表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
86/163

公爵家へ。

「……悪神……そうだとしても、善神じゃないの?」


「はい、善神の人形を持っていますが、このカードと波長が合いません。

 それだけが理由じゃないんですがね…」


 悪神の力…破壊の力を持っているからこそ解るのだが、そこまで言う必要は無い。

「…」

 リンダが考え込む様に黙り込む。


「…あっ、そうだリンダさん。お願いがあるんですけど」

「_ん?なに?」

「リンダさんの血を貰えませんか?」

「_にゃ!にゃんと!」


「あっ、不老の調査の為です。告白じゃないです」


「…泣くわよ」


 この世界の告白で、『あなたの血を飲みたい程に愛しています』という狂気を含む告白がある。

 本に書いてあったので、言われたら絶対引くな…とトトは覚えていた。


 再び不機嫌になったリンダがナイフを取り出し指を切る。トトから渡された小ビンにポタポタと血を入れていく。


「…それくらいで大丈夫です。ありがとうございます」


 指を治し、小ビンを受け取る。


「…」

「じゃあ、行ってきますね」


 リンダに礼を言った後、ムンゾ家を出る時にスススーっとルーアがやってきた。


「トハーシさん」

「…ルーアさん、どうしたんですか?」

「トハーシさんは、そのお嬢様の血…飲めます?」

「…ええ、飲めますよ。ルーアさん…それをリンダさんに言ってニヤニヤする気ですね」

「…ふふっ」


 再びスススーっとルーアがリンダの部屋の方に向かっていった。




「…」


 ルーアを気にしても仕方無いので、ムンゾ家を出て辺りを見渡す。


(…やっぱり監視は居るか。昨日は居なかったな…)


 トトを監視している気配。どこぞの貴族か皇族か。

 収納からトレジャーサーチを取り出し、リンダの血に当てる。


≪トレジャーサーチ、ランクS+、攻撃1、罠解除・お宝発見・隠し通路発見≫


(血をお宝として、探索…これで行き着く場所が解るけど…)


 探索すると、薄い反応が貴族街に点在している。数が多いので、濃い反応を探索。


(薄い反応が点在しているって事は、もう不老の薬が出回っている?一番濃い反応は北区の職人街か…)


 探索をしながら北区へ進む。その間、気配を消しながら死角に入りを繰り返して、監視を撒いていく。


 撒いた事を確認。トトの鑑定結果をドド・クソ男に変更。


 貴族街を抜け、北区に到着。モクモクと煙が立つ建物や、金属を打つ音が響いてきた。


 更に奥へ。建物が入り組んだ迷路の様な小道を歩き、一つの建物に到着した。

 厳重な鉄の扉が出迎える工房らしきもの。人の気配はある。数は五人。


 ゴンゴン!_

 トトは鉄の扉をノック。

 しばらく待つ。



 ゴンゴン!_

「…」


 ゴンゴン!_

「…」


 ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!_ガチャン!

「うるせえな!誰だ!」


 痺れを切らした男が出てきた。中肉中背の職人らしき男。


「ここで何を作っているんですか?」

「お前には関係無いだろ!失せろ!」


 バタン!_ガチャン!_


 扉を閉められ、鍵を掛けられた。


 仕方無いので、左手で鉄の扉を掴み。

 バキバキバキバキ!

