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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
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オーランド公爵

「セオルム様、お待たせ致しました」

「いや、急に押し掛けてすまない。そちらがトハーシ殿か。私はセオルム・オーランドだ」


「はじめまして。トハーシです」


 客間で待っていたのは、年齢は40代の男性。金髪の髪に少し白髪が混じり、鋭い眼光が色気を増している。


 スーツに似た服装なので、転移者の影響かなと思うが今は目の前のセオルム・オーランドにどうやって話を進めるか考えていた。



「ゆっくり話をしていきたい所だが…用件から言おう。トハーシ殿に助力を願いたい」


「助力…具体的にお願いします」


「今、帝都に厄災が迫っている…いや、もう来ているかもしれない」


 厄災。破壊の魔王の再来が来るかもしれないと言われたが、魔物の襲撃以外は平和そのもの。確定的な事を言われていないので、正直実感が無い。



「あの、何故厄災が来ると解ったんですか?」


「…帝国には専属の占い師が居てな、予言で厄災が今日から来ると出た。信頼のある情報だ」


「予言…前からあったんですか?」

「いや、今朝急に予言が出た。こんな事は初めてと言うくらいだから、余程の厄災が来ると判断して現在軍部の強化をはかっている」


「今朝急に…厄災…破壊の力……ん?」

(それ…俺じゃね?…いや、まさかな…)


 リンダはセオルムとトトの様子を黙って見ている。自分が口出し出来ないと分かっているが、自分が屋敷に招いたせいでトトに迷惑を掛けていると感じていた。



「勿論謝礼はする。活躍によっては帝国の役職にも推薦しよう」


「んー、役職とかは遠慮しますよ。俺にもやらなきゃいけない事があるんで…一応魔物が出たら動きはしますけど、俺個人で動くと思いますよ」


「少しでも助力して貰えるならありがたい。…やらなきゃいけない事は聞いても良いか?」


「…ええ。不壊の勇者について知りたい事がありまして…」


 不壊の勇者?セオルムは首を傾げる。自分が良く解っている物語なので問題は無いが、それがやらなきゃいけない事なのか疑問に思った。



「簡単に答えられる事なら、今聞いても良いぞ」


「…ありがとうございます。では…何故、帝国は不壊の勇者を処刑したのですか?」

「トハシ、何を…」

「…処刑?初代オーランド公爵が不壊の勇者。それを知ってて言うのか?」


 セオルムが目を細めてトトを射貫く様に睨む。不敬罪で罰を受ける程の発言に、リンダがオロオロと二人を交互に見やった。



「それは歴史上の不壊の勇者ですよね?俺が言ってるのは、帝国の人間達に異世界から転移させられ、帝国の人間達の為に己の心を殺して闘い、帝国の人間達の希望をたった1人で背負った優しい男の事ですよ」



「…」「無礼だ、知らないで済ますなら、仕方ないので皇帝に直接聞きに行きますけど」


 セオルムは両手を組んで黙り、トトは無表情でセオルムを見詰めている。


「…それはどこで知ったのだ?」

「本人に聞きました」

「_っ!生きて…いたのか!」

「いえ、死んでいます。俺が会ったのは具現体ですから」


「ね、ねぇどういう…事?具現体って」


 セオルムが額に手を当て、ため息を付いている。具現体になる程に深い思いを持った不壊の勇者の存在。そして強い力を持っている目の前の男は、処刑された理由を知ってどうする気なのか。



「まぁ簡単に言うと、本物の不壊の勇者はターケルだったって事ですよ」


「そんな…」


「理由は単純。帝国が強くなりすぎたターケルを恐れた…と聞いている…それを知って何を望むんだ?」


「やっぱりそんな理由でしたか…まぁ、本物の勇者がタケルだって解っているなら、今のところはそれで良いです。別に歴史を変えようとしている訳じゃないですからね…俺は」


 トトは何かを変えるつもりは無い。知っているなら先人の罪を背負いながら生きろと言う様に、トトはセオルムから視線を外して立ちあがり、客間を出ようとする。



「何処へ行く?」

「何処へって、魔物が来たから行くんですよ」


「…私も行こう」「わ、私も」


「まだ魔物が来るまで時間があるので、鎧に着替えてきます。場所は北側ですから」



 そんな距離まで解るのかという疑問をスルーしたトトは、1人で書庫まで行き黒い古代武装アヴァロスに武装。


 そこで破壊神剣を眺めながら、深いため息を付いた。


「タケル、お前はどうしたいんだ?魔物まで呼んで…」


 憎悪が上昇している…魔物を呼んだのはカタカタと揺れる破壊神剣だと確信した。だが、神剣は意志は伝えずにカタカタと揺れるだけ。


「帝国を壊したいのか?」

 カタカタ。


「なら、誰かを殺したいか?」

 カタカタ。


「どうする?…気晴らしに城くらい壊すか?」

 カタカタカタカタカタカタカタカタ。




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