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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
74/163

やっとこれの出番がきた。

 帝都の北側。



 平原が続く先に森がある。そしてその森を抜けた先に監視用の砦があり、その砦では標高の高い山脈地帯を監視している。

 監視をしている理由は、山脈から下りてくる魔物の監視。



 弱い魔物であれば討伐し、対応出来ない強い魔物であれば高価な通信の魔導具で帝都に報告。報告を受けた帝都から討伐隊が派遣される仕組みになっている。


「なぁ、厄災が来るって本当か?」

「らしいぞ、昼前に通信が来たって部隊長が言ってたし」


 砦には高い監視塔があり、二人一組で望遠の魔導具を使いながら山脈の監視をする。



「でも帝都だろ?ここは割りと離れてるし」

「いやいや、ここから厄災が来るかも知れないじゃないか。一番ここが危ないだろ」

「そういやそうか。あーあ…早く帝都から交代の部隊来ないかなー」


 監視の部隊は帝都から派遣され、月毎に交代していく。部隊は騎士団、魔法士団、冒険者から選出される。



「はははっ、違いない。…ん?あれ?」

「んー?どうした?魔物下りてきたか?」


「いや、あの黒い山が動いた様な気がしてな」

「あの山?どれ?左側の黒い山?」


 山脈の中でも一際黒い山。標高は数百メートルと低めだが、木が生えていないハゲ山なので割と目立つ。地形図にも載っている山なので昔から存在している山。



「動いて無いけど?寝不足なんじゃないか?」


「そうか?…」_ゴゴゴゴ!

「_っ!なんだ!」_ゴゴゴゴ!

「地震か?でも揺れてない…見ろ!あの黒い山!」_ゴゴゴゴ!


 黒い山が動き出す。バキン!バキン!山を割る様な音が響き、山が真っ二つに割れ、腕が飛び出てきた。


「…嘘…だろ」

「なんだ…あれ」


 バキン!バキン!そして、割れた黒い山から頭、身体、そしてゆっくりと立ち上がる。


「ほっ、報告だ!」

「あっ、ああ!」


 監視をしていた者が、カンカンカン!鐘を鳴らし、直ぐ様塔を降りて報告。


 ズン!ズン!その時には既に黒い山が歩いていた。



 異変に気付いた砦の者達は混乱を極める。

「帝都に報告!報告!巨大な魔物が出現した!」

『なんだと!大きさは!』

「山だ!山が動き出した!」

『山!?詳しい説明を!』

「大きすぎて解らな__ドオオオオ!」


 数百年の歴史を誇る監視砦が消え去った瞬間だった。





 ______





 アヴァロスに武装したトトは、リンダ、セオルムを連れて北側の門を目指す為に中央区を歩く。


「ね、ねぇ…こんなにゆっくり行って良いの?魔物が来てるんでしょ?」

「ええ。来てますけど、まだ遠いんですよ。帝都に来る時に見えたんですけど、あの小さく見えた山脈からだと思います」

「あの場所は昔から魔物が多い。監視砦があるくらいなんだが…まだ報告は…」



 無い筈…セオルムがそう言いかけた時に、あわただしくした兵士が走って来た。


「はぁ、はぁ、オーランド公爵様!報告があります!」


「なんだ?」「北の監視砦が魔物の襲撃に遇いました!」


「…規模は?」「それが…巨大な魔物…山が動いたという報告の後、通信が途絶えました…」


「…はぁ…分かった。出来るだけ戦力を北側へ寄越してくれ。私は今から北門へ行く」


「はっ!」



 歩みを止めないトトは、兵士の話を聞きながら心の中でため息を付く。


(まじかよ…山って…)

「トハシ…巨大な魔物って…大丈夫だよね?」

「んー…見てみないと何とも言えないですね」


「…私は各団長と共に指揮を取る。トハーシ殿はどう動くのだ?出来れば指揮下に入って貰いたいが…」


「…俺は1人で動きます。周りを巻き込む恐れがありますので」


「あの炎は熱くなかったよ?私も一緒に居たい…」


 煉獄火炎の制御力を思い出して、リンダは自分もと願うがトトは断る。破壊の力を使う場合、リンダが危険だから。



「…リンダ、すまないが魔法士団の指揮下に入ってくれ」

「…はい」


 北門に近付くにつれて、口数は減っていく。北区は職人街。金属を打つ音や、モクモクと煙が立つ建物があったり工業地帯の様な雰囲気。


 北門に到着。

「これは、オーランド公爵様!どうぞ!」

「ああ、これから軍が通るからスムーズな対応を頼む」


「はっ!了解しました!」


 北門から外に出る。遠くに山脈が見えるが、まだ魔物は目視出来ない。



(…来てる)


「もうすぐ軍が到着する筈だ。作戦を立てよう」


「いえ、間に合いません」

「トハシ?魔物はまだ見えないよ?」


「…先行します」「え?ちょっ…」


 呼び止める声を無視してトトは全速力で走る。



 ズン。


 風を切り、音を置いていくスピードで帝都から数キロ地点の平原に到着。周りには街道が広がり何も無い平原。


 そして、遠くに見える黒い点。


 ズン。ズン。


 少しずつ大きくなってきた。


「ふっふっふ…やっとこれが使えるなぁ」



 収納から取り出した武器を担ぐ。


 余った素材で強化改造した全長3メートル。太さ直径1メートルの筒状の兵器。


≪浄化兵器・シャイニング・ソーラーレイβ、ランクーー、浄化天使ーーー、攻撃ーーー、ーーー≫



 ズン!ズン!

 やがて魔物の姿が見えてきた。


「うわ…デカッキモッ」


 緑と黄色の線が、身体全体を巡り血管の様に波打たせていた。


 真っ黒い巨人の姿。


 ズン!ズン!ズン!

 巨人が走って来る姿がシュールに感じる程に違和感のある光景。


「よっしゃ、行くぜ!デカイ全身タイツ野郎!」


 キイィィィィ!浄化兵器の力を溜める。

 かん高い音が出る程の急激な魔力の吸い込み。


「鑑定はまだ出来ないか…あれ?まだ大きくなるの?」

 キイィィィィ!

 浄化兵器の力を感じ取ったのか、減速していく巨人。


『グブォォォ…』

 うなり声を上げる巨体。


 大きな1つ目でトトを見下ろす様はアニメやゲームのボスに出てきそうな理不尽さ。


 トトは観光で行ったテレビ塔を思い出させる首の角度で見上げる。

「見え…た」キイィィィィ!


≪殻兵獣ギーガ・タイラント、クラスーー、強さーーー≫


「なんてもん呼んでんのさぁー!クソタケルー!_っ!来た来た!先手必勝!」



 浄化兵器の力が溜まり。巨人に砲身を向けた。


「あれ?これどうやって撃つ?あっ、ボタンね。ポチッとな」


 腰が引けながらも浄化兵器の大きな発射ボタンを押す。



 カッ!視界が真っ白く染まり。


 高エネルギーレーザーが発射され。


 ゴオオオオ!遅れて轟音が鳴り響く。


「いぃやぁぁー!まぶしぃー!」


 帝都を照らす巨大な光の柱が上がった。


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