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流れの武器屋  作者: はぎま
魔物の大移動
89/163

魔物の大移動。第二波。

 魔物の大移動、第一波を収めた各方角の軍。


 その中で、中心部分にある西の方角では一番早く第二波が来ていた。


「はぁ、はぁ、また、クラス5…」

「このままじゃ全滅だ!応援を呼んでくれ!」


 第二波は、第一波に比べて魔物のクラスが上がる。一段階、もしくは二段階。

 黒い渦は、第一波に比べて二倍以上の大きさ。更に遠くから黒い渦が近付いているのが見えた。


≪ウォーターエレメント、クラス5、強さ5556≫

≪スカイリザード、クラス4、強さ3625≫

≪フレイムシザー、クラス4、強さ2922≫

≪ゴブリンガード、クラス3、強さ510≫

 ………

 ……

 いくら精鋭部隊と言えど、クラス2~5の魔物千体は無理がある。

 精鋭部隊500名。全員上級職業以上で、クラス5に対応出来る王級職業の者が多数居るが間に合わないのが現状。更に普通よりも強いときた。


「応援ったって他の地点も同じ状況だろ!?」

「とにかく!負傷者を回収!後退しながら!第二波だけでも乗り切るぞ!」


 西の地点は、最前線から徐々に王都の方へ後退していく。



 ______




 北西。騎士団長ジーラス・ヒート率いる騎士団、魔法士団の軍。


「戦況はまだこちらが有利だ!魔法士団!援護頼む!」

「了解!攻撃魔法を撃ち込みます!詠唱準備!」


 第二波が始まり、黒い渦からわらわらと魔物が出てくる。

 魔物が固まっている隙に魔法士団が詠唱を始める。


「撃てー!」

「「「ファイアーストーム!」」」

「「「バーニングサイクロン!」」」


 ゴォォォ!_ボオォォ!_


 炎の嵐を重ねて範囲攻撃。高温の嵐が魔物を焼き付くし、弱い魔物はこれで息絶える。

 残る魔物は当然クラス4と5。騎士団、魔法士団の混合パーティーを多数配置。魔物を一体ずつ討伐していく。


 その中でジーラス・ヒートは先陣を切り、クラス5を次々葬っていく。

「バーニングラッシュ!」


 ボオォォ!_


 炎で燃やしながら斬り刻んでいく。幸い炎に弱い魔物が多く、少しずつ討伐。

 魔炎剣ブレイジングサンの能力。小太陽を発生させ、魔物を焦がす技は体力消費が激しいのでまだ使わない。


 徐々に数を減らしていくが、だがまだまだ終わりが見えない。一体倒すのにも時間が掛かっていく。

 次第に負傷者も出始めた時。


「うおぉぉ!巨人の鉄拳!」


 ドゴォォン!_

 大きな拳が魔物を吹き飛ばし始めた。


「ジーラス!待たせたな!」

「ゴドム殿!感謝します!」


 北の地点に居た、冒険者達とギルドマスターゴドム・ハンサが応援に駆け付けた。自慢の拳で魔物を粉砕していく様子は頼もしい。


 ドゴォォン!_


「ジーラス!通信が入った!西の地点が押されている!援護に行け!」

「分かりました!ここはお願いします!」


 西の地点までは距離があるが、ジーラス達は部隊と共に全速力で西へ向かった。



 ______




 南西の地点。魔法士団長アイリス・フォート率いる魔法士団、騎士団の軍。


 順調には魔物を討伐しているが、まだまだ油断出来ない状況。


「アイシクルレイン」


 ガガガガ!_


 幾多の魔物を貫く鋭い氷の雨。魔力を広範囲に込め、一つの魔法で半数以上を沈黙させるアイリス・フォート。

 氷の魔女という二つ名の通り、氷の魔法を使わせたら右に出る者はいない。全ての魔物の首を貫く氷…天才という言葉では足りない程の魔力制御。これでまだ魔杖ギアチャイオを使っていないのだから末恐ろしい。