 扉を剥がす。


「……なんだ…お前…」

「ここで何を作っているんですか?」


「…」


 同じ質問をする。剥がした鉄の扉を持ちながら。


 中は玄関から伸びた廊下。その奥に部屋があるので作業場と推測。男達五人全員出てきた。驚いたり、怒りを向けて来る。



「こんな事をして…ただで済むと思うなよ」

「言わないとお邪魔しますよ?」

 ブンブンと鉄の扉を振り回して脅す。


「…嗜好品だ」

「なるほど、嗜好品ですか。で?後ろには何て言う貴族が居るんですか?」

「…くっくっ、ラティール公爵家だ。お前はもう終わったな!直ぐに処刑されるぞ!今更謝っても遅いからな!」


 ラティール公爵家。帝国に二つある公爵家の一つ。随分と大物だなぁくらいには思うが、だからどうしたという思いが強い。



「そこまで聞ければ充分です。呪怨砲、宜しく」


 ドウゥ!_

 呪怨砲のオーラを当てて男達の意識を飛ばす。


 鉄の扉は元の場所に嵌めて、

「作成」

 中からしか開けられないトゲトゲ扉にして直しておく。


 倒れた男達を乗り越えて、廊下を進み作業場へ。

 作業場は、すり鉢や小ビンが並び、中心に何かで薄められたほんのり赤い液体が入ったビン。


「このビンに反応してるけど、反応しないビンもある?」

遅老(ちろう)の樹水、ランクB≫


 何かの樹液と血を混ぜた液体。遅老と出ている。

「…これは、老化を遅らせる事が出来るのか?…まぁまぁ効果はある…か」

 …ため息が漏れる。


 見ていくと、その中で製品を発見。


「値段が、一つ白金貨一枚。約10万円かぁ。でもなんでリンダさんは、今まで拐われたり拘束されたりしなかったんだろう…それに、一人の血の量じゃ賄いきれない」


≪長生きの丸薬、ランクC+≫


 飲み続ける事で効果がある。飲んでしまったら、ずっと飲まなければ効果が薄れていく。麻薬と似たような物か。


「はぁ…後でラティール家に行くか」


 物はあったが、レシピや取引関係の資料は無かった。

 とりあえず証拠品の遅老の樹水、長生きの丸薬を回収。原価の金貨二枚置いておく。

 ラティール家に行けば資料がありそうなので、夜になったら行く事に。


 男達は二日程、意識を飛ばしてもらう様に調整。なのでまだ猶予がある。

 職人街は基本うるさいので、この工房の騒ぎに気付いている様子は無い。

 ここにはもう用は無いので、とりあえずムンゾ家に戻った。



 ______



「トハシ、お帰り」

「はい、戻りました」


 リンダに丸薬の事を報告。ラティール公爵家が関わっていると伝えると、表情が曇った。


 聞くとリンダに毒を盛ったとされる、元婚約者はラティール公爵家の長男。ルーアもそのお蔭か珍しくピリピリしている。


「結果は黒でしたね。資料関係はラティール家にあると思うので、今夜行ってきます」


「トハーシさん。潰してきて下さいね」


「いや、流石に潰しはしませんよ。資料を手に入れたら、オーランドさんに渡しに行くだけですし」


 ラティール家の場所を教えて貰う。

 城の北側にあるというので、夜に行ってみる事にした。




 ______




 深夜。


 トトは城の北側、ラティール公爵家の邸宅を空中から観察していた。

 豪華な三階建ての建物。

 巡回の私兵が絶え間なく回り、照明も他の家より多い。厳重な守り。

 しかしそんな厳重な警備も、隠蔽工作をしたトトには意味が無い。気配を消せば、ホークアイぐらいにならないと気付かない程。


 建物の屋根に降り立ち、人の気配が無い部屋の窓を開ける。

 鍵や警報等はトレジャーサーチの罠解除で解除されるので、侵入などはお手の物。

 ただ、資料はサーチに出ない。直接探すしか無い。


 中に入ると、給仕室の様だ。小さなキッチンに食器や茶器が置かれている。

 ここに用は無い。廊下に出て、こそこそ人気の無い他の部屋を見ていく。客間、バスルーム、トイレ。

 2階はダンスホールがあり、衣装部屋等があった。

 1階は使用人の部屋やキッチン、リビング、ダイニング等。


(広さと調度品は流石というか、一流だなぁ…後は寝室なんだけど、緊張するんだよなぁ…お?地下に人の気配)


 トレジャーサーチで隠し通路を探す。1階の奥の部屋に反応。

 奥の部屋は物置き部屋になっていた。

 そこから床板を上げると、階段を発見。入ってみる事に。



(正直嫌な予感しか無いんだよなぁ…結構深いな)


