなるの」


 ピアがポプリを開けると辺りに少し甘いような何ともいい香りが漂う。


「よし、それじゃあせっかくだから、お薬の材料を集めよっか」

「そうね、薬屋ならお薬がなきゃ始まらないもんね」

「それじゃあ、すっきりハーブの材料を集めよう!」

「他にもよさそうなものがあれば拾っていきましょ」


 ポプリに守ってもらいながら薬草を採集していく。

 シャミア草にポプロの実、薬草やピポの実。

 ついつい採集に夢中になってスライムに襲われたり。


 二人は危なっかしい動きでとても弱いスライム相手に攻撃してみたり、反撃を食らって逃げ回ってみたり。

 ピアの杖もマリネの弓もスライム相手にさえあまり効いていたなかったが、それでも何度も攻撃すれば倒せた。


 日も傾いてきたころ、二人は街道で休憩していた。

 マリネがカバンの中のアイテムを数える。


「ふう、何とか無事に材料が集まったね」

「うん! 材料は揃ったからあとは作るだけだね」


 来た道を逆に歩く。

 夕焼けに染まる海はきれいで見とれてしまう。

 しかしきれいなものは刹那。すぐに日は沈み、街灯がつき始める。


 ピアは帰ると得意の錬金術を始める。

 材料にゆっくりマナを通して行き渡らせる。

 これをすることで誰でも簡単に使えるようになる。

 失敗すると爆発してしまうので慎重に……


「できた!」

「やったね!」


 ピアの手元の光が消えるとそこにはすっきりハーブがあった。


「それじゃ、さっそくお店を開こう!」

「ちょっと待ってピア! もう夜よ、こんな時間に営業してもお客さんは来ないわ」

「え~!? そんな~!?」

「とりあえず今日は休みましょ、営業は明日からでもいいじゃない」

「うぅ…… そうだね、今日はもう寝ちゃおう」


 翌日、ピアの魔法店は盛況だった。


「いらっしゃいませ!」


 小さな棚に目いっぱい商品を載せてみたものの、品ぞろえや数は少々劣る。

 知名度もそれほどないためお客さんの数も少ない。

 それでも接客するピアはすごく充実して見えた。


 数が少ないこともあり、お店を閉める頃には売り切れていた。


「よーし、これでお店の経営はバッチリだね!」

「すっきりハーブも売れてよかった♪」


 マリネもかんばって採集した成果にご機嫌だ。


「よーし! これからどんどん物を売ってお店を大きくしていこう!」



 そんな生活を始めて数日。

 今日のお店は早めに売り切れ、ちょっと一服していた。

 いち早くお菓子を食べ終えたマリネは、ピアの持ってきた伝言板に興味を示した。


「ピア、思ったんだけど……」

「ん、なあに?」

「そこの黒板って何に使うの?」

「あ、これね。村にある私のお店で使ってた伝言板なの。店に誰もいないときは、そこに欲しい薬と名前を書いておけば後から配達してたんだよ」

「ふうん、面白いサービスね。この街でもやるの?」

「ううん、小さな村だからできたことだし…… 街を見ただけでも迷いそうなのにここでやるのは無理だよ」


 それに名前も覚えきれないしと付け足す。


「今はお母さん一人で店番してるから、もういらなくなっちゃってさ。だから、なんとなく持ってきただけなの」

「……う~ん、でも、ただの飾りにしておくのはもったいないわ」

「なら、マリネちゃん、何か必要なものがあれば書いておいたら届けてあげるよ」

「必要なもの……」


 しばらく考え込んでいたが、思いついたのかパンと手をたたく。


「……!」

「マリネちゃん? どうしたの?」

「書いておくね!」

「う、うん……?」


 何か熱心に書いていたマリネが満足したように掛けなおして去った後、ピアも掲示板を覗いてみる。


「ミッションボード……?」


 掲示板にはミッションボードと大きく書かれていた。

 その隣にはデフォルメされたピアの似顔絵が。

 さらによく見ると隅の方に日直マリネと。

