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★★★★★  作者: リングプル
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柳川斗志也


チュンチュンチュンチュン


小鳥が囀り、カーテンの隙間から朝の日差しが差し込む。


ここは繁華街近辺にある翼士団集会所の2階。

翼士団の拠点は2階建ての建物で、1階は掲示板のあるホール兼、酒場・飲食コーナーがあり、2階は民宿となっている。


長い廊下が続き、1番奥にある部屋は団長室だ。


2階の民宿部屋の外からは早朝から出店の準備を始める者の声もチラホラ聞こえる。


ベッドの主は毎朝それが目覚ましとなって起きるのであった。



「んっ……」斗志也



「またか……」



眠から覚め、天井を見つめる斗志也は自分の両頬に伝う冷たい水滴に気づき上半身を起こした。


あれから7年経った。

悲しくもないのに、目を覚ますと涙が出ていることが頻繁にあった。


それを服の袖でぬぐう。



「俺は……」



あの日以来、心が壊れたせいか普段の生活やあの時の事を思い出しても涙が出なくなったのだ。


あの光景を思い出す度腸が煮えくり返るほどあの男が憎い。

その後には必ず、何も出来なかった自分の力不足に絶望していたのだ。


あの事件が起こる前から天力を扱う修行はしていた。


なのに死地に立った時、それを発揮できないのならそれは“努力”と言えない事を知った。


全員殺されてもおかしくなかった状況で、今自分がここに居る。


それは櫛灘院長が自分の命を捨て自分らを守ってくれたからだ。


自分の人生の中で櫛灘唯という人物がどれだけ大きかったか、他の孤児院の子達が一緒に居てくれて、笑い合い、大切なものを奪われ辛いという現実から何度踏ん張れたことか。


それは心にあいた風穴と比例している。


だが今はそれを悔やんでる暇はない。



「行くか」斗志也



斗志也は顔と歯を磨き完全に眠気を排除し、戦闘着を羽織った。


戦闘着は文字通り戦闘に適した動きやすい着物だ。

ローブにも似ているがフードは着いておらず、かわりに口元が隠れるくらい襟元が立ち上がっている。



「良しっ」斗志也



靴をはき、1階に降りる。


ホールには昨日馬鹿騒ぎして朝まで酒を浴びるように呑んでいた男達が二日酔いで机に顔を預けていた。


そしていつも通り掲示板を見る

これが日課なのだ。



「…………」斗志也



「今日はまだ誰も依頼を発注されて居ませんよ」



ニコッといつものように同い年位の受付嬢が言う。



「珍しいな。全ての依頼を片付けたのか」斗志也



「はい。それで調子にのって朝まで呑んであの様です」受付嬢



と、酔いつぶれたおじさん達を指さす。



「そうか」斗志也



とだけ、言い残し翼士団集会所を後にする。


そして外へと繋がるドアを開け、ガチャっと閉まるのを確認し。



「スーーーーっ」斗志也



深く深呼吸し呼吸を留めた斗志也は次の瞬間。

スっと、音もなくその場から消えた


のではなく、単に高速で走ってるだけだ。


これを習得するまでに斗志也は7年間、研究と鍛錬を積み重ねてきたのだ。


脳・眼球・肺・心臓・循環器・脚、体の全てに緻密に天力を付加し、強化させる。


そうしないと、空気摩擦・空気抵抗・気圧、その他諸々の問題が生じ、体がバラバラになってしまう。


まずは体全体に天力を付加させる練習から始めた。


先走って、脚と肺と心臓だけにしか天力付加させてないまま走り、全治3ヶ月ほどの大怪我を負ったこともあった。


町中を一瞬で走り抜ける。


これができるようになったのも最近だ。


一般人と衝突した場合、必ず天力付加してない相手を殺してしまう。

殺人的なタックルになってしまうのだ。


対人ならともかく、対物だった場合いは自分が死ぬのは当然。

止まる際にも天力付加で進んでる方向にたいし天力壁な様なものをつくり、天力同士を衝突させ止まるのだ。


他にも、翼士団集会所のすぐ外にあるベンチに座り、目を閉じた状態で、繁華街にいる一般人達の気配を感じるための鍛錬も詰んだ。


そこでようやくこの高速移動ができるようになるのだ。

斗志也はこれを自分で“瞬動しゅんどう”と名ずけた。



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