 階段を降りて地下に到達。じめじめした通路を進んで行くと、牢屋があった。


「…」


 牢屋には、鎖で繋がれた三人の子供の姿。簡素なベッドに寝かされている。


「…この子達の血を使っているのか…やる事がクズいな」

「…だれ?」


 子供の一人が起き上がり、トトの方向を見ている。気配消しているので、見付けられていないが会話だけする事に。


「俺はちょっと遊びに来たクソ男だ。なぁ…君はここで何しているんだ?」

「クソ男さん?僕は、カイ。ここで暮らしているんだ」

「…暮らしている?じゃあその鎖はなんだ?」

「僕達が悪い事しない様に、主様が付けてくれているんだ。主様は優しいお人だから。美味しい物もくれるし」


(洗脳されているのか?中々に重い話題だなぁ…)


 目の焦点は合っていない。ふふっと笑いながらトトの方向を見る少年。


「カイは血を抜かれているのか?」

「うん!僕達は成功した者なんだ」

「成功?失敗した者は?」

「死んだよ」

「…そうか。ありがとう…またこれたら来るよ」

「バイバイ」


 他に部屋は無いので、地下から出る。

(これ…どうしたら良いんだ?)


 とりあえず一番怪しい三階の寝室へ。三つあるので迷う。


 こっそり扉を開け、中を覗き込む…誰かが寝ている。

 ゆっくり忍び込み、辺りを見渡す。特に何も無い。隠し通路も無いので、部屋を出て次の寝室へ。


 扉を開ける。覗き込むと、いびきが凄い。おっさんっぽいのでここに当たりを付け、中に入る。

 見渡すと特に何も無い。ベッドの奥…本棚にサーチは反応している。


(呪怨砲、ちょっと深い眠りにしてくれ)


 ドウゥ!_

 呪怨砲のオーラが寝ている人物を襲う。

「グゴ…うわぁ…うぐぅ…ああぁ…」

 何か悪夢を見ている様だ。


『ぎゃあぁぁぁ!いぎゃぁあぁ!』

隣の部屋からも叫び声。


「おい、呪怨砲…屋敷全体に掛けたな。なんか隣から叫び声が聞こえるぞ。

……すげえ叫んでるけど大丈夫?なに?長男だから?あぁ、ありがとう」


 まぁ、これで簡単には起きない。ベッドの奥に行き、本棚をずらす。すると小部屋があり、多くの資料や金庫を発見。

 面倒なので全部回収。

 小部屋から出て、本棚を戻し、

「作成」

 トゲトゲ本棚にして、もうずらせない様に加工。


 目的は達したので、窓から出る。


(さ、帰るか…)



 ムンゾ家に戻ってから資料の確認を急いだ。




 ______




 翌朝。


 トトはオーランド公爵家を訪れていた。


 客間に案内され、ソファーに座る。


 対面に座るセオルム・オーランドが資料を手に取り、頭を抱えているのは気のせいだ。



「……」


「とまぁ、ラティール家は孤児院と連携。子供を実験体にして、リンダさんと同じ毒を盛り、息を吹き返した子供を検査。

 リンダさんと同じ症状になった子供から血を抜いて、長生きの丸薬を作って貴族の婦人に売っていた。って感じです」


「……」


「被害に遭った子供は、ここ四年で100名は軽く超えます。ラティール家の地下に子供が居るので、助けて欲しいですが…洗脳されています。

 まぁ、どうするかはお任せしますが…」


「……分かった…これから皇帝にこれを持っていくよ」


「はい、では」


 帝国の問題なので、オーランドに任せる。どうなるかは解らないが…



「トハーシ殿は、これからどうするんだ?出来れば帝国に居て貰いたいのだが…」


「すみませんが、俺はこれから…とあるご令嬢を誘拐した罪で追われるので、難しいと思いますよ?」


「…くくっ、なるほど。それは残念だ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