プロローグ
───和都・某王宮内大広間───
大冠を頭上に備え、大広間に据えられた長テーブルの真ん中に座る男。
現・和国王、榊栄之助は手元に用意された高級そうなワインを少量口に含み、口内で舌を使いソレを咀嚼しつつ自分の参謀者達の会合をオカズに嗜んでいた。
榊を真ん中に、挟むように左に3人、右に4人ずつ席に着く者達は会合の真っ最中。
その7人は真っ黒なローブを羽織っており、顔のほとんどがフードに覆われている。
「5年前から比べると今の兵の数はおおよそ6割程度しかのこっていない。新兵として平民を入兵させたとしても戦場で役にたつようになるまで数年はかかるぞ」
「そうか、だが遅かれ早かれ平民共の力は必要になる」
「私もそう思うわ。何せ全盛期の6割しか兵がいないとなると一気に勢力もおちる。早めに手を打っておくべきだとおもうけど」
「詠美あんたって人はほんとっ!心配性だよねぇ。稜も考えすぎ!使える使えないじゃなくてうちらがどう使うかでしょ?というかさぁ、この七人衆だけでも一国は落とせる力、あるとおもうよー?アハッ!」
「環奈。あなたに、王に仕え国を動かしてる自覚ありますか?これはゲームじゃないんですよ。調子に乗ってると先に足を掬われて死にますよ」詠美
「そうだ。これは遊びじゃないんだ。国王と俺達7人の世界が掛かってるんだ。軽率な発言と行動は慎め」稜
「まぁー、いいんじゃあないの。かてぇ事言ったって作戦が上手くいくかどうかなんて、てめぇらの実力次第なんだしよ」
「黒君。そこまで言うなら戦場に出る前に、君にその実力とやらを発揮してもらいたいねぇ!指揮もとれないような頭じゃ君の隊員達も気の毒だよ?」
「るせぇよっ凜人。俺は戦うの専門なんだよ!バァーーーカ」黒
「まぁまぁ。このメンバーができてすぐ連戦ぶっ通しで攻め続けてるのにまだ1度も負けてないのだから。たまには緩ーくやってもいいとは思うが……。失敗だけは許されねぇからな黒。お前と環奈のその根拠もないのに、なんとでもなる的な発言は本当に足を掬われるぞ。是が非でも俺達はこの世界の頂点に立ち威光を放つ存在になる。」
「はいはい。わかってらぁ。久しぶりに会議で発言したってのによ。俺が悪者みてぇじゃねぇか。お前に恨み買うような事でもしたか?湊都さんよぉ」黒
「俺はただ!戦いしかやらないとか言ってるその発言がだなぁ!!────っっ!!」湊都
話を進めていた7人のうごきがピタッと止まった。
全員、毛穴から熱いような冷たいような心地悪い汗が一気に吹き出た。
これまでにまだ一言も発言していない者が殺気を放った。
この無敵な傑物達の動きを殺気だけで止めた猛者。
改めて格の違いを見せつけられたメンバー達は久しぶりに死線のようなものを感じさせられたのであった。
その男の名を黒鉄進と言う。
「つまらん話を」と言わんばかりにその男は自分の殺気をこの大広間が破裂しそうなほど放った。
「わかったよ。ごめんごめん!取り乱したな!俺が悪かった!」湊都
湊都が我に戻り弁解すると殺気が徐々に引いていった。
体の毛穴から吹き出す嫌な汗と全員の荒い呼吸が、その、恐ろしさを物語っていた。
こいつを怒らせたらヤバいと本能が言ってる。
「ハハっ………。ちょ…ちょっと、休憩しねぇか………?」黒
テンパった勢いだけで適当に喋った黒だが今回だけは意見に全員が賛同した。
「待て」榊
持っていたワイングラスを机に置き、立ち上がろうとした所を呼び止めた。
「今お前達を失う訳にはいかない。だから2人1組になって、各地の手練を和兵に吸収して来い。進、お前は1人でも大丈夫か?兵を付けて行ってもいいがのだが」榊
「1人でいく」進
「ならば決まりだ」榊
「国王さーん。俺達のこと信用してないようだねぇ。俺達だって単独でいっても大丈夫でしょー。この俺を止められる人なんていないんだからさぁ!」凜人
「ふんっ。、さっき進の殺気に怖気着いた奴が何をいうか。まぁよい。好きにしろ。だが何度も言うが失敗だけは許されないからな」榊
「へーーい。了解」凜人
「ならば解散だ」榊
こうして王宮にて、七人衆と国王の会合は終わった。