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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
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もうやる気は無いです

 プスプスと肉が焦げた臭いが漂い、山の様な黒い巨体が草原に倒れ付している。


 その傍らでうずくまる黒い鎧の男。


「目がー!うぉぉふ!目がー!」


 目が痛い。鼓膜もやられた感覚。なんとかして回復を試みるが直ぐには治らず、ジンジンと頭が痛い。



「はぁ、はぁ…頭痛い…調子こいてフルパワーで撃っちゃったな…」


 辛うじて浄化兵器を収納。仰向けに寝転がり、夕陽に染まる空を眺めた。


(こいつ死んだのかな?)


 涼しい風が吹き、サーッと草が撫でられる。上だけ見ていれば、ピクニックにでも来ている様な清々しい空。


 地面を伝い、足音が来るのが振動で解る。



(斥候かな?本軍はまだ来なさそうだけど…)


 ドクン。足音の他に、鼓動が聞こえた。


 ドクン。ドクン。「そりゃ…簡単にいかないか」



 重い身体を起こし、黒い山を見る。地面を伝う鼓動が聞こえ、微かに上下している。


 トトはゆっくりと立ちあがると、黒い山から視線を外し振り返る。

「これは、貴方がやったのか?」こちらに近寄る数名の騎士が居た。軽装で巨人の調査に来たのだろう。警戒した表情でトトを見据えている。




「ええ…離れた方が良いですよ。まだ生きています」


「だが…虫の息だろう?一応魔物の様子を確認したいのだが」


「じゃあ…止めを刺します。待っていて下さい」


 騎士を置いてフラフラと歩く。倒れた巨人の横を歩き、足、腰、と通りすぎ首元に到着。


 破壊神剣を抜き_ザンッ!_巨人の太い首を切断した。



(顔デカイなぁ…1つ目だからサイクロプスの仲間なのかな?)


 切断したが、血は出ない。頭には角があったので、何かに使えるかと首に近付き収納。その時、違和感があった。



 ドクン。ドクン。「まだ、鼓動が…」


 足元の方に騎士が居る。更に後方には軍が近づいて来ていた。



 もし、まだ動くのなら危険だ。首を落とされても動く生命力に関心しながらも、巨人の上に登り胸の部分に到着。


 ドクン。ドクン。「心臓は動いてる」再び破壊神剣を抜き、鼓動が鳴っている部分に突き刺した。


 バリンッ!突き刺した瞬間。


 ガラスが割れる様な音が響き。


 ドクン!ドクン!鼓動が激しく響き出す。



「…あれ?間違ったかな?」


 対処は間違っていない筈。なのに悪化している現状。


 バリンッ!バリンッ!巨人の内側から響く音。


 バキバキ!バキバキ!まるで殻を破る様な音。



「こいつ殻兵獣だったよな…もしかしてこの巨体が殻だった?」


 バシュン!巨人の胸を突き破り、空中に飛び出てきた物体。


 巨人と比較したらかなり小さい。2メートル程の人型。


「ほー、キモいなぁ…」



 真っ黒い身体に、緑と黄色の線が血管の様に張り巡らされ、脈打っている。1つ目が妖しく光る、黒い翼の生えた魔物。


≪殻兵獣ルゼル・タイラント、クラスーー、強さーーー≫


「…あーあ、疲れたなぁ…どこかに助けてくれる勇者様でも居ないかなぁ…」



 正直、トトはもう浄化兵器でストレス発散が終わっているのでやる気が無い。



 夕陽に照らされ、禍々しい魔物が漆黒の鎧の男と対峙している。


 その光景を見つめる騎士には、辿り着けない頂上の闘いの様に映っていた。


『…破壊』


「やるか…やりたくないけど…こっち見てるもんなぁ」


『グルアァァァァ!』


 殻兵獣の咆哮が周囲一帯に響く。


「まぁ、なんとかなるだろ」


 厄災に匹敵する魔物と、厄災っぽい男の闘いが再び始まった。




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