表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生吸血鬼令嬢は最強を目指すバトルジャンキー

作者: セフィール

初めて短編書いたなぁ。

 

「マジですか。」

 思わず、そんな言葉が口から漏れでる。

 目の前には、黒髪赤目の美幼女が無表情で立っている。まあ鏡に写った俺なんですが。


 セレーナ=アポプリス

 それが今世における俺…いや、私の名前。歳はたぶん三才くらい。アポプリス伯爵家の長女である。

 将来有望な容姿と、上級貴族に分類される伯爵家という家柄。今世は人生イージーモード!…とは残念ながらいかない。むしろこのままではお先真っ暗である。

 その理由を説明するにはまず、私の前世までさかのぼる必要がある。


 さて、私が転生者であることはみなさんもうお気づきだろう。前世の『俺』はまあ、しがないサラリーマンだった。

 そんな『俺』の趣味はもっぱらゲームにラノベ。もう暇さえあればゲームしてラノベを読んでいたな。

 そしてそんな『俺』が特に気に入っていたゲームがある。

 それは『悠刻物語』。『俺』が死ぬ前までは全部で5シリーズあった。

 どのシリーズも、舞台となるのは同じ剣と魔法の世界。

 シリーズⅠとⅡは典型的なRPG。違いは敵が、魔王軍か悪の帝国かの違い。

 シリーズⅢは、決まったシナリオが存在しない。とにかく自由度がはんぱなかった。生産で神器を作るのも、商売で億万長者になるのも、建国して天下統一するのも何もかもが自由。

 シリーズⅣも自由度がかなり高かった。Ⅲとの違いは、主人公の初期設定をかなり自由にできること。Ⅲでは性別と、四種類の人類種しか選べなかった。人類種っていうのは、人間とエルフとドワーフ、そして獣人だな。それがⅣではなんと、魔物を選ぶことができる!スライムやゴブリンはもちろん、吸血鬼や巨人、はてはドラゴンなんてのにまでなれる。まあその代わり人類種は選べなかったが。


 そしてシリーズⅤ。このゲームはなんと乙女ゲームなのだ!身分の低い主人公、ヒロインが身分の高いイケメン達と恋に落ちるあれだ。舞台はとある王国の学園。13歳から15歳の貴族は入学が義務付けられていて、平民でも裕福な商家の子息子女や、特別優秀な者なら入学が許されている。ヒロインは珍しい属性である聖と光、そして膨大な魔力を見いだされて入学してくる平民だ。

 そしてこのゲームには、悪役令嬢がいる。悪役令嬢、それは身分違いのヒロインとイケメン達が、ハッピーエンドにたどり着くための踏み台。もはや乙女ゲームには必要不可欠と言えるキャラだ。このゲームには、そんな悪役令嬢が複数人いる。その一人に、セレーナ=アポプリスという伯爵令嬢がいる。

 うん、私のことだね。


 いやほんと勘弁してほしい。なんでよりによってセレーナなのか。悪役令嬢なら他にもっといただろ。悪役令嬢なのは、まあまだいい。たいていの悪役令嬢はエンディングまでに破滅するけど、それは自業自得なことが多い。つまり、ヒロインに理不尽な嫌がらせでもしなければ破滅することはない。まあシナリオの強制力みたいなのがあれば別だけど、その場合は何をしても無駄だからある意味悩まなくて済む。

 しかしセレーナはだめだ。なんせゲームのセレーナは、進んで悪事を働くようなことはまず無い。攻略キャラを巡って、ヒロインと対立することもない。ではなぜ悪役と呼ばれているのか?

