遅えじゃねえか
『天まで…届け…混沌…破壊……後3つ…』
「そういやこいつの属性って何だ?闇?邪?」
ゆっくりと立ち上がった殻兵獣を見て、うーんと悩む。破壊属性が効くなら良いかと破壊神剣を空に掲げた。
「軍が来ないなら…封印解除・壱式」
破壊神剣に白と黒の斑模様が浮き出てきた。破壊神剣の纏う力が上がっていく。
『そこまで…使い…こなすか』
「そりゃ、自分用に作った剣だからな。行くぞ」
タンッ。殻兵獣の眼前まで高速移動。
「破壊乱武」バキバキバキバキ!
頭、胸、肩、腹、腰と連撃を叩き込む。
バキバキ!徐々にひび割れていく身体。
「うおっと」掴まれそうになったので後退。
ポロポロと表面が剥がれていく殻兵獣の身体。片手を天に向けている。
『エナジーヒール』ギユュュ!黒い光に包まれ、ひび割れが修復。
「えー…そんなキモイのに回復魔法使うなよー」
黒い兜の中で呆れた表情。毒々しい回復魔法なんてあるんだと感心しながら、力を溜め追撃の準備。
「こうなったら連撃で…ん?なんだ?」
殻兵獣は両手を天に向けている。回復は終わったのに何をするのかと身構えた。
『エビル……エナジーパワー、エナジースピード、エナジークイック、エナジーディフェンス、エナジーマジック、エナジーレジスト、エナジーバリア、エナジーオーラ、エナジー…』
「ちょっ!強化し過ぎー!」
ドンドン強さが増していく殻兵獣に焦る。直ぐに追撃。
「破壊連波!」ギャリギャリギャリギャリ!
破壊の波を飛ばし
「破壊乱武!」バキバキ!バキバキ!
頭、胸、肩、腹、腰と連撃を叩き込み
「破壊の一撃・壱式!」
バキン!脳天に一撃。
「とどめー!ジャーストミーート!」
大きく振りかぶって渾身の一撃。
ドッ!『グオオォ』バキン!
「ホーームラーン!」
フルスイングで吹っ飛ばす。
グルグルと回転しながら吹っ飛んで行く殻兵獣。
バサッ。翼を広げ空中で急停止。
『ググ…こちらの…番』
ギユュュ!
両手をこちらに向けると同時に巨大な黒い光が出現。
「_来る!」
後ろには帝国軍。避ける訳にはいかなかった。
『エビル…エナジー・フォースブラスト』
ギユュュュュ!締め付けられる音が響き
黒い光がうねりを上げて迫って来る。
「封印解除・弐式…くっ…」
ビキビキ。空間が軋む。
破壊神剣を天に向け
「…破壊…砲撃」
力強く振り下ろす。
ドオオォォ!黒い光と破壊の斬撃が衝突。
『…ググ…ガガ…』「ぐぎぎぎ…壊れ…ろ」
ドコオォォ!逃げ場の無くなったエネルギーが拮抗。
爆発寸前だった。
『力を…もっと力を』
「うぉぉぉこうなったらぁ!しっかり働けー!呪怨砲!」
ドオオォォ!_オオォォォ!_イヤァァァ!_タスケテェェェ!_ダメェェェェ!_キカナイヨーコイツニハーキカナイヨー!_ヨオォォォ!_イタイヨォォ!_ウィチィグォパァンツ!_ニクイニクイニクイ!_イヤァァァ!
呪怨砲の呪いが黒い光を包み。
ドゴォォォ!黒い光を押し込める。
「…」
光が晴れると、殻兵獣は地上で立ち尽くし、トトは膝を付いて動かない。
『ググ…』
殻兵獣はトトを目指しフラフラと歩いてくる。その身体は破壊の攻撃でボロボロ。
「あ…ぐ…」
トトは身体が震え、硬直。破壊砲撃の反動で動けなかった。
(あ、やべ…殺られる)
『…この闘いに…参加出来る者が…居たか』
フラフラとトトの元までやって来た殻兵獣が呟く。
「聖烈斬!」ガキン!
その時、殻兵獣とトトの間に割って入った男が殻兵獣を牽制した。
白い鎧を纏い、白いマントを拡げ、頭にサークレットを装備した輝きの勇者。
(…遅えじゃねえか)
「…助太刀します。アヴァロスさん…私では役不足ですが。回復を…妖精の雫をかけます、動かないで下さい」
(んなこたねぇよ…ホーク。ありがとな)
『勇者…か』
「…あり…がと…」
「お礼を言うのはこちらですよ。貴方に敬意を表して、私も…命懸けで闘います」