西へ急ぐ。
『ふっふっふ、血液魔法・ブラッドソード!』
赤黒い剣を取り出したヴァンパイア・ロード。ポタポタと滴る血液が恐ろしさを醸し出すが、トトには別に効果は無い。
「なぁ、ヴァンパイア。魔物の大移動って結局何なの?」
色々な謎があるとされている魔物の大移動。この世界の者では無いトトは、結局何なのかよく解らないので聞いてみると、ヴァンパイア・ロードは得意気な顔に変わる。
『ほう、物怖じしない態度…関心関心。良いだろう、魔物の大移動と言われているこれは、歪みを正す物だ』
「歪み?なんの?」
『世界の歪みに決まっておるだろう?頭もゴミなのか』
「ゴミに教えてくれよ。どうして歪みが起きるんだ?」
「そんなもの、神が一柱封印されているからに決まっておるだろう?ゴミめ、無駄な話は終わりだ」
ヴァンパイアがブラッドソードを構え、魔力が増大していく。ビリビリと響く魔力に城の者も気付き、ざわざわと騒がしい。
トトはお喋りなヴァンパイアに感謝しつつ、爆斧を構えると、後ろにある城から騎士が出てきた。
「何事か!_っ!何!クラス7だと!」
「うわぁぁ!」
「ふっ、ゴミが増えたな。血液魔法・ブラッドショット」
バシュッ_
出てきた騎士がヴァンパイアの放った血の弾丸に貫かれる寸前、トトが弾丸を弾く。
死ぬ寸前だった騎士が尻もちを突き、トトを見上げる。
「…危ないんで城に居て下さい。こいつは俺が倒します」
「_はっはい!」
「_ありがとうございます!」
逃げていく騎士を見届け、ヴァンパイアに対する。
だが、また城から誰かがやって来た。
「爆炎の戦士さまぁ!…あれ?煉獄竜の戦士?名前が違うけどきっと爆炎の戦士さまぁ!助太刀しまぁす!ウインドカッター!」
後ろから風の刃でヴァンパイアに攻撃を仕掛ける者。ヴァンパイアがパシンッと風の刃を弾いた。
「お怪我はありませんかぁ!私も闘います!貴方と一緒にぃ!」
「あの、危ないんで城に居て下さい…マリアさん」
以前トトに相談を持ちかけて来たマリア・ベレットが現れ、邪魔をしてきた。ヴァンパイアは冷たい視線を向け、トトは鎧の中で表情が引きつる。
「いえ!貴方の力になりたいんです!そして!貴方の伴侶になりたいんですよぉ!」
「大分キャラ違いますね。とりあえず邪魔なんで城に居て下さい」
ヴァンパイアがマリアにブラッドショットを放ってくる。
難なく弾き、ヴァンパイアも弾き飛ばす。
ここで闘うと、また誰か来そうなので城から離す。
後ろからマリアがトトを呼ぶ声が聞こえるがスルー。
トトは煉獄竜の力を解放していく。周囲の温度が上昇。ジリジリと焼ける肌に、ヴァンパイアの目が開かれた。
「ヴァンパイア、悪いけど終わらすな。煉獄火炎」
『なんだこの力は!_くっ!私に終わりなど無い!血液奥義!ブラッドデスレイド!』
ゴオォォォ!_
真っ赤な炎の柱と赤黒い力がぶつかり、王都を熱く染めていく。
力がぶつかり合ったが、拮抗する事は無かった。
ジュッ_
ヴァンパイアの力は炎に呑まれ、消えていく。
力の差は歴然だった。
『うがぁぁぁ!』
「もう少し…話を聞きたかったけど、さよならだ」
炎の出力を上げる。黒い炎となり、ヴァンパイアを呑み込んでいった。
炎を消し、跡形も無くなったのを確認。西へ向かおうとする所で、マリアに捕まった。
「煉獄竜の戦士さまぁ!凄かったです!それにまた私を守ってくれるなんて、惚れ直してしまいました…」
両手を握り、あざといポーズを見せてくる。上手く通せんぼしているので正直邪魔だ。もう押し退けて行こうとした時、また違う人影。
「マリア、やめなさい。困っているじゃない。煉獄竜の戦士様、お騒がせしてすみません。こらっ、行くよ!」
第二王女のクリスタロスがマリアを連れ戻しに来ていた。なんでわざわざ王女が来るんだ?と疑問が残るが、マリアを引き摺るクリスタに、とりあえず感謝はしておこう。
「…ありがとな、クソ女。感謝してやるから這いつくばって喜べ」
「_はぅん!その、気持ち良い罵り方は…トト様?」
「…よく解ったな。ご褒美だ」
もう面倒なので威圧を掛けて、トトは西へ飛び立つ。
「_きゃうん!」
喜ぶ声が聞こえ、
「殿下…どういう事です?…私に黙って…あのお方と…」
何か不毛な戦いが起きようとしていた。
西へ向かう途中、ホークアイから通信が入った。
『トト!聞こえる?終わった?』
「あぁ、終わったから向かうわー」
『それならもっと西へ向かって欲しい!こっちは大丈夫だから!』
「もっと西?そこだけじゃないのか?」
『ああ!通信が入って騎士団長と魔法士団長が闘っているけど壊滅寸前らしい!』
「…分かった。全力で行く」
______
トトに通信を終えたホークアイ。ため息を付きながら、残る一体の魔物を見据える。
冒険者達が半数やられ戦場は劣勢だったが、ホークアイとリンダがなんとか持ち直した。
ギガント・ドラゴンはゴドム達とホークアイが撃破。エ・スカルゴーはリンダが討伐に成功。
ニグレット達が闘っている残る一体を倒せば、西へ向かえる。
だが、最後の一体は魔防具を装着していた。
加勢が必要だが、ゴドム達は満身創痍。戦えるのはニグレット達、ホークアイ、リンダくらいなもの。
「はぁ、はぁ、トハシは何て?」
「直ぐに行くって。リンダちゃん、武装は慣れていないと大変だから休んで。私が加勢してくる」
「分かったわ。でも、彼女達は何者?いくらなんでも強すぎる。特に、あの泣きながらヤバイウサギを操る女の子は…武装した私達より強い…」
「まぁ、彼女達は…トトと…仲が良いからね…」
ピクッ_
リンダが反応する。トトと仲が良い…それはつまり、そういう事なのか?ホークアイに視線を向けるが、ホークアイと視線が合わない。
「…やっぱり…私も、加勢するわ」
「…いや、無理しないで。トトはリンダちゃんの事が好きだと思うから…誰とも付き合って無いし」
「…だと良いけど、みんな可愛いじゃない。自信無くすわ。他には?居ない?」
早くニグレット達に加勢したいのだが、リンダの威圧に動けない。
こんな事を話している場合では無い。無いのだが、ここで言わなかったら自分が危ない。ホークアイは保身に走る。
「…たぶん…魔法士団長」
「_っ!それはマズイじゃない!」
「えっ、何かあった?」
「危ない所をトハシが助けたら!魔法士団長は絶対トハシに告白する!駄目!こうしちゃいられない!加勢するわよ!」
先程よりも早いスピードで駆け抜けるリンダ。置いていかれたホークアイは、トトが仲良くなる人って変な人多いよなぁ…と自分を棚に上げていた。