 実はどのルートでも、ヒロイン達の前に敵キャラとして立ちふさがるからである。

 実はセレーナは先祖がえりの吸血鬼である。

 そのため、吸血鬼の象徴ともされる暗闇で光る血のように赤い目を持っている。そしてこの赤い目、両親のどちらとも持っていない。セレーナが吸血鬼の先祖がえりなのだから、両親のどちらかに薄いながらも吸血鬼の血が流れているということである。ならば親戚に似た色あいの人物がいてもいいものだが、それもない。そのため両親に気味悪がられ幼い頃から両親と別居。さらに髪は、不吉の象徴ともされる黒。目と相まって、世話をする使用人からも気味悪がられ、愛情も親の顔も知らずに育ったセレーナの表情筋は死んだ。黒髪赤目に無表情、そこに病的なまでに白い肌が合わさり、その姿はより不気味に見える。

 しかもである。入学前に調べられる判定試験で、闇属性を持っていることがわかる。さらにその魔力はかなり高い。闇属性は精神に作用する特性に加え、人類の敵である魔族や吸血鬼などが持つことが多い。さらに歴史上悪名を轟かせた人間の中には闇属性を持つ者が多かったこともあり、忌避されることが多い。

 そしてセレーナは学園でも孤立した。


 しかしセレーナの不幸は終わらない。

 孤立するだけならばまだ良かった。

 何せ何か事件があるたびに、セレーナがやったとまことしやかに噂されるのだ。

 例えば魔物を狩る授業がある。そこで強力な魔物が出没するのだが、それをセレーナが闇魔法で操って連れてきたと言われる。

 魔法学園の生徒が何者かに襲われれば、犯人はセレーナで、血を吸うために襲ったのだと言われる。

 攻略キャラが毒を盛られれば、セレーナが仕込んだと言われる。

 さらに悪いことに、これらの噂をしている者の中には、学園の教師や身分の高い攻略キャラまでいる。

 そんなセレーナは、当たり前だがゲームではどのルートでもろくな目に合わない。まあ噂だけでもひどいが、それだけじゃない。

 例えば上位の魔物の血を無理やり飲まされ吸血鬼として覚醒、吸血鬼の本能に理性を飲まれて暴れまわり、ヒロインに殺される。

 邪神復活の生贄にされる。

 召喚された悪魔の器にされる。

 闇の錬金術師に人体実験される。

 勘違いで聖騎士に殺される。

 学園卒業後、両親に変態貴族へ売られる。

 な?終わってるだろ?

 なにもしなくても悪者にされ、殺される。

 そうじゃなくても変態貴族に性奴隷のように扱われる。ろくな未来が待ってない。


「はぁ」

 思わずため息が出た。前世と違い、とても可愛らしい声である。

 改めて鏡を見てみる。三才ながら将来絶世の美女になることがうかがえる美貌。漆黒の髪は、あらゆるものを呑み込む深海のよう。赤い目は、ルビーのように煌めいている。肌は病的なまでに白く、シミ一つ無い。

 我ながらかなり可愛い。

 さて、現実逃避はこれくらいにして、これからのことを考えるか。

 どうすれば幸せな将来をつかめるか。

 その前にまずは、どうすれば悪者にされないようになるか、かな。

 偏見を無くすしか無いが、これは難しいというかほぼ不可能に近い。貴族とはいえ親の後ろ楯など無いに等しい小娘が何をしたところで、大勢の人間の考えは変わらないだろう。

 つまり無理。

 次にどうすれば殺されないようにできるか。

 常に安全なところいれば大丈夫かと言えばそうでもない。まず、セレーナは入学中寮に入るのだが、なんと貴族用ではなく平民用の方に入れられる。なんでも両親が寮代をけちったかららしい。

 そして平民用の寮は貴族用に比べて警備が甘い。一番警備が厳重なのは学園の中だが、まさか学園で寝泊まりするわけにはいかない。

 よって無理。

 次にどうすれば売られないか。

 入学中に婚約者を作る?嫌われ者を婚約者にしてくれる寄特な者がいるとは思えない。伯爵家の援助などを期待する者ならあるいはとも思ったが、そんな損しか無い婚約両親が認めないだろう。

 というわけで無理。


 ヤバイ、あっという間に打つ手が無くなったぞ。

 え、詰んでね?

