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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
72/163

会議

 皇城にて、軍事会議が開かれた。


 議題は帝都に迫る厄災。


 参加しているのは、オーランド公爵家のセオルム・オーランド。


 もう1つの公爵、ラティール公爵家のベリタネス・ラティール。


 騎士団から団長の剣聖エクレール、副団長の槍聖ドーウェル。


 魔法士団からも団長の賢者シンデラ、副団長の高位付与術士ダムテル。


 冒険者ギルドからはギルド長。他にも占い師のサアラ、中立連合帝国担当者、教会関係者など代表者が集まった。



「では、帝都に迫る厄災についてだが…サアラ殿、あの襲撃で終わりでは無いと?」

 会議を進めるセオルム・オーランド。


「はい。クラス7が発生した襲撃ですが、まだ厄災と言うには規模が小さいです。具体的な事は解りませんが警戒は続けて頂きたいと」


「何が起きるか解らないのに警戒しろと言われても困る。あれで終わりかもしれないじゃないか」


 サアラの発言に教会関係者が噛み付く。ギルド長、中立連合の面々が頷いてサアラを見据える。


 確定的な事が解らない以上、各方面は大した対策が打てないので仕方ないが。



 厄災が迫っているのは確かなのだ。だがサアラはそれをどう説明したら良いか解らない。


 思い詰めた表情のサアラにエクレールが助け船を出した。

「騎士団は引き続き、部隊を各箇所に配置して警戒を続けます。幸い帝都には戦力が集まっていますし、勇者も居ます。それに…ドーウェル、宜しく」


「はい。今、リンダウェル・ムンゾを遥かに超える魔法使いがこの帝都に居ます。その方に助力を願えば厄災にも対応出来るかと…」


「リンダを遥かに超える?本当か?」「クラス6を単独で撃破出来る紅を超える?凄いな」「伝説級の職業かな?」


 火力だけなら魔法士団長に匹敵する魔法使い、リンダを超える者。参加者の興味が一気にその者へ移行した。



「その者はどこに?」「恐らくリンダウェル・ムンゾと共に居るかと…昼食の約束をしていましたので」


「ふむ、では私が行こう」


 セオルム・オーランドが先手を打つ。公爵家が直々に頼むとあれば、断る事は出来ない。そして暗に他の者に、手出しをするなよと忠告する様に参加者達に目配せをした。


 参加者の中にはやられたと顔を歪める者も居る。リンダを超える者を手中に入れたいと思うのは当然だ。無所属なら尚更。特にベリタネス・ラティールが悔しそうにしていた。



「私も同席してもよろしいですか?リンダウェルを超える者に興味があります」


 賢者シンデラが名乗りを上げる。続いて他の者も名乗りを上げたが、セオルム・オーランドは手の平を前にして発言を止めた。


「いや、先ずは私1人で行こう。人数が多くて警戒されてしまっては困るからな」


「…了解しました」


 会議は結局、騎士団と魔法士団の混合部隊を各エリアに配置。帝都内の巡回も各方面と連携して強化するに至った。



 会議が終わり、ドーウェルを呼び止めたセオルム・オーランド。


「して、件の人物はどんな者だ?」

「はい、漆黒の鎧に身を包んだ魔法使いです。名前はトハーシ。クラス7を簡単に焼き殺しました」


「…なるほど。それは強い…というか強すぎるな。トハーシという者には聞き覚えも無いし…まぁいい。とりあえずムンゾ家に行ってくるとしよう」


 ムンゾ家へと向かうセオルム・オーランド。その表情は少し緊張している様だった。




 ______



 ムンゾ邸にて、トトはリンダと共に書庫で読書。リンダはトトを眺めて、トトが読んでいる本に補足をしているだけなのだが。


「…」

「リンダさんは何か読まないんですか?」

「今トハーシを見てるから忙しい」

「…あの、トハシって呼んで貰って良いですか?トハーシだと違和感があって…」


「トハシ」「そうそう」


 不壊の勇者の本も読み終わり、紅茶を飲みながら一息。正直不壊の勇者物語はありきたりな物語。タケルすげえなーくらいの感想はあったが。



「リンダさん。ヴァイラ王国ってどんな国なんです?」


「ん?ヴァイラ王国は、女神教の教会本部がある国よ。帝国は勇者物語が有名だけど、ヴァイラ王国は聖女物語が有名ね」


「へぇー。宗教的な国家なんですね。じゃあ貴族とかも教会関係者ですか?」


「そうねぇー。熱心な女神教徒がいるのは間違い無いわ。聖人や聖女になれた人は権力を持てる様になったり、帝国の法律とは少し違う国かしらね」


 ヴァイラ王国は内乱とかありそうなイメージだったが、宗教国家として成立している。しかし王国民は女神の力を色濃く受け継いでいるという思想があり、差別が多い事はあるらしい。



「じゃあ王族は大変ですね。ポッと出の聖人とか居そうじゃないですか」


「鋭いわね。1年くらい前に現れた聖女が、王族の一部を国から追い出したって噂があるのよ。何があったかは知らないけどね。目立った噂はそんなものかしら」


「そう…なんですか。あるんですね…そういうのは」


 恐らくトリスは王族の一部の中に居たのだろう。原因はその聖女かと推測を立てる。



「あっ、そうそう。その聖女って転移者らしいわよ」


「…えっ」コンコン。「失礼します。お嬢様、トハーシさんに会いたいとセオルム・オーランド様がいらしてます」


「トハシに?…言ったのはドーウェルかしら…」


 途端にリンダが不機嫌に。自分に相談も無く、トトの情報を公爵に提供したのかと静かに怒りがこみ上げる。



「あの槍野郎…燃やす」

「リンダさん、落ち着いて下さい。口止めした訳じゃ無いですから仕方ないですよ。正直オーランド公爵が来ているなら助かるんで」


 口を尖らせ、うーうーと唸っているリンダをなだめる。煉獄火炎を見て報告しない方がどうかと思うので、権力者の耳に入る事は解っていた。


 それがオーランド公爵だったのは渡りに船。



「…ごめんね」「大丈夫ですよ」

「助かるって?」「聞きたい事がありまして」

「どんな?」「不壊の勇者についてですよ」

「私の説明足りなかった?」

「いえいえ、とても助かりましたよ。ただこれはオーランド公爵じゃないと駄目なんで」


「あの、イチャイチャしてないで来て貰えませんか?公爵様を待たせるのは流石にどうかと思いますよ」



 早く早くと手招きするルーアに早されて、とりあえず客間に通されているというセオルム・オーランドの元へ向かう。


(まともな人なら良いけど)




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