表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れの武器屋  作者: はぎま
魔物の大移動
93/163

魔物の大移動。終局。

 西の地点。


 そこでは、白い光が溢れ周囲を照らしている。その中心には白いドレスを身に纏ったアイリスが、真っ白い杖を掲げている。


 ゆっくりと、白い雪が降っていた。


「本当に…凄いな…この力…」


「……綺麗だなぁ」

(……おっと、アイリスさんに見惚れている場合じゃないな。他の兵士を助けないと)


 トトは急いで兵士を集めて回復を施していく。その間、転移核獣・ディスクはアイリスの方向を見ていた。

 そして、ゆっくりとアイリスに近付いて来る。


『ヨワイ、ヨワイ?』

「ああ…弱い。私は弱い存在だ。だが、大切な人の為なら強くなれる……凍れ」


 ピキピキパキピキ_


 ディスクが居た所が凍りつく。その前にディスクは転移し、視界から消え、

『ヨワイ』

 後ろに現れたディスクがアイリスに円盤をぶつける。


 ガキンッ!_

 一瞬で発生した氷の壁に阻まれた。



「私にお前の攻撃は効かない。細雪(ささめゆき)


 アイリスが杖を振るう。細かい雪が一帯に降り注いだ。触れても冷たくは無く、暖かく包まれる様に溶けていく。


 だがディスクに雪が触れると、

 ジュッ_

 身体を少し溶かす。敵のみに効果がある範囲攻撃。

 転移を続けるが、どこに行っても雪があり、身体が溶けていく。


『イタイ、イタイ』

「もう、逃げられない。雪嵐(ゆきあらし)


 ヒョォォォォ!_


 吹雪が巻き起こり、ディスクを包み込む。徐々に溶けていく身体。


『ケシトベ…』

 ディスクが魔力を溜めて行く。


「ん?あれは、やばい!」

 不穏な魔力にトトがディスクに向かって駆ける。破壊神剣を取り出し、

『フル・テレポー…_「能力破壊!」

 一瞬だけ神剣を抜き一突き。直ぐに神剣を収め、離脱。


「…トト…今、何か…」

「…アイリスさん、決めて良いぞー」

「…ありがとう。終雪(しゅうせつ)


 吹雪が収縮。ディスクを包み込む雪の柱となる。


『アガ…ガガ…ツヨ…イ?』


 雪の柱に埋まり、溶けていく身体。

 雪に消えて行くディスクは、少し切なそうに映った。



「……」



 雪が止み、後に残るのはディスクの残骸と核らしき物…紫色の玉と円盤が転がっていた。


「流石アイリスさん。簡単に武装を使いこなしちゃってまぁ…」


 兵士の回復を終えたトトが武装を解き、アイリスに歩み寄る。

 クラス8を簡単に葬り去る魔法の才能に、やっぱり天才は違うなぁ…と呟いた。


「トト、ありがとう。礼をしなければいけないな」


「礼なんていらないよ。もう貰ってるさ」


 トトが以前アイリスから貰った氷の御守りを見せる。半分焦げて使い物にならない御守り。



「ダンジョンでこれに助けられたからさ。でも焦げちゃった…ごめん」


「トトが無事ならそれで良い。もう1つあるから、交換させて欲しい」


「いや、いいよ。……何?駄目?…解った。交換宜しく」


 焦げた氷の御守りをアイリスに渡し、何か言いたげなアイリスと見詰め合う。


「これじゃあ、お礼は足りない」


「足りないって言われても…あっ、じゃああの魔物頂戴!転移の魔物欲しかったんだ!」


「…うん」


 トトがディスクだった物の所へ行き、紫色の玉と円盤を回収。

 これでお礼は終わりだなー…と遠くから走って来ている集団を眺めていると、武装を解除したアイリスがまだ何か言いたげだった。


「あれは、ニグさん達?終わったのか…アイリスさんどうしたの?」


「まだ、礼は足りないと思わないか?」


「いやいや、あの魔物を貰えただけで、貰いすぎだよ」


「私を貰って欲しい」


「…へ?」


 何言ってるの?と言おうとしたが、アイリスの目は真剣だった。遠くから_「…トさーん!」_トリスの呼ぶ声が聞こえるが、構わずアイリスとトトは見詰め合う。


 アイリスの髪が空の白く輝く光に照らされて、幻想的な美しさを醸し出している。

 返事が欲しいとアイリスの瞳が揺れていた。



「俺は…」


「トトさん!逃げてぇぇぇぇぇ!」


「_えっ?」


 アイリスへの返事を言う事無く、トトが声の主…トリスの方向を見ると、力が抜けて倒れているトリスの姿。


「_えっ?はっ?トリス!?_っ!」


 倒れているトリスに向かおうした時、


 キィィイイイイ!_


 トトとトリス達の間に、光の柱が発生した。


 天まで届く輝く光。


 高密度のエネルギーがジリジリと肌を焼くほどに、圧倒的な力を感じた。


『…やっと来れたな…聖女のレベルを使わねば、まともに力を発揮出来ぬとは…制約とは難儀な物だ……ああ、解っている。時間は守るさ』


 光の柱が晴れた先、キラキラと輝く輪郭を持った人影。

 銀色の髪を靡かせ、鼻筋の通ったキリッとした目を持つ女性の姿。

 同じ髪の色を持つアイリスと似た、美しい女性だった。


「…あれ、どこかで見た事が…あれ?なんでみんな跪いているの?」


 トトが周りを見ると、ニグレット達は勿論、起き上がった兵士達も全員跪いて女性に頭を下げている。


『破壊の力…貴様か』


 そして、その女性はトトを真っ直ぐ見据えていた。

 もう嫌な予感しか無い。全員が跪く存在など、心当たりは一つしかなかった。


「…なんでしょうか…どちら様で?」


『無知なる異物(いぶつ)よ…まぁいい。私は、善神と呼ばれている存在だ』


「……ああ…もしかして…ルナライトちゃん?」


 善神と名乗った女性…ルナライトがフッと笑い、片手を天に掲げ真っ白い槍を出現させた。

 そして、その手に取った真っ白い十字槍をトトに向ける。



『異物よ…貴様は、強くなりすぎた』







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