 転生特典のチートでもあればどうにかなったかもしれないが、少なくともそういった物に心当たりは無い。ステータスやメニューなどと言ってみたり、色々念じてみたりもしたが何も起きなかった。もしかするとあるのかもしれないが、分からなければ無いも同然。

 いや、待てよ?チートならあるじゃないか。ゲームの知識というチートが!

 それもシリーズⅠからシリーズⅤまでの!

 この知識を使えば、全ての問題が解決するかもしれない。

 圧倒的な力を手にいれて、周囲を黙らし、敵は打ち倒す。

 そんな力を手にいれれば、きっとなんとかなるはず。

 よし、私は最強をめざす!




 というわけでまずは情報収集。自分の年齢すら定かじゃないというのはだめだろう。

 で、邸を探索しようとドアを開けて廊下に出たところ、ちょうどメイドさんが掃除をしていた。

 よし、さっそく聞きにいこう。


「ねえ。」

「ッ!」


 私が近づいて声をかけたらビクッてした。そんなに驚かなくてもいいと思うんだけどなぁ。


「な、なんでしょう。」

「私って何歳?」

「え?」

「私って何歳って聞いてるの」

「え、あ、はい。三才かと。」

「誕生日っていつ?」

「え…」

「誕生日っていつ?」

「え、あ、そのう、わ、わかりません。」

「そう、じゃあ誰なら知ってる?」

「め、メイド長なら知ってるのではないかと。」

「なら、メイド長はどこにいるの?」

「確か、執務室ではなかったかと。」

「執務室はどこ?」

「二階の真ん中だったはずです。」

「そう、わかったわ。ありがとう。」

「え、ええ。」


 なるほど、メイドでは私の誕生日を知らないのか。それにしても、あのメイドさんめっちゃビクビクしてたな。そんなに怖いかね?無表情だからか?

 話し方が淡白というか、素っ気ないのは許してください。私はコミュ症なんだ。

 さて、それじゃあ執務室に行こう。

 ちょっと迷ったけど執務室に着いた。

 で、入る。

「ちょっと、入る時はノックを…これはこれはお嬢様。ここはお嬢様が来るところではありません。お部屋にお戻りください。」


 執務室に入ると、部屋の奥で書類整理をしている男性と女性がいた。その女性の方がおそらくメイド長だろう。

 そしてこの推定メイド長、なるべく私に近づきたくないらしく私に部屋に戻るように言ってくる。

 まあ無視するけど。


「ねえ、私って何歳?」

「はい?」


 まずは確認。あのメイドさんが間違えてる可能性もあるからな。


「私って何歳って聞いてるの。」

「…三才ですが。」

「じゃあ誕生日はいつ?」

「初の月1の水です。」


 初の月1の水、か。

 ちなみにこの世界。一年が390日である。一月が30日で、一年が13ヶ月。そして曜日に値する物は六つあり、火水風土光闇の順番である。

 初の月1の水というのは、一年の初めの月、つまり1月の一回目の水の曜日というわけ。分かりやすく言うと1月2日だね。


「じゃあ今日はいつ?」

「四の月3の風でございます。」

「そう、ありがとう。」

「いえいえ、それでは用事が…」

 バタン


 早く出ていってほしそうだったので、最後まで聞かずにすぐに出た。追いかけてくる様子もないし、別に良かったでしょう。とりあえず、知りたいことは知れたね。


 さて、それじゃあ夜まで寝るとしようかな。

 え?そんなことしてていいのかって?当たり前じゃん。なんせ私は吸血鬼。本来、日が昇ってる間は寝る時間だよ。それに人目につかないよう夜に活動するつもりだから、今からちゃんと寝ておかないと。

 そもそも起きてするようなことが無いんだ。三才の私では、まだ読み書きを習ってないから本も読めない。筋トレは無駄とまでは言わないけど、今夜からすることと比べれば非効率極まりない。それに夜のためにできるだけ体力は温存しておきたい。


 とまあこんなわけで、寝るのが一番という結論に至ったわけ。

 それじゃあおやすみ~。




 夜になった。

 それで何をするかと言えば、まずこの邸を抜け出す。

 そして、近くに魔物が出る森があるはずだからそこで魔物と戦う。

 基本的にこれだけ。

 危険?確かに普通の三才児には無謀もいいところだろう。けれどセレーナは吸血鬼。すでに大人に匹敵する身体能力を備えている。弱い魔物相手ならそう難しくないはずだ。

 それに、最初の難関さえクリアすれば死ぬ危険がぐっと低くなる。


 というわけで、邸を抜け出してみた。率直に言おう、警備ザルじゃね?