 そして中央には、


「ピア、欲しいものがあるの!  マリネ」


 と書かれた紙が張り付けてあった。


 ピアはその紙を手に取り、マリネに持っていく。


「ちゃんとミッションボードを見てくれたんだね」

「えっと…… 話を聞く前に、ミッションボードって何なの?」

「ふふ、よくぞ聞いてくれました!」


 マリネは胸を張って解説する。


「ミッションボードとは、いわゆるミッションを受けるボードなのよ!」

「説明がそのまんま過ぎるよ!?」

「冗談はさておき、何とかピアの伝言板を近い形で再利用できないかと考えたの。それで、私達ってお店開いたり、ダンジョンに行ったりいろいろなことしてるじゃない? 微力だけど、私もピアのアイテム集めとかを手伝ってるけどさ……

 私だってピアに頼みたいことがあるわけ」


 ビシッとポーズを決めるマリネ。


「そこで、このミッションボードの出番なの! 何かお願いがあるときにミッションボードに依頼を書き込んでおくから、ピアには暇なときにミッションを受けて、私のこと手伝ってほしいの」

「なるほど、私が村でやってたことと似てるね」

「これならピアの手の空いてるときにできるしね」

「うん、分かった」


 さて、改めてミッションを始める。


「それで、マリネちゃんの欲しいものって? 何を作ればいいの?」

「プリン!」

「……え?」

「プリンが食べたいの! だからピアに作ってほしい!」

(お薬じゃないの~!?)

「ま、いっか。それぐらいなら私にも作れるし」

「自分で作れれば苦労しないんだけどね…… この前作ろうとしたら爆発しちゃった」

(どうやったらプリンを爆発させられるの!?)

「と言うわけで、プリンを二つお願い! 出来たら、報告してね」


 プリンを作るのに必要なものはたまごとミルクと甘いエキス。

 たまごとミルクは確か雑貨屋に売っていたので買いに行く。


「いらっしゃいませ~ 何買っていく?」

「えっと、たまごとミルクと……」

「まいどありがとうございます」


 どうやら甘いエキスはここでは売っていないらしい。


「甘いエキスですか? ここでは扱ってないですね~、でも簡単に作れるアイテムらしいですよ。図書館で作り方を調べてみたらいかがでしょうか?」


 との情報をもとに図書館へ。


「いらっしゃいませ、何か買っていきますか?」

「あれ? ここって本の販売もしてるの?」

「ええ、スペースの都合で棚に置けなくなっちゃった本を処分してるの。とはいっても大したものは売ってないんだけどね、処分されるのは、大抵人気のない本だから」

「へぇ…… どれどれ……って、上級錬金術師のレシピ本!?」

「ね、もっと一般的な本置けばいいのにね。そんな難しい本なんて誰も読まないわ。もし興味があるならいつでも来てね」

「ところで甘いエキスのレシピってありますか?」

「ええ、一番手前の本棚にあったはずよ」


 館員さんの教えてくれた辺りを探す。


(あった! これならわたしでも作れそうだね)


 材料のピポの実も手元に十分にある。

 あとは作るだけだ。


「マ~リネちゃん、プリン出来たよ」

「おおっ、この黄金はまさしくプリン!」


 ピアも錬金術に失敗して2回爆発させたことは秘密だ。


「ピア、ありがと! お礼にネットトラップあげるね」

「えっ、いいよ。マリネちゃんには材料集めとか手伝ってもらってるわけだし」

「いのっ、もらってよ、だってプリンがこんなにいっぱい……」


 どこからともなく出てきたスプーンで一口。


「ふふふ、うふふふふ」

「それじゃあ、遠慮なくもらっておくね」

「ごちそうさまっ!」

「もう食べ終わってる!?」

「それじゃあ、これからも何かあったら、こんな感じで頼むからお願いね!」


 マリネは幸せに満ちた顔で言った。

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