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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
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再会を喜ぼう

「くぼぁっ!」綺麗な弧を描き、宙を舞う勇者ホークアイ。


 人々は呆気に取られて眺めるしかなかった。


 ドサッ。ホークアイもまた呆気に取られ、「な、なんで…」殴られた頬をさする。



「おーまえーをなーぐりにーはーるばるーきーたぜー」


 ゆっくりとホークアイに近寄るトト。


「トハシ、やっぱり…殴った」リンダは少し遠い目で二人を眺める。止めはしないのは、展開が気になるから。



「あ、アヴァロスさん…どうして殴るんですか!」


「はっはっは!まーだ気付かないかー?いつ気付くんだろうと思っていたけど、勘が鈍ったかなー?」


「いや、あの、アヴァロスなんて心当たりが…いや……1人…居た」


 人々が見詰める中、ホークアイの顔が青くなっていくのが解る。周りから勇者は黒騎士に何か悪い事をしたのではないかとささやく声が聞こえる。



「アヴァムラムーラ君だね!悪気は無かったんだ!君があの子を好きなのは知っていたんだけど!可愛いかったからつい!」


「…いっぺんその頭カチ割って回復してやろうか?あぁ?」



「「……」」



「…くっくっく」

「…ふっふっふ」


 ホークアイは起こしていた身体の力を抜き、パタンと仰向けに。腕を顔の前に置き、唇を噛み締めていた。



「…おかえり、トト」


「…あぁホーク、ただいま。…なーに泣いてんだよ」


「君が生きていたんだ。こんなに喜ばしい事はないよ」


 ホークアイの顔が酷く腫れているが、そんな事も構わずに泣き笑いしていた。


 リンダは二人を眺め、「男の友情って奴ねぇ」ボソッと呟く。



「…トハーシ殿」

「あぁ、オーランドさん。ちょっと限界なんで…後はおまかせして良いです?」


「あ、あぁ。任せてくれ。トハーシ殿に最大級の感謝を贈ろう!皆!帝国の英雄に感謝を!」


「「「おおおぉぉぉぉ!!」」」


 ビリビリと鼓膜を刺激する勝利の雄叫びが起きた。称賛する声、喜ぶ声、憧れの眼差し、様々な想いを受けながらトトはホークアイに手を差し伸べる。



「ありがとう。本当に、トトは私の英雄だよ」


「よくそんな恥ずかしい事言えるな。とりあえず、俺もう疲れたからリンダさんの家に帰るけどどうする?」


「じゃあ私も行って良いかな?リンダウェルさん」


「ええ、良いわよ。でもこれから大変ね。勇者」


 活躍した黒騎士と勇者。素性が知れているホークアイは大変だ。取り込もうとする皇族や貴族は多く、ノール王国と同様にパーティーの誘いは連日連夜開催される。


 トトの場合はオーランド公爵が助力を願った者とされているので、取り込もうとする者は少ない。パーティーの誘いはありそうだが。


 称賛する者に見守られる中、トト、ホークアイ、リンダは帝都は向かって歩き出す。



「王国でも大変だったらしいじゃねえか」


「あー、そうだね…縁談とパーティーの話が多くてさ。それでここでも同じかと思うと正直困るよ」


「ふーん。そういや彼女達はどうしたんだ?」


「彼女達は別れたよ。なんか目が覚めたというか…」


 手紙で別れを伝えたらしいが、そう簡単にはいかないのは確か。女性に追われる未来を想像するのは難しくない。



「今まで遊んでいた罰だ。ボコボコにされて来い」


「そうね。女の敵ね」


「…いや、もう何も言い返せ無いね。ところで二人は付き合っているの?」


「ええ…」「いや、付き合ってないよ」


「…え…どっち?」


 リンダの眼力が怖い。どちらにせよ周りには兵士も居るので、付き合っていないと答えないといけない。貴族の情報は早いので、リンダとムンゾ家にも迷惑が掛かる。



「あの、少し宜しいですか?」


「ええ、歩きながらで良いなら」


 占い師のサアラと剣聖エクレールが三人の元へやって来た。二人共に表情が柔らかく、憧れにも似た表情で見詰めて来る。見下される視線に慣れているトトは居心地が悪かった。



「本当に、ありがとうございました!あんなに強大な魔物に立ち向かう姿!不壊の勇者様みたいに勇敢で格好良かったです!」


「心が踊る闘いだった…是非一度、手合わせして欲しい」


 ガンガン!「…それは光栄ですね。…リンダさん、この鎧を殴ると手が痛くなりますよ。ほら、赤くなってるじゃないですか」


 ムスッとしているリンダをなだめ、ホークアイにサアラとエクレールを任せる。



「ホークアイ様もあの光の鎧、凄かったです!伝説の勇者様みたいで素敵でした!」


「ありがとうございます。ではもう城に居なくても良いんですね?」


「はい、と言いたいんですが…祝勝パーティーに参加して貰いたくて…」


「疲れてるんで、私達は行けませんよ」


「お二人が回復してから開催する予定なんだ。是非参加して欲しい」


 そうは言っても行きたくない。トトなら尚更行きたくないであろうパーティー。予想出来る未来しか無い。



「…考えておきます」


「よろしくお願いします。あの、さっきはどうして殴られたんですか?」


「…まぁ色々ありまして。すみませんが、また城に行きますのでこれで…」



 また行く約束をして、二人から離れる。そして、機嫌を取り戻していたリンダと話すトトを見る。


(君に何があった?あの力は異常…)


 トトにダンジョンでの事も聞かなければいけない。急激に強くなりすぎている。このまま強くなっていけば…


「…考え過ぎか」


 今は再会を喜ぼう。



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