 確かに私は小さい上に黒髪という闇に溶け込むような見た目だ。それに夜目もきく。けど、裏門に誰もいないのはだめじゃないか?どう考えてもご自由に出入りしてくださいと言わんばかりだ。

 まあ私は助かってるからいいけど。


 門を出ると、そこは森だった。運がいい。

 こんな邸のすぐ近くの森に魔物がいるとは思わないけど、なにかしら動物はいるだろう。案外簡単に、最初の目標が達成できるかもしれない。


 森に入ってしばらく。

 そこで私は、魔物と対峙していた。

 その魔物の名は、『シルバーフォックス』銀色の美しい毛を持つ狐のような魔物だ。ゲームにも出てきた魔物だ。シルバーフォックスは、そこまで強力な魔物ではない。けれどそれは、戦いを生業とする大人にとってはだ。せいぜい大人の女性程の身体能力しかなく、戦いを知らない私には荷が重い相手だ。けれど、勝たなければ死ぬ。こんな森の中、狐とおいかけっこして勝てるとは思えない。襲われる前に気づけて良かった。


 私とシルバーフォックスは睨み合う。先に動いたのは、シルバーフォックスだった。その牙が、私ののど笛を食い破ろうと迫る。それに対して私は、左腕を差し込む。私のやわ肌に、シルバーフォックスの牙が突き立てられる。激痛が走り、思わず私の口から苦悶の声が漏れる。けれど、狙い通り。

 今度は私が、シルバーフォックスの首に噛みつく。シルバーフォックスが暴れる。けれど私は構うことなくさらに首筋に歯を…いや、鋭い犬歯を食い込ませる。シルバーフォックスはなおも暴れ逃れようとするが、口内に突き入れた私の腕が邪魔をする。

 そんな攻防に変化が訪れたのは、すぐだった。私の口内に、甘美な味が広がる。熱くたぎるようなその液体は、シルバーフォックスの血。そのあふれでる血を私は、貪るように飲む。もっともっとと血を求め、シルバーフォックスの首に吸い付く。

 血を一口飲むごとに、体の内から言い知れない充足感と、力がわいてくる。


 気がつくと、目の前には干からびたようなシルバーフォックスの死体があった。

 どうやらほぼ全ての血を吸いつくしたらしい。

 そして私は、最初の目標を達成した。最初の目標、それは生き血を啜り、吸血鬼として覚醒すること。私は確かに先祖返りの吸血鬼だけど、完全な吸血鬼とは言えない。先祖返りが完全な吸血鬼になるには、生き血を大量に飲む必要がある。

 私はシルバーフォックスの血を飲み、覚醒したというわけだ。

 覚醒するとどうなるのか?まず、身体能力が飛躍的に上昇した。思いきり垂直跳びをしたら、2メートル程跳んだ。

 もともと夜目がきく方だったのがさらに鮮明に見えるようになった。さすがに昼間と同じようにとまではいかないけれども。

 治癒力も上がったのだろう。シルバーフォックスに噛まれた左腕は、今では傷一つ無い。

 それから、犬歯が伸びた。もともと人にしては長く鋭かったが、それでも不自然な程ではなかった。それが今では、明らかに人間じゃないとわかる程。


 うん、無事に覚醒できているね。それじゃあ確認を終えたとこで、次の獲物を探そう。

 え?覚醒したら終わりだと思った?そんなわけがない。

 この世界の生き物は、他の生き物を殺すことで強くなることができる。さらに吸血鬼は、強い生き物の血を摂取することでも強くなれる。

 つまり、強くなるには戦って殺し続けて、血を飲みまくること。

 これが私にとっては最適だ。

 そういうわけで、今日から毎晩狩ざんまいだ!






