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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
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お嬢様、ヘタレですね。

「おかえりなさいませお嬢様。トハーシさん。それと、ホークアイ様ですか…ルーアは気を抜いていました。ノーメイクを許して下さい勇者様」


「ただいま…いつもこの家では化粧してないじゃない」

「どうも、お邪魔します」


「ホークアイと申します。化粧無しでも充分素敵ですよルーアさん」


「お嬢様、勇者様に素敵と言われました。友達に自慢しまくります」


「恥ずかしいからやめて」


 辺りはもう暗く、星が出ている時間。トト、リンダ、ホークアイはムンゾ邸に入る。玄関でトトは武装を解除した。



「あ、ここで武装解除しちゃった…って今更か。にしても服ボロボロだなぁ…すみません着替えて来ます。…どうしました?」


 気が抜けていたので、リンダとルーアの前で武装を解除してしまったが、この二人なら良いかと周りを見ると皆喋らない。



 トトの服、上半身の部分がボロボロで肌が見えている。大部分に火傷の跡が残り、左腕は黒い義手。


「トト…ダンジョンで…何が…あったんだい?」


「トハシ…腕が…無いの?」


「あー…はい。とりあえず着替えて来ます」


 失敗したなーと思いながら客間へ行き、普通の服に着替えて戻る。落ち込んだホークアイが目に付いた。



「お待たせしました。まだ少しは活動出来るので…客間で話しますか?」


「ええ…」「ああ…」


「では、お茶の準備をしてきますね」


 3人は客間へ行き、ソファーに座る。ホークアイに対面する形でトトとリンダは隣り合って座る。


 リンダがピッタリとくっついているのは、ソファーが狭いからだと思いたい。



「あの後、全身タイツが追ってきていたから最奥まで行ったんだ。そこで、強い奴に会ってさ。左腕だけで済んだのは奇跡だと思うくらい強かった…。まぁホークは気に病まないで欲しい。俺が弱かっただけだから」


「そう…か…でも…いや、謝り続けていたら切りが無いか。強かったってどんな奴だ?魔竜より強いって事だろう?」


「あぁ、勇者タケル…魔竜なんか比べもんにならないくらい強かったぞ」


「…タケル?」


 トトが強かったというくらいだから、相当な強さだったのだろう。そして勇者タケルなんて知らない。



「帝国に裏切られ処刑された不壊の勇者タケル。俺が会った時には、絶望の勇者って名前だったけど」


「不壊の勇者は…」


「事実よ。不壊の勇者はターケル。さっきオーランド公爵が認めたわ」


「そうだったのか…じゃあトトは不壊の勇者より強いって事?」


「そうだな。だから尊敬しろ、崇めろ。まぁ体力は全盛期の半分だったらしいけどな」


 それでも最強の存在と言われた不壊の勇者に勝つトトは、これからまだ強くなる。少し追い付いたと思ったら、また遠くに行ってしまった。そう思うのは当然だった。



「…トト、それで…あの力は…なんだ?」


「…あの力?黒い奴?白い奴?赤い奴?」


「白と黒の斑模様の奴だよ」


「…秘密」


 あまり言いたく無い。破壊の力なんて言いたくないので黙秘権を行使。ホークアイが黙って見詰めてくるが言わない。



「…ちゃんと言ってよ、大事な事なんだから」


「…秘密だお」


「「…」」


「もういいじゃない。皆生きて帰って来れたんだから」


「…まぁ、そうだね。その内言ってよ」


「…その内な。今度な。機会があればな」


 用件の後回しを並べていく。ホークアイは諦めたように笑い、足を組んでトトとリンダを眺める。真っ直ぐホークアイを見詰めるトト、左腕の義手を撫でているリンダ。恋人同士の様に見えるので、付き合っていないのが不思議に思っていた。



「そうだ、城で祝勝パーティーあるんだけど行く?」


「あぁ、別に良いぞー」「まぁトトなら断るのは当然…え?良いの?」


「パーティーって何するか知らないけど、城に入れるんだろ?」


「入れるけど、何企んでるの?」


 トトがパーティーに参加しても良いなどあり得ないと思っているホークアイ。トトは「見たい物がある」と言うので思い出した。



「あぁ、転移魔導具?」

「まぁ、そんなもん。リンダさんも行こうね」

「え?わ、私もトハシと一緒に良いの?」


「もちろん。お城の案内してくれると助かるな」

「うん!一緒に歩こうね!」


 多方向から話し掛けられるので、リンダと共に歩くのは難しいがそれは言わないでおく。


(まぁ、トトならなんとかするし。…欠損でも回復する霊薬は存在する…探すか)

「じゃあ伝えて来るよ。お二人はごゆっくり。トト、これ通信魔導具だから持ってて」

「はいよ。またな」


 通信魔導具を渡し、去っていくホークアイ。ここで話せない話題は通信で話そうという事だろう。



「トハシ、大丈夫?疲れてない?」


「あ、はい。実は限界なんで、寝込んで良いです?」


「うん。看病するからね!」


 客間の隣に客人が泊まれる部屋があるので、軽くお風呂に入りベッドに横たわる。



(もう動けないな…ちょっと、無理しすぎたか…明日はゴロゴロしよう…)


 間接照明が照らす部屋で仰向けに天井を見上げていた。


 何か扉の前で話し声が聞こえる。



「お嬢様、チャンスです」

「駄目よ。トハシは疲れてるの」

「お嬢様、チャンスです」

「…それは聞いたわ」

「お嬢様、チャンスです」

「…知ってるわよ」

「お嬢様、チャンスです」

「……行ってくる」

「ご武運を」

「…何もしないわよ」



 コンコン。「トハシ、もう寝た?」


「いえ、横になってボーッとしてました」


「あら、寝ないの?寝れないなら、そ…添い寝してあげましょうか?」


「じゃあ、お願いします」


「ふぇっ!?い、良いの?…じゃ、じゃあ添い寝するだけだからね!」


「ありがとうございます」


 リンダと並んで横になる。ベッドは割りと大きいので、並んでも身体が触れる事は無いが「…」ジーッと見られると落ち着かない。



「リンダさん。あの時は、ありがとうございました。あなたのお蔭で、頑張れました」


「感謝しなさいよね…トハシの為なんだから」


「ええ、感謝していますよ。…じゃあ、おやすみなさい」


「う、うん…あの…いや、なんでも無い…おやすみ」




 ______




 翌朝。


 寝室に忍び寄るルーアは、眠っているトトとリンダを確認。服に乱れは無かったので、何も無かったのかと落ち込んでいた。


「あぁ、やっぱりお嬢様はヘタレですねぇ」


「…ルーアさん。確認しに来たんですか?」


「あらトハシさん。起こしてしまいましたね。お嬢様に手を出さないとなると、脈なしですか?」


「寝起きでする質問じゃないですよね。ただ身体が動かないんで手を出す出さないの選択肢が無いだけです」


「ほぅ…じゃあ身体が動いていたら抱いてました?」


「そうですね。良い女を抱きたいと思うのは当然じゃないです?」


「…」力なく笑うトトは本当に動けない様子で、天井を見詰めている。ルーアはふるふる震えているリンダを観察していた。



「あら、お嬢様の耳が真っ赤ですねぇ…これは起きてますねぇ…良かったですねお嬢様。抱いてもらえますよ」


「もう!うるさいわね!…あ、う…ばかー!」


 涙目で逃げていくリンダに「あぁ、今日も可愛いですねぇ」

 いつもの通りにルーアが喜ぶ。






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