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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
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黒いわ

「女神大戦記。これかな?えーっと…」

 古の時代、天上で善神と悪神が争いが起きた。


 天は割れ、海は荒れ、大地は荒廃していく。


 悪神の力は強大。


 不利を悟った善神は、大地に住む人間に助力を願う。


 善神は願いを受け入れた人々に力を与えた。


 人々は職業やレベルを授かり、闘う力を身に付ける。


 そして善神と人々は長い時間を掛けて悪神の力を削り。


 やがて、悪神の力を3つに分けて封印する事に成功する。


 混沌の力はアヴァロという大陸に。


 破壊の力はミリアンという大陸に。


 邪悪の力はハールゲンという大陸に。


 そして、3つの力を封印された悪神の本体は天上に封印。


 力を封印した大陸に人々は住み移り、国を形成。


 国は繁栄を極め、平和な世界が訪れる。


「ふーん…神話の話が本当なら、ダンジョンで見付けた地図に描いてあった…ミリアン大帝国は神話の時代にあった国なのかな?」



 他の女神大戦にまつわる本も同じような話。パラパラと読み進めると、1つだけ悪神について詳しく書いてあった。


「悪神の能力?…混沌支配、次元移動、破壊の力、悪鬼召喚…他にもあるけど…どうやって勝ったんだろ」


 大戦というくらいだから激しい戦いだと思うが、誇張の場合もあるので完全には信じずに読み進める。


「女神ってルナライトちゃんとかかな?可愛いから俺だったらホイホイ手伝うけど…」



 コンコン。「失礼します。紅茶をお持ちしました」「あっ、ありがとうございます。ルーアさん」


 ルーアが紅茶を持って来たので、側にあったイスに座り紅茶を入れてもらう。


「今日は泊まっていかれますか?はい、では準備しますね」


「まだ返事してませんよ。もう宿は取ってありますので…」


「そこはもう解約してきました。トハーシさんが泊まる場所はこの屋敷しかありませんよ?」


「え?なんで宿知ってるの?」「全力で調べました」


 ルーアは冗談では無く本気で言っている。「本当です。返金もしてあります」宿に払った値段が一致していた。



「お嬢様のお部屋か、お嬢様のお部屋、それかお嬢様のお部屋のどちらに泊まりますか?」


「それは選択肢が1つですよ…それならこの部屋で本を読んでいますので、寝床はいりませんよ。1週間くらいなら寝なくても大丈夫なので」


「睡眠は大事ですよ。それとお嬢様は誰かが添い寝しないと泣いてしまいます」


「ルーアさんが添い寝してあげて下さい。リンダさん疲れていたみたいですけど、大丈夫ですか?」


 ルーアの表情に陰りがある。あまり体調はよくない様だ。



「お嬢様が起きられたらお呼びしますので、お部屋まで来てもらっても良いですか?」


「ええ、良いですよ」


 ニヤリと笑うルーアが出ていく。嫌な予感がするが、リンダの様子を見ておきたいので仕方ない。


 再び本を読んでいく。不壊の勇者についての記録。

「不壊の勇者か…ん?オーランド公爵家が皇帝に寄贈した聖剣が姿を消したって…救世剣の事かな?」


 記録はオーランド公爵家が出来て数年後。宝物庫から聖剣だけが消えていたという。



「それにしても、どうやったらお偉いさんに会えるんだろ?ホークに頼むか…乗り込むか?」


 アヴァロスに武装すれば顔は解らないが、槍聖のドーウェルは勘づくのでリンダに迷惑が掛かりそう。


「ならもう1つ古代武装作るかな…今なら誰も来ないと思うし…作成」


 古代鎧・アヴァロンの光鎧、魔銀結晶、魔金結晶、オリハタイト、マギマタイトを合成。


≪古代武装・アヴァロン、ランクーー、ーーー、ーーー≫


「やっと出来た…真っ白い玉だな。アヴァロスの反対属性だから…誤魔化せるかな?まぁバレたらその時だけど、タケルの聖光奥義みたいになりそうだなぁ」



 コンコン。「トハーシさん。お嬢様の準…起きられました」


「はい、今行きます」


 ルーアに案内され、リンダの部屋に到着。


「お嬢様、入りますね」中に入ると、可愛いものが多い。ぬいぐるみやピンクの机など。


 ソファーに座るリンダが出迎え、「座って」トトも対面のソファーに座る。



 ルーアがごゆっくりと言いながら退室。ガチャリと鍵が掛かる音が聞こえたのは気のせいに思いたい。


「…」「あの、リンダさん。聞きたいんですけど」


「な、何かしら?」

「定期的に身体の検査とかはするんですか?たとえば、血を採って検査したりとか…」


「…?一応してるわよ。血も採られるし、それがどうしたの?」


「…いえ、気になったので…(…考えすぎか)」


「何?驚かないから聞かせてよ。何か知ってるの?」


「…気を悪くしないで欲しいんですけど…」「別に怒らないわよ?」



 リンダは大人になっても若い身体。


「…不老の研究」「…え?」


 そこに目を付ける者は必ず居る。


「…そんな事…ある訳…」「そうですね。俺の考えすぎかもしれません。でも、もしそうなら研究が過激になってリンダさんが危険な目に合うかもしれません」


「…でも違うかもしれないでしょ?」


「採血をするのは一般的な治療法ですか?」


 この世界で病気を治すには、薬を飲むか魔法を使うか。採血をして細かい検査をする技術があるとは思えないし、一般的と言えるのか。薬として扱うなら別だが。



「解らない…四年くらい前から採血が始まったけど、治す方法を調べるって…」


「そうであれば良いんですが…可能性は捨てきれません」


 リンダの声が震えている。嫌な想像しか出来ない様子。下を向き、視線をさまよわせていた。



「でも、どうしようもないじゃない…」


「すみません…余計な事だとは解っています。だから、俺が勝手に調べても良いですか?」


 迷惑は掛けないと言うトトに、リンダが口を尖らせる。


「ふん…勝手にして」「ありがとうございます」


「なんでお礼なんて言うのよ…ねぇ、もしそうなら私はどうすれば良いの?帝国に居るのが怖いのに、居なきゃいけない」


 リンダ成長が止まってからは帝都をほとんど出た事は無く、逃げ場所が無い。



「そうですねぇ…帝国から出た方が安全か。まぁ…そこは俺が責任を取って…」

「責任?」


「リンダさんを拐いに来ます」


「にゃ…にゃんですと!」


「嫌です?」「嫌じゃない!今すぐ拐って!」「あの、調べて黒ならですけど」


「もう黒いわ。真っ黒よ」


「…調べてからですよ」

「良かったですね!お嬢様!」

「ルーアさんいつから居たの!?」「不老の下りから」


 手の平を返すように元気になったリンダが、ルーアと手を取り合って喜んでいる。


 ひとしきりその様子を眺め「じゃあ書庫に戻りますね」部屋を出て書庫へ向かった。







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