皇城へ潜入
皇城の周囲を囲む城壁の前に立つトト。周りに人がいない事を確認。城壁の上までジャンプした。
(っと、何気にこそこそ忍び込むのは初めてだなぁ…一応クソ男に変えとくか)
鑑定結果をクソ男に変更。
城壁から城の敷地内を見る。深夜なので巡回の兵士以外の人は居ない。索敵をすれば人の位置は解るので、人を避けながら城に入る裏口を探す。
(よくゲームとかで忍び込むイベントあるけど、リアルの方が不規則だから難しいのは当然か)
裏口を発見。城壁から降りて、裏口から中に侵入。
使用人が使う裏口らしく、石壁が冷たく豪華な装飾などは見えない。照明は最小限だが、真っ暗ではないので歩きやすいが見付かるリスクも高まるのは当然か。
(人の気配…)通路を曲がると人の話し声。
「だめですよぉ…まだお仕事中なんですからぁ…」
「そうは言っても我慢できないんだ…直ぐ終わるから…」
「もう…少しだけですよぉ…」
メイドと騎士が部屋に入っていく。カチャリと鍵が掛かったので、しばらく出て来ないと思い通り抜ける。
(お楽しみですか…ちょっと声が聞こえてますよー)
軽く迷路の様だが、簡単な案内板があるので解りやすい。奥の方へ行けば人気が無くなって行くので、そちらへ向かっていくと鉄格子の扉に到達。
(鍵が掛かっているか…作成)
鍵の部分を改造。ただの鉄格子に変えた。
(便利だなぁ)ギィィ。鉄格子を開けて先に進む。その先に下へ降りる階段が鉄格子で閉められていたので、鍵を改造。
キィィ。(定期的に誰か来るのかな?)地下の階段を降りるが、埃が溜まっている様子も無く清掃はされている。
この下に人の気配は無いので、少し安心しながら螺旋階段を下りていく。途中にどこかへ通じる通路があるが、構わず下へ降りる。
(結構深いな)体感で地下10階の場所で階段が終わり、真っ暗な広場に出た。照明で照らしながら、辺りを見渡す。四角い広場の各方向には扉があり、3つの扉の内、前方の扉へ行く。
扉を開けると再び広場だが、先に進む扉は無い。中に入り奥まで行くと、1メートル程の石碑を複数発見。
(過去に起きた厄災の情報かな?本だと劣化するからだと思うけど、なんでここ?)
特に気になる物も無いので、部屋を出て右側の扉を開ける。通路があり、二重の鉄格子の扉を抜けて、重い鉄の扉を開けたら、教室程の部屋に出た。
(厳重だなー…おっ、ここだ)黒光りする床に大きな魔方陣が刻まれ、仄かに発光している。
カタカタ。「タケルの記憶で見た部屋と一緒…ここが召喚された場所か?」
カタカタ。
タケルを召喚した転移魔方陣。破壊神剣が揺れている。
「俺をここに連れて来たかったのか?」
カタカタ。
「これを壊せば、この魔方陣から召喚される人は居なくなる。破壊神剣が揺れていたのは、自分と同じ様な人を作りたく無かった訳か…ほんと、お人好しだなぁ」
魔方陣の中心に座り、目を閉じる。少しだけ、破壊神剣から記憶が流れてきた。
「…」
『倒した…よ…魔王を…少し…休ませて…』
『どうして僕は捕まっているんだ!説明してよ!』
『まだ、まだ厄災は終わっていないんだ!あの山に…』
「魔王討伐で疲れきっている所を拘束…か。前々から計画してたんだな…それに厄災はまだって、殻兵獣の事か?」
『…』
「なぁ、タケル…俺に殻兵獣を倒させようとしたのか?」
『…あり…がとう…泰人』
「バカ野郎…お前はどんだけ優しいんだ…自分を裏切った国を助けるなんて…」
「バカ勇者が…」それから破壊神剣は何も答えない。しーんとした部屋の中。魔方陣の他には何も無い。トトはため息を付きながら、魔方陣に触れてみた。
「発光してるって事は機能してるのかな?……あれ?」
触れてみると、何か作れそうな感覚。
「…作ってみるか…作成」
魔方陣に手を当てて武器を作る。失敗はしたくないから、余計な物は合成しない。
黒光りする床ごと作成しているので、時間が掛かりそう。
(あ、やべ…朝になるかも)
「…」頭に浮かんだ武器はアヴァロスの様に丸い球体。
「…もうすぐ出来る」索敵に何か引っ掛かる。
「出来…た」長い時間集中していたので、ドッと疲れが押し寄せ、汗が滴る。
≪転移武装・テレポートリップ、ランクーー、ーーー、ーーー≫
カツカツカツカツ。
複数の足音が近付いて来るが、そんな事は構わず転移武装を眺めていた。複雑な魔方陣が刻まれた球体。
「くっくっく…まじか…」
「誰か、いるのか?」
背後から声を掛けられ、トトは立ち上がる。古代武装アヴァロンを取り出し。
「…武装・アヴァロン…」パキィン!
白い光が溢れる。
「_っ!なんだ!」「_きゃ!」
真っ白い全身鎧を身に纏ったトトは後ろを振り返る。
「白…騎士?」「何者だ!ここで何をしていた!」
困惑した表情の人物が見える。騎士団長剣聖エクレール、占い師のサアラ、見た事無い騎士が数名。
地下への扉が開いていた事に気付き、確認に来たのだろう。仕事が早いなぁと思いながら、袋小路でどうするか考える。
(どうしようかなー。アヴァロンとアヴァロスって名前似てるからなー…今逃げたら俺に行き着きそうだし…)
「演出は、必要か…」鎧の中でニヤリと笑うトトは、一振りの剣を取り出し、これ見よがしに掲げた。
≪救世剣・シクザールメサイア、ランクーー、攻撃ーー、ーーー≫
「_そ、その剣は…」「救世の聖剣…」「何故あいつが!」
真っ白い剣を掲げる白騎士。物語に出てくる伝説の勇者の様に光り輝いていた。
「俺は…」ゴゴゴゴ!とりあえず、それっぽい音を出しておく。
「何をする気だ!」「応援を呼んで来ます!」「つ、強いぞ…」
剣聖エクレールが剣を構え、サアラも魔法をいつでも撃てる様にしている中で、トトは通信魔導具を起動。
ゴゴゴゴ!
『トト?どうしたのこんな朝っぱらから。まだ暗いじゃん』
「(ホークー、今どこー)」
『城の客間だけど…なんかそっち、ざわざわしてない?』
「(ちょっとさぁ、良い物あげるから城の外で待っててくれない?)」
『…え、今何してるの?…ん?下の方に大きな魔力…まさか…』
「俺は…不壊の勇者だ!」
救世剣から光が溢れる。自分が勇者だと示す様に。
_ざわっ!「デタラメを!」「でもあの聖剣は…」
不壊の勇者と名乗る人物。光の力をここまで解放出来る存在は勇者以外には居ない。
エクレールはこんな怪しい奴が勇者だと信じられない様子。
サアラは歴史にある通りの不壊の勇者そのものだと困惑。
他の騎士達は強い光に圧倒されていた。
「俺は勇者だ!不壊の…勇者だー!」
『あ…うん…そう、遊んでるのね。了解…行くわ…』