「団長!後方に黒い渦がもう一つ出ました!挟まれます!」

「…大丈夫。このまま前進。後方は彼女達が居る…アイシクルブリザード」


 ヒョォォォ!_

 氷の吹雪で魔物を凍らせ、粉砕。ほとんどの魔物達は氷漬けになった。


 遠くに見える黒い渦の魔力溜まり。それを気にせず西の地点へ向かうアイリス・フォート率いる軍。




 ______




 アイリス・フォートの後方。新たに現れた黒い渦から、次々と魔物が発生していく。


 そこに丁度西側へ向かっていたニグレット、トリス、ミランダの三人は出くわした。


「新しい魔力溜まりだな。何処から来たんだ?」

「なんか、クラス6が居るのは気のせいかな?」

「はいはーい!私やってみたーい!」


 黒い渦から魔物が全て出るまでは、攻撃は黒い渦に当たるので出来ない。

 全ての魔物が出るまで、魔物達は待機しているのが救いか。


 他の地点よりも、大きな黒い渦。出てくる魔物はクラス3~6が千体。第三波に匹敵する規模。


≪スノードラゴン、クラス6、強さ10524≫

≪ポイズンヒドラ、クラス6、強さ17439≫

≪マンイーター、クラス5、強さ7999≫

≪エルダータランチュラ、クラス6、強さ14023≫

 ……………

 ………



「クラス6が沢山居るなぁ、大丈夫か?」

「ニグレットさん、私達も準備しましょう」


「見ててー!これの使い方はなんとなく解るから!」


 やる気満々のトリスが少し前に立つ。

 持ち手の部分に可愛いウサギの顔が付いている、非常に持ちにくい短杖…トリス専用装備、天杖・ウサウサ賢者を天に向かって掲げた。



 集まる魔力、空間がピキピキと軋み、魔物達が一斉にこちらを見る程の強大な魔力が溢れている。


 ピキピキ_パキピキ_


「…ト…トリスちゃん?」

「…トリス…何するの?ちょっと…それ…洒落にならないぞ…」


 ゴゴ…ゴゴ…ゴゴゴゴ…


「…天へと伸びる象徴…数多集いて大地を染める…寄せ合う肉軍…名はウサギ…

 象徴が聴く…無に導く殺戮の調べ…鮮血の…華を咲かせよ…

 裏召喚魔法!パワフルラビッツ!」



 ポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッポンッ


 トリスの前方に、沢山の…可愛いくて小さい色とりどりのウサギが召喚された。


「「…」」

「わぁー!可愛いー!いろんな色だー!」


 トリスが白いウサギを一匹捕まえ、抱き寄せる。モフモフと暖かい。長い耳、鼻がピクピクと動き、トリスを見詰めている。

 トリスはご満悦な表情でウサギを撫でている。


 魔物達は大きな魔力に圧倒されていたが、ウサギを見るなり一斉に向かってきた。


「_っ!ニグレットさん!来ます!」

「ああ!全力で行くぞ!」


 魔物達の大地を踏み鳴らす音。地震が起きた様に震え、その規模を示している。

 ニグレットとミランダはウサギに構わず攻撃準備。


「ウサギさんって戦える?」

『御意に』

「…へ?…喋った」


 ムシャムシャと草を食べていたウサギが、一斉に魔物の方を見る。


『姫の命令だ!敵を殲滅せよ!』

『『『うおぉぉぉぉ!』』』


 小さく可愛いウサギが後ろ足で立ち、プルプルと震え…


 ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!

 ウサギ顔の筋肉ムキムキなボディービルダーに変身。


 色とりどりのブーメランパンツを装着し、様々なポージングを披露。


「「……」」

 攻撃準備をしていたニグレットとミランダがフリーズした。



『出陣!』

『『『うおぉぉぉぉ!』』』


 ウサギ達が踵を地面に付け直立。

 地面に踵を押し付けるように、ふくらはぎとハムストリングを収縮。

 腹筋に力を入れつつ、十分にコントロールしながら腕を高く持ち上げる。

 拳を肘に向かって曲げ、肘を肩の上ぐらいに上げ、上腕二頭筋をプルプルさせない様に引き締めた。


『『『フロント(正面から)ダブルバイセップス(上腕二頭筋をアピール)!!』』』


 ドオォォォ!_

 筋肉の波動。前方の魔物達が砕けていく。


「………」

『52番!キレてる!ナイス上腕二頭筋!チョモランマ!さぁ追撃だ!』



 ウサギ達が追撃に入る。


 横向きになり、両足を揃え、ふくらはぎを収縮させながら魔物側の足をつま先立ちに。

 足を軽くキュッと内側に動かし、ハムストリングを大きく見せる。

 円を描く様に両腕を組み、手首をしっかりと握りながら魔物側の身体の斜め横に動かす。

 前の肘を自分の方へ力強く引き、固定。

 身体をゆっくりと捻って魔物に向けた。


『『『サイドチェスト(横になって胸を強調)!!』』』


 ゴオォォォ!_

 したたる汗と筋肉の波動。更に魔物が砕け散っていく。


「「「……」」」

『3番!ナイスバルク!グレートケツプリ!決めろぉ!最後だ!』



 ウサギ達の筋肉は完全に仕上がっている。次で決める様だ。


 正面を向き、ふくらはぎ、大腿四頭筋、ハムストリングを収縮。片足をやや前にして足を開く。

 そして、両足の踵を地面に押し付けながら両膝を少し曲げ、お尻の筋肉を後ろへ突き出す様に。

 肘を少し曲げたまま、両腕を肩の高さまで伸ばしていき、拳をギュッと握りしめながら、身体の前で両腕で輪を作る様に。

 やや上体を前傾させ、肩を下げながら内側に向かって絞っていく。

 筋肉を更に収縮させた。


『『『モストマスキュラー(最も力強い)!!』』』


 ドゴォォン!_


 筋肉の躍動。筋肉の雄叫び。魔物が全て砕け散った。


「………」

『ずどーん!マッスル総合デパート!よくやったお前ら!…姫、任務完了しました』


『姫!どうでしたか!』『姫!推しは誰でしょうか!』『姫!』『姫!どのポージングが良いですか!』『姫様!』


 魔物を殲滅し、トリスに向けて勝利のポージングをするウサギ達。


「……」

『また会いましょう姫様!』『姫様!次も呼んで下さい!』『姫様!』


 トリスが抱えていた白いウサギが飛び降り、

 ボンッ!_

 白いブリーフのボディービルダーに変身。


『姫、あなたの為なら我らはいつでも駆け付けます。それでは』

 臣下の一礼。


 任務を完了したのか、ウサギ達は満足げな表情で消えていった。



「「……」」


「…可愛く…ない…」


 ホロリ__トリスの目から一筋の涙がこぼれた。




「…行こう…トリスちゃん…頑張ったね…す、凄いじゃん!」


「…トリス…よくやったな…帰ったら美味しい物食べようか…うん、そうしよう」


「…優しく…しないで…」


 ニグレット達は中央部分へ行った黒い渦へ向かう。

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