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流れの武器屋  作者: はぎま
ニーソの街
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森へ

 翌朝、太陽が昇る前に起床。朝のストレッチを済ませ、着替えを済ませる。宿屋のおばちゃんに泊まる旨を伝え、銀貨を渡しギルドへ向かった。



「早朝のギルドって初めてだなー。意外と皆朝が早いから真面目なのかな?でも仕事は雑っていうからどうなんだろ?」



 身支度を済ませた冒険者達に混じってギルドの中へ。外はまだ暗いので、室内は照明の魔導具に照らされている。


「……」


「オラァ!俺が取った依頼だコラァ!」「お前今横取りしただろ!」「ミランダちゃん今日も可愛いねぇ!」「お前のせいで破れただろうが!」「誰よ今お尻触ったの!」「取ったら早くどけよ!」


「……出よう」


 中は簡単に言うと戦場だった。依頼書の取り合い。怒号。暴力は当たり前。それを見た瞬間、トトはそっとギルドを出る。



「怖かった…とてもじゃないけどあの中には行けない…とりあえず昨日はお金を使ったから薬草を100株採ろう」



 いつもの薬草スポットへ行き、慣れた手付きで丁寧に薬草を採って行く。特に魔物は出ず、一時間程で麻袋4枚に一杯の薬草を入れた。


 そしてギルドへ戻る。まだ日が昇ったばかりなので、冒険者の姿はまだ多い。いつもの通りにおっさんの受付に並ぶ。



「おう!また薬草摘みが来たぞ!懲りねえな!」

「無能にはお似合いの仕事だからな!」

「「がははは!」」


「……(こいつら暇なのかな?)」



 受付から少し離れたエリアは酒場コーナーになっており、酒に酔ってヤジを飛ばす冒険者の姿。トトは気にせず並ぶ。少し待つと順番が来た。



「いらっしゃいませ。トトさん、いつもありがとうございます。冒険者の言葉は気にしちゃ駄目ですよ?」


「あ、大丈夫です。雑音だと思っているので。ところで、受付によって査定って違うんですね」


「…ほう。詳しくお聞かせ願いますか?…なるほど、ありがとうございます。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」


「いえいえ大丈夫ですよ!良い社会勉強になりましたから」



 世間話のつもりで言ったのだが、チクリをした様になってしまい少し気まずくなる。他の受付に並ばなければ大丈夫かと考えない様にした。



「申し訳ありませんが1度報酬を受け取ると、変更が出来ません。なので今回の査定で色を付けておきますね」


「なんかすみません。良いんですか?」


「ええ、こう見えて私は受付の彼女達より偉いので」



 彼女達には内緒ですよ?というおっさん。よく分からないけど受付部門のリーダーなのかな?とベテランの風格があるので納得する。報酬は金貨4枚。規定の2倍だ。お互いに笑顔で話し、ギルドを後にした。


 時刻は朝。意を決して森に向かう事にする。オークの魔石は金貨1枚。肉を全て運べば金貨3枚なので、一匹倒せば金貨4枚得られる。


「金額よりもまずリベンジしなきゃな。クロスボウで頭か首を撃ち抜けば倒せると思うから、木の上から狙撃しよう」



 街道をしばらく進んだ後、街道をそれて草むらへ向かう。途中ゴブリンらしき人型を発見。静かに近付いた。



「あれはゴブリンか。クラス1の魔物だから初心者でも倒せるっていうけど…」


 ゴブリンは3匹。どうやら角ウサギを食べている様だ。少し観察する。


「グギャ」「ギャギャ」「グギァ」


(緑色の子供って感じか…顔はブスだな…おえっ、オイニーバイヤーだな…直ぐに仕留めよう)


