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流れの武器屋  作者: はぎま
ロドニア帝国
67/163

帝都の魔導具店

 トトは買い物をしに東区へ。食材等は王都で買っているので、魔導具くらいしか買う物は無い。


「本店はクルミナさんのお兄さんが居るんだっけ?お姉さんだっけ?その前に武器屋でも見てこっと」


 クルミナの姉なら美人かなと少しワクワクしながら商店街を歩く。王都と比べて道往く人に変わりは無い。


「人種も色々だなぁ。武器屋もまぁ王都よりは性能は良いか」



 特に惹かれる物も無く、武器屋を後にする。歩いていると、サムスン魔導具店までたどり着いた。


 ガラス張りの清潔感のある店。王都と同じく、向かいの店には金ぴかの高級そうな店もある。


「ジガ魔導具店はサムスン魔導具店と張り合っているのかな?」


 ジガ魔導具店は店の前で、道往くお金を持っていそうな人に声を掛けている。勿論手ぶらで地味な格好のトトには声を掛けない。


 試しに前を通ってみるが、チラ見をされて終わったのでサムスン魔導具店に入った。



「…いらっしゃいませ」

「(まぁマブギジ072とか、どう見ても不審者…だけど、色気のあるお姉さんだなぁ)どうも、見ても良いですか?」


「ええ、案内しますわ」


 オレンジ色の髪が綺麗なお姉さんに案内される。側に立っているので監視するのだろう。


「…このキッチンは幾らです?」

「こちらは黒金貨1枚です」

「へぇー、じゃあ買います」


 システムキッチンの様なオシャレな物があったので、お姉さんに黒金貨1枚を渡して収納。


(そろそろ料理したいなぁ。料理本と包丁合成したら作れる様になるかな?)


