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流れの武器屋  作者: はぎま
魔物の大移動
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善なる神4

 トトがアイリス達から離れた場所に移動。


 ゆっくり付いてきたルナライトは、黙ってトトを見据えていた。


「ここまで俺を追い詰めて、何がしたいんだよ。お前なら、本気を出せば俺を直ぐに殺せる筈だ」


『神と言えど、万能では無い。出来ぬ事もある。…予期せぬ事もある』


「予期せぬ事…か。お前が来なければ、皆幸せになれたかも知れないのにな」


『…否定はしない』


 ルナライトが両手を天に向ける。

 ブォン!_

 巨大な白い球体…立体魔方陣が出現。

 ゆっくりと回転している。



「…これで決める気か……闇は使わないのか?」


『まだ太陽が出ているからな…異物よ…名を訊こう』


「ん?女神様は俺を覚えていてくれるのか。…優しいねぇ。

 俺は戸橋泰人(とはしやすと)だ…やすキュンって呼んでくれ」


『……禁術…』


 立体魔方陣が輝き、魔方陣から無数の白い筒…大砲が現れ、トトに標準が合わさっていくのが解る。


「はぁ…ルナライトちゃんは、やすキュンって呼んでくれないのかぁ…残念だなぁ…」


 トトが後ろを振り向く。アイリス達を少し眺め、

「じゃあな、みんな」

 笑いながらボソッと呟いた。



『…ホーリーレイ・フルバースト』


 キュィィィイイ!_ダダダダ!_


 無数の白い大砲から、一斉射撃。魔方陣が回転しながら絶え間無く白いレーザーが外側から内側に向かって降り注ぐ。


 ドドドド!_ドドドド!_


 大地が破壊されていくのも構わずに、1発1発が超威力のレーザーが大地を貫いていく。


 圧倒的な力、神の力に、闘いを見ている者は心を奪われていった。


 やがて魔方陣が消え、一斉射撃が終わる。


『……』


 後に残る物は何も無く、破壊された大地だけが残されていた。




 ルナライトが、跪き頭を下げているアイリス達の元へ行く。

 神敵を討った敬意を表していた。


『跪かなくていい。立ってくれ』


「はい_っ!ルナライト様?」


 立ち上がったアイリスを、ルナライトが抱き締める。アイリスは突然の行動に、困惑していた。


「ルナライト様、あの…」

『すまぬ…』


 アイリスは、何故謝られたかは解らない。悲しそうにしているルナライトに、掛ける言葉が思い浮かばない。

 何か良からぬ事があるのだろうかと思ってしまう。


「何故、謝るのですか…神敵は、打ち倒した…のですよね?」


『…生きている』


「_あれだけの攻撃を受けて…生きている…神敵は逃げたのですか?」


『何処に行くかも解らない転移石を使いおった…あれでは何処にいるか解らない。この辺りには居ないだろうがな』


 アイリスから離れたルナライトは、天を見上げため息を付く。人と同じ様にため息を付く姿に、親近感を覚えた。



「では、私達が追います」


『追わなくて良い。奴は必ず戻ってくる。時が経てば…恐らく、ヴァイラに来る筈だ。奴が逃げた事は、今ここに居る者達の中に留めておいてくれ』


「…承知しました」


 神敵が逃げた事は、公表しないで欲しいと言われたら、そうするしか無い。

 女神が自ら手を下すという事だろうか。


 トボトボと遠くから、ルナライトの元へ向かって来るトリスを眺め、ルナライトが手を天に向ける。


『出来れば、あの娘を守ってやって欲しい…時間切れだ…また会おう』


 バシュン_


 ルナライトが光となり、空へ向かっていく。やがて、消えていった。

 ルナライトが消え、トリスがアイリス達の元へやって来た。赤く目を腫らし、女神を睨む様に空を見上げている。

 まだ、涙は流れ続けていた。



「……もう、終わったんですか?」


「ええ…トリスちゃん、大丈夫?どうして泣いているの?」


「大丈夫…じゃないですよ。皆さんの中にはもう…居ないんですね」


 ウサギの杖をギュッと握り、破壊された大地を眺めるトリス。

 少しだけ、未来が見えた。

 トトが女神と闘い、皆の中にあるトトの記憶が消え、トトが居なくなる未来。


「何が聖女だ…何が女神だ…」


 止められなかった未来。

 記憶を消す魔法の欠片は、振り払っても駄目だった。

 どうして自分には効かなかったのかは解らない。

 自分が聖女だからか…そうだとしたら、女神は自分に何を成せというのか。

 悔しくて悔しくて、自分に腹が立つ。


「…女神様は何て言っていましたか?教えて下さい。聖女の私には聞く権利があります」



「神敵は…時が経てば、ヴァイラにやって来る」


「…そうですか…そうですか。…生きていましたか」


 トトは生きている。それが解っただけでも救いだった。

 もし、トトが死んでいたら、この世界を呪っていただろう。

 この世界を壊したいと思う程の絶望を背負う事になっていただろう。

 少しだけ、安心した。希望を持てた。

 後は、自分の成すべき事を終わらせなければいけない。



「…皆さん、もう一度聞きます。ヴァイラに…来ますか?」


 全員が頷く。


 皆が頷く理由は神敵を倒すため。


「…ありがとうございます」


 トリスは寂しそうに笑い、礼を言った。



 後に、トリス、ホークアイ、ニグレット、アイリス、ミランダ、リンダは、女神教の教会本部があるヴァイラ王国へと足を運ぶ。


 そして、ヴァイラ王国は、新たな聖女の誕生に湧く事になる。



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