 ブスで臭い駆除対象のゴブリン。指輪から鋼鉄の剣を取り出し、隙を見て駆ける。



「先ずは一匹」ザシュッ。


 肩から腹にかけて袈裟斬りで両断。

 抵抗無く両断出来た事に驚きつつ、_ザンッ!「ギャ…」_もう一匹も上半身と下半身が別れる様に両断した。



「凄い斬れ味…これなら何匹でも倒せる。っと魔法杖の具合を見なきゃ」


 最後の一匹が混乱している隙に、昨日作った魔法杖を取り出す。


「えいっ」指揮棒を振る様に魔法杖をゴブリンに向ける。


 ボンッ。灰色の弾が発射され「グギャァ…」


 ゴブリンの頭に命中。その命を奪った。


 トトは最後に仕留めたゴブリンに近付き観察する。頭が丸い形に陥没していた。



「剣も上手く振れるし上出来かな。魔法杖は結構強い。弱い敵なら一撃だし。それにしてもゴブリンを殺しても特に何も感じないな。耐性が付いたのかな?」



 ゴブリンは心臓部分にある魔石を取り出したら、お金にはならないので放置する。魔物の死体は、魔石を取り出して放置すると、しばらくして溶けるらしい。


 魔石は何かに使えそうなので素材入れの指輪に保存。先に進む。



「剣を振った時に感じたけど、武技も使えそうだ。武器毎に武技が違う感覚だから、沢山武器を持てばそれだけ強くなるのかな?」



 武技は武器特有の技。剣ならば二段斬り、槍ならば乱れ突き等がある。レベルアップで覚えたり、修練や閃きでも覚える。


 慎重に草むらを進んでいくと、木が増えてくる。異世界初日に来た森に到着した様だ。



「とりあえず赤みかん食べようかな。あれは少し病みつきになる味だ」



 酸味と甘味のバランスが良く、栄養も高そうなので定期的に来ようと思いながら赤みかんの木を探す。


「んー、ここら辺じゃないのかな?」


 少し奥に入ってみる。出来るだけ足音を立てない様に進み、辺りを確認。まだ魔物が居る様子は無い。


 進んでいくと見上げる程の大きな木を発見。赤みかんの木では無いが、高さがあり見晴らしの良い木なので登る事にした。


「よっと。…手足にも武器を着けたらスムーズに登れるのかね?っと着いた」


 慎重にスルスルと登り、枝や上を見て蛇等が居ない事を確認。そして地上10メートルから地面を見渡す。森の中なので木々に遮られている場所もあるが、問題無く見渡せる。



「さて、オークさんは居るかな?ゴブリンは居るけどボルトが勿体無いからなー。何か武器とか持っていれば良いけど…おっ、あのゴブリン斧持ってる。木の下を通ったら狙撃するか」


「グギャッグギャッ」


 クロスボウを構え、ゴブリンに狙いを定める。動きを追っていき、木の下に来た所で_バシュッ_「ギャ!」頭を撃ち抜き仕留めた。


「よし、命中。ここに居れば稼げそうだ」


 周囲を確認。魔物が居ないのを見た後、木を降りてゴブリンの斧を回収。再び木の上に戻った。


「ボルトを量産しよう。返しが付いて紐付きなら一々木から降りなくて良いんだけど…蜘蛛系の素材がいるのか。あと森の中ならフックショットがあれば移動が楽だし」



 考えを巡らしながらボルトを作成。ボロい斧から12本出来た。


「毒も使った方が良いのかな?となるとここら辺は…毒草、毒キノコ、毒蛇か…でも全部見分けが付かない…やっぱり鑑定欲しいなぁ」


 実際は木を降りたら直ぐに毒キノコと毒草はある。しかし素人には普通の植物にしか見えない。一般的には熟練したガイドや学者を雇うが、他人に日々馬鹿にされているトトは、そこまで頭が回らない。


 木の上で待機する事10分。ガサガサと草を掻き分けて2メートルを超える大柄な豚が現れた。簡素な槍を持ち、何かを探す様にフガフガと鼻を動かしている。



(居た。色は緑色…フォレストオークだっけな?)


 クラスは2。森の色に擬態するタイプのフォレストオーク。夜に出会うと、緑と同化しているので初心者はまず殺される注意すべき魔物だ。


 ゆっくりとクロスボウを構えて標準を合わせる。狙うは喉。


 オークが横を向いた時に_バシュッ_「フゴ!?_ゴフッ_」喉を貫いた。


「ゴフッ_ゴフッ!」


 血を吐き、息が出来ない様子でもがき苦しんでいる。


「止めは…大丈夫そうだな」


 30秒程苦しみ、やがて動かなくなった。


 トトは辺りをを確認。周囲に気を配りながら木を降りてオークの元へ。念の為、鋼鉄の剣を持つ。


「デカイなー。プロレスラーみたいだ。一撃で仕留めれたけど、まだ真っ正面から対峙するのは怖いかな」


 大きな魔物を仕留めた喜びを噛み締めつつ、鋼鉄の剣で身体を切り分け、心臓部分から魔石を取り出す。



「収納の指輪が2つ分の大きさ…これじゃあ直ぐに容量が一杯だな…」



 収納が直ぐに一杯になる事に不満を溢す。収納の魔導具を持っていない一般的な冒険者から見たらとても贅沢な悩みだが、身寄りの無いトトには死活問題。


 オークを片付け、再び木に登る。「……」再び待つが、魔物が来る様子は無かった。



「森の入り口みたいな所だから、魔物は少ないのかな?…今日は帰ろう」


 木を降りて森から出る。その後もゴブリンが出るだけなので、魔法杖で撃退しながらギルドへ戻った。


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