「…ありがとうございます」

「珍しい魔導具とかありますかね?」


「はい、ご案内致します」


 丁寧になったお姉さんに案内されて、ショーケースに入れられた魔導具コーナーへ。


「へぇー、通信石ですか…二つで一組なんですね」

「はい、帝都程の広さなら何処でも通信可能です」


 通信可能な距離は短いが、同じ街に居るなら必要かと思う。値段は黒金貨10枚。



「強化すれば良いか…買いますね」

「ありがとうございます…失礼ですがどういった職業の方なのですか?マブギジなんて見たのは初めてで…」


「あー…ごくごく普通の職業ですよ。たまたまダンジョンで成功しましてね…あの、ノール王都でクルミナさんにお世話になったんですけど、お姉さんですか?」


 色気のあるお姉さんなので、決してお近づきになりたいという訳では無いが、一応クルミナとは知り合いなので聞いてみる。



「ふふっ、よく間違えられるのですが妹ですよ。姉がお世話になっております」


「えっ?あっ、失礼しました。妹さんでしたか…」


 イザベラ・サムスン18歳。スタイル抜群の美人さんだが、クルミナの姉にしか見えない。



「姉は元気でしたか?まぁ姉から元気を取ったら取り柄が無いので、元気じゃないと困りますが」


「元気そうでしたよ_(妹に取り柄が無いとか言われてるぞ…頑張れクルミナさん…)_少しおっちょこちょいですが、そこがまた可愛いのでつい許してしまいますね」


「へぇ…週2で寝坊したり、何も無い所で転ぶ様な姉を可愛いと言って許すトハーシさんは、姉の恋人か何かですか?」


「…いえ、恋人ではありませんよ。ただの取引相手ですね」


 妹からの評価が低い事をスルーしながら「取引相手?」イザベラの興味が取引の方に傾く。もうクルミナの事は頭に無い様子で聞いてきた。



 取引している物を見せて欲しいと言うので、個室へ向かう。対面の長いソファーがあるので、ドラマで見る様な社長室に見えた。


「何にしようかな…大した物じゃないですが、こんな感じです」


 魔金結晶と魔銀結晶で作った金色と銀色に光る剣。

≪宝剣・ゴールドシルバー、ランクA、成金剣士レベル52、攻撃710、金運上昇≫


「…攻撃力が並では無いですね。貴族が欲しがりそうな剣ですが…ダンジョンで手に入れたのですか?」


「まぁ、そんなもんですねぇ」


「あの…売って頂く事は出来ますか?」

「すみませんが、まだ出来ません。俺はクルミナさんの取引相手ですから」


 黙って本店と取引するのは気が引ける。手間だが王都から取り寄せて欲しい。イザベラは色気を出しながら残念そうにトトを見ているので、心が揺れそうだが。



「誠実な方なのですね」

「いやいや違います。好きな相手も決められない軟弱者ですよ」


 イザベラがソファーから立ち上がり、トトの隣に座る。


「私も候補に入れて貰えませんか?」

「…それは困るのですみません」


 近い。ニグレットのお蔭で耐性は付いているので、あたふたする事は無いが、先程会ったばかりなので何が狙いだと邪推してしまう。



「ブレないんですね。クル姉には勿体無い…また来てくれますか?」

「まぁそれは良いんですが、ちょっと近すぎですね。もう鼻が付いてますよ」


 0距離なので息が唇に当たる。色気のある匂いが鼻腔を刺激し、顔を少し前にやればキスをしてしまう距離。しかしトトは欲求よりも怖いが勝っているので、少しずつ後退。


 イザベラも負けじとトトに近付く。イザベラの鼻が当たるくらいの距離を保ち、自分から行かずトトが釣れるのを待つという匠の技が光る。



「トハーシさん。良いんですよ」

「何がですかねぇ…イザベラさん仕事中ですよ」


「ええ、承知しています。だからと言ってチャンスを逃しません。安心して下さい、個室に鍵は掛けました。ここ、触ってみて下さい…ドキドキしていますよ」


「触りませんよ…あの、どいて欲しいんですが…」

「してくれたらどきますよ?」


 もうソファーに仰向けの状態。イザベラの指がつーっとトトの首、胸、腹と伝い…「そこまでです」トトがイザベラの手を取り、そっと身体を放す。


「私じゃ、駄目ですか?」


「すみませんが、今日会ったばかりなので流石に困ります。それに俺は火傷が酷くて人に見せられる身体ではありません」



 このままでは食べられるのでソファーから立ち距離を取る。トトは引いているが、この世界の女性は強さと財力がある者には積極的になる。積極的の度合いは違うが、この世界では当たり前の行動だ。


 これ以上この場所は危険と判断したので、個室を出て店内へ戻る。


「では、時間があればまた来ます」

「残念でしたが、お待ちしていますわ」


 帰り際に何か紙を渡され、魔導具店を後にする。背を向けた時に、ボソッとクル姉には負けないと聞こえた気がした。



「…ふぅ。危なかった…。ニグさんに同じ事されたら間違いなく陥落するな…ん?」


 カンカンカン!鐘の鳴る音が響き、周りの人々がざわざわしている。


「警報!何かしら!」「魔物が出たらしいぞ!高クラスらしい!」「避難しなきゃ!」


「魔物?クラスが高いって言ってたなぁ…アホーク居るかな?見学しに行こう。それにしても帝都に襲撃する魔物なんて居るんだなぁ」


 索敵を広げて魔物の気配を調べる。東区から塀を越えれば近そうなので、気配を消して飛び越える。



「おっ、あれは帝国の軍かな?アホークは見えない」


 帝都に向かって進む魔物の集団。200は超えている。軍に比べて数は少ないが、地竜やキマイラなど見るからに強そうだ。


「なんで襲撃するんだろ?危険なのは解っているのに…お腹空いてるのかな?」


 少し強い風が吹いている。トトの背負う剣がカタカタ揺れているが、それに気付かず軍の様子を眺めた。



「まぁいいか、見学しよ」



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