 それから4年経ち、私は7歳になった。

 邸での私の扱いは相変わらずである。極力誰も関わってこない。まあ私にとってはむしろ好都合だけど。

 あれから私はひたすら強い魔物と戦い続けて、殺した魔物の血を飲み、順調に力を高めていった。さらに魔法もある程度使えるようになって、かなり強くなったと思う。

 そこでそろそろ次の段階に進もうと思う。


 というわけでやって来たのは、おそらく存在を知ってるのは私だけだと思われるとある遺跡。邸からはかなり離れた山にある。

 え?どうやってここに来たのかって?飛んで来たんだよ。吸血鬼として覚醒した私には、蝙蝠のような羽を自由に出し入れできる能力が備わっている。最初はよく墜落していたが、練習したおかげで今では空を自由に飛ぶことができる。

 さて、ここで何をするかと言えば、魔眼の取得である。

 ここには暴食の悪魔、ベルゼブブが封印されている。そのベルゼブブと契約して、魔眼を授けてもらおうというわけだ。

 対価に払うのは、私が今まで殺してきた魔物の死骸である。

 暴食王の魔眼取得、完了。


 次にやって来たのは、とあるダンジョン。ダンジョンはまあ、魔物がたくさん出て不思議な現象が起こる場所だと思っておけばいい。ここでは邪眼の魔物、イビルアイを両目に寄生させる。

 岩壁にへばりついている目玉だけの魔物を引っこ抜いて、自分の目に押し付けるのはかなり勇気のいる行為だった。

 無事、イビルアイ2体を寄生させることに、成功。普通そんなことをすれば、目を閉じている時には目蓋に様々な効果、麻痺や火傷などを起こす邪眼を打ち込まれ、目を開ければ目に移る全ての生き物に無差別に打ち込む迷惑極まりない存在になる。

 しかしこのとき、暴食王の魔眼がイビルアイの精神を殺している。よって、自由に使える邪眼を取得したことになる。


 その後、残りの大罪の悪魔が封印されている場所をめぐり、大罪王の魔眼を全て取得。実は大罪王の魔眼は、余程魔眼や邪眼系の能力と高い適性を持つ目でなければ取得できるのがせいぜい二つが限界。無理に取得すれば確実に失明、もしくはもっとひどい目に合う。しかしイビルアイならばその心配は無い。何しろ魔眼や邪眼系の能力に特化した魔物だから、この上無い適性である。

 無事に全部取得できた。


 次にやって参りましたはここ!死呪の竜血沼!

 ここは昔、殺された竜から流出た血に、竜の怨恨により発生した呪が宿った『死呪の竜血』という血が沼となった場所。周囲は草の一つも生えない荒地となっています。近づくだけでも弱い生き物なら死に絶え、強い生き物でも沼に触れれば死ぬ。そんな危険地帯です。

 さてそんなところで私は何をするのかというと。

 死呪の竜血沼に目を開けたまま顔からダイブ!。え?呪?体の力を抜いて、刺激しなければ大丈夫。何せ死呪は、大罪王の魔眼をどうにか殺そうと躍起になっているから。

 実は大罪王の魔眼と死呪には、意思がある。しかも大罪王の魔眼は、いずれ持ち主を殺す気でいる。そんな危ない奴をいつまでも放っておくわけにはいかない。だから死呪に殺してもらおうというわけ。

 目を開けたまま顔からダイブしたのは、魔眼だけを狙わせるため。二つ、いや七と一の意思が争ってるから、すごく目が痛いけど、それを我慢してじっとしてればすぐ終わる。二分程で死呪と魔眼の意思が、相討ちになって消えた。念のため、闇魔法の精神攻撃をしてみたけど、反応無し。どうやら完全に消滅したらしい。うん、予定通り。これで大罪王の魔眼は完全に私のモノとなった。

