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流れの武器屋  作者: はぎま
魔物の大移動
95/163

善なる神2

 お互いに力を解放していく。


 ビキビキ_パキピキ_


 空間が破裂しそうな程の圧迫感。


 兵士達が苦しそうにうめき出した。


「場所、移動して良いか。可愛い信者が死ぬぞ」

『仕方ないな』



 ルナライトと共に離れた場所に移動。移動中も気を抜けない。


 ガキンッ!_


「_くっ」

 離れた瞬間に一突き。

 剣で受け、そのまま遠くに弾き飛ばされた。


 追撃は来ない。力量を試す様な行為だが、トトもルナライトの力量を測っていた。


「速いなぁ…」


 真っ白い十字槍を持つルナライト。鑑定は効かない。槍は名前だけ見れた。


≪白神槍・ルナハート、ーーー、ーーー≫



「やっぱり神槍か…自分の名前入れるとか痛い奴だな…封印解除・壱式」


 破壊神剣に白と黒の斑模様が浮かび上がった。


 ルナライトの眉がピクリと動き、高速で距離を詰めてくる。


 ルナライトの身体がブレる。

『_神技…天槍十字』

 上下左右から同時に迫る連続突き。

「_破壊乱武」

 トトがそれに合わせる連撃。

 激しい衝突音が響き、衝撃波を受けながら両者距離を取る。


 ルナライトが片手を向け、

『_ホーリーレイ』

 キィィイイ!_白いレーザーを放つが、

「_魔壊」

 左手でレーザーを握り潰した。


「俺に魔法は効かない」

『なるほど…』


 目を細めたルナライトの姿がフッと消える。


 トトの背後に現れ、槍を突き出して来た。


 身体を捻り、剣を背後に振り弾く。

 槍が跳ね上がり、振り返ったトトが至近距離で左手を向け、


「_虎砲(こほう)

 ドンッ!_『_くっ』


 衝撃を与え、ルナライトを弾き飛ばし、ガンホルダーから異聖銃・夢元の鷲を取り出した。


「_ヘッドショット」

 ダンッ!_

 赤い弾丸がおでこに直撃。大きく仰け反る。


 仰け反ったまま、天を見上げるルナライトは、どんな表情をしているのだろうか。驚愕か、怒りか、喜びか…



『……強いな。想像以上だ』


「そりゃどうも…タケル、喜べ。お前の方が強いぞ」


『ふふっ、泰人は身代わりで30回くらい死んだから…僕が一番強いかな?』


「ははっ、言ってろ」



 ______




 残された者達は、遠くで繰り広げられるトトとルナライトの戦闘を呆然と眺めている。

 神と互角に闘える人間。

 一瞬で終わるものと思っていた者達に取って、驚きを隠せない物だった。


「…トトはあの剣を友達って…リンダちゃん…知ってる?」


「…ええ…トハシが剣に話し掛けていたのを見た…タケルって…多分…あれは…不壊の勇者が宿った剣…」


「…そうか…トトなら…不壊の勇者を見捨てる事は出来ないか…」


 誰にも相談せずに、一人で背負っていた。

 言ってくれれば、何か力になれたかもしれない。

 でも、もう遅い。



「…んぅ……トトさん…_っ!トトさんは!?」


 倒れていたトリスが目を覚まし、キョロキョロと辺りを見渡す。

 皆が浮かない顔をしている事に気付き、激しい戦闘音が聞こえる場所に目をやった。


「あぁ…そんな…ばかぁ!ばかばかばかぁ!」


 トリスの目から大粒の涙が溢れ、地面を力なく叩く。

 もう、女神が来ていた。

 そして、トトは闘う事を選択してしまった。


「トリス…ごめん…止められなかった」


 ニグレットの言葉は届かない程に、トリスは泣き崩れていた。

 己の運命に絶望する様に…



「トリスちゃん…トトなら…逃げられるかもしれない…見守る事しか出来ないけど…」


「……」


 ホークアイの言葉に、トリスが流れる涙を気にせずに空を見上げる。


「ホークさん…勇者の役目とは何ですか?」


「え?魔王を倒す?」


「…不正解です……聖女を守り、聖女と共に世界の悪敵を倒す…ですよ」


「……まさか」


「…たとえ、トトさんが逃げられたとしても…私達は世界の悪敵を倒さなければいけません。

 勇者のホークさんと、聖女の私は…トトさんを…倒す使命が課せられる…」


 運命とは、残酷ですね…呟くトリスの目は虚空を見詰めていた。

 逃げたい…しかし逃げようにも、世界は自分に闘えと言うだろう。


「トリス、記憶が…戻ったのか?」


「…はい、戻りました。私は…この闘いを見届けたら…ヴァイラに行きます。

 皆さんは…一緒に来ますか?…歓迎…しますよ…」


「「「……」」」


 クシャトリス・ヴァイラ・オーレン。

 封印されていた聖女という職業が解放され、ヴァイラ王国の王女としての記憶が戻ってしまった。

 ヴァイラへ行き、自分を国から追い出した者と対峙しなければならない。



 そして、見えてしまった未来は変わらないだろう。




 ______




 闘いの最中。


 ルナライトが何かを考える様に停止。


『……』


「ん?どうした?…ヘッドショット」


 ダンッ!_

 赤い弾丸をおでこに直撃させる。再び、ルナライトが仰け反った。

 天を見上げるルナライトの表情には、呆れが見える。


『何故…デコばかり狙う』

「まぁ…ちょっとした嫌がらせ…だな」


 闘いの合間に、トトがルナライトにヘッドショットをお見舞いしていた。これで五発目。

 貫通よりも、衝撃を与える赤い弾丸。これにはトトの怨念が込められている。



『まぁいい…貴様は神敵となった』

「そうだな」

『世界の敵だ』

「そうだな」

『…怖く無いのか?味方だった者まで敵になるのだぞ?』

「そんなの解ってる。怖いさ…俺が地球に帰れば…敵は居なくなる」

『残された者はどう思う…』


「なんだよ…心配してんのか?殺そうとしてんのに…」


 ガキンッ!_


 最後まで言い切る前に、槍が飛んで来る。

 剣で受け止め、競り合いながらルナライトと睨み合う。



『人の子らを思えば…だ。どの道、貴様が死のうが異界に帰ろうが、嘆く者が居るのは事実』


「まぁ、プロポーズされたばかりだしな…一緒に旅をしようと約束した人も居る…親友も出来た……みんな泣くだろうな…

 はははっ、俺の未練を引き出しやがって…性格悪いなぁ…」


『………ならばその未練を絶ち切ろう』



 ルナライトがトトを弾き飛ばし、遥か上空へ飛ぶ。


 両手を天に向けると、

 ブォン_

 巨大な球体…白と黒に点滅する立体魔方陣が出現した。


 ゴゴゴゴ_


 大陸全体に響く様な魔力の波動。


「デカイ…あれはヤバいかも…封印解除・弐式」


 トトが破壊神剣を構え、力を溜めていく。



 ルナライトの魔法は直ぐに完成した。

『すまぬな…人の子らよ…禁術・記憶の削除(イレース・メモリー)


 パァーーン!_


 立体魔方陣が弾け、大陸全体に届く程の広範囲に渡って欠片が舞い落ちる。


「なんだ?攻撃魔法じゃない?」



 ヒラヒラと舞い落ちる白と黒に点滅する欠片。トトの元にも落ちて来た。


 左手で欠片を掴み、鑑定してみる。


≪魔法の欠片、触れた者の指定した記憶を消す≫


 鑑定をし、硬直している間にルナライトが降りて来た。


「まじかよ…」


『異物よ…人の子らの中にある貴様の記憶を消した。これでもう、未練は…無いな』



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