 さて、それじゃあ死呪の竜血を飲みほすとしますか。はっきり言って最悪な味だけど、強くなるためと思えば耐えられる。

 飲みほしたところで、死呪により体が蝕まれる。意志を砕いたため一時的に弱ってはいるが、死の呪は健在。いくら私が生命力の高い吸血鬼だとしても、じきに死ぬ。その前に、次の場所に行く。


 ここは、忘れられた城。ここには、吸血鬼の真祖が封印されている。しかしその真祖の魂は、長い間封印されていたせいか体を飛び出し、輪廻の廻りに還ってしまった。

 私は、封印の核となっている宝玉を砕き、眠るように横たわっている吸血鬼の真祖の血を飲む。それにより、生命力が爆発的に向上。さらに、真祖の血を飲みほすころには、私は生命として一つ上の存在、真祖へと至っていた。

 それだけではない。死呪の竜血さえも完全に取り込み、あらゆる生命、精神さえも殺す死呪を我が物とすることができた。


 これで私は、かなりの力をてにいれた。あらゆる現象を起こす強力な魔眼。生き物の生命活動に異常を起こす邪眼。あらゆる生命を死滅させ、精神さえも殺す死の呪。吸血鬼の真祖にふさわしい、不死に限りなく近い生命力と強大な力。

 さらに、吸血鬼の真祖の体を覆っていた繃帯と、竜の心臓を貫き死に至らしめた大きな杭が手に入った。

 この繃帯は、かなり丈夫な素材で作られており、さらに特殊な性質も持つ。血を吸わせると、その血の持ち主の思い通りに動くのだ。血を吸うことでさらに頑丈になり、形状をある程度変えることも可能になる。まあこの繃帯を十全に扱おうと思えば、人間では致死量以上の血が必要だが、他の生き物から即座に血を補給できる私にはそこまで難しいことではない。

 そして杭の方。これもかなり丈夫で、さらに私の身の丈よりも大きい。しかし太さはそれほどではなく、私の小さな手でもしっかりと握ることができる。

 竜血程ではないものの、死の呪をはらんでいる。しかし死の呪を我が物とし、死呪そのものとも言える私には効果が無い。むしろ心地いい程だ。

 これは私の武器にする。剣などのように技術がいらず、振り回すだけでいい。

 今まで私は素手で戦ってきたが、これからはこれを相棒として戦うこともあるだろう。


 さて、やりたいことはこれで終わった。日の出までまだ時間がある。よし、新しく得た力と武器の腕ならしでもしに行くか!






 そんなこんなで、竜王や魔王と戦ったり、危険地帯に飛び込んだりしている内に月日が流れ、私は13歳になった。そう、今日は学園の入学式日である。

 9歳の時に会った森の賢者に読み書きを教えてもらったり、10歳の時に助けた辺境伯夫人に礼儀作法を教えてもらっていたから最低限はなんとかなると思うが、子供に何の教育もほどこさずに学園に入学させるとかどういうつもりなのやら。

 まあそんなことはいいか。


 それより、大事なことがある。それはヒロインとお近づきになることだ!

 学園一年目はそうでもないが、2年目以降ヒロインは、強大な敵と戦うことが多くなる。つまり、ヒロインと一緒にいれば私はより強い相手と戦うことができるというわけだ!

 強くなるためには強い敵と戦うのが一番!強敵ホイホイのヒロインとはぜひ仲良くならねばならないというわけだ!


 というわけで、ヒロインが下級貴族の令嬢に暴言を浴びせられるイベントを利用して無事、仲良くなることができた。

 よしよし、今年はヒロインが死なないように守って、来年の強敵をホイホイしてもらおう!



 その後、危ないことに首を突っ込むセレーナを心配しているヒロインが、セレーナの虐げられてきた過去を知り、セレーナは私が守らなければ!と奮起。そんなヒロインに甘やかされ、メロメロになるのは、もう少し後の話。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まさかのTS百合展開、いいですね。 [気になる点] ここで終わりですか。続き書いてみたらいけるかもしれません。
[一言] めちゃくちゃ好みな内容で連載して欲しい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