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流れの武器屋  作者: はぎま
迷宮・古壁の回廊
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相談女と地雷女

「とりあえずトリスの所に行くかなー」


 城から脱出したトトは、トボトボと大通りを歩く。ボーッといつまでこの国に居るか考えながら。


「思ったよりも知り合いが出来たな…騎士団長さんとゆっくり話がしたかったけど、忙しそうだしもう会う事も無いかな」


 自分と違い、人望がありそうな騎士団長。自分にレベルがあれば未来は変わっていたのかと思うが、今更と思う。


 黒ギルドに到着。受付に挨拶をしてからニグレットの部屋をノックする。



 コンコン。「はーい」「トリスー、戻ったぞー」


「トトさん!おかえりなさい!」「ただいま」


 ギュッと抱き付いたトリスが離れないので部屋の中に入る。ニグレットはまだ帰っていない。


「トトさん…エッチィ事しよ?」「しません」「むぅー!」


「帰った報告に来ただけだからな…もう夕方だし、また明日」


「明日!あっ…明日は友達とお買い物に行くの」


 断ると言っているが、先にした約束を優先させる。一緒に来てと言われたが、女の子同士の買い物に同行するのはレベルが高い。



「トリスは、この国は好きか?」「うん!皆優しいし好きだよ!」「…ははっ、そりゃ良かったよ」


 トリスはこの国に居た方が安全なんじゃないかと思う時がある。最近思う、自分と居ると迷惑が掛かる。今日の様に権力者に目を付けられる事もある。


(まぁそうなったら、俺が全力で守れば良い)


 力があるなら使えば良い。守りたい者を守る為に力を使えば良い。だが、それでも仲間さえ良ければそれで良いという思考にはならない。


(まっ、とりあえずその時に考えよう)



 トリスにおやすみと告げて、夕方の王都を歩く。


 ニグレットから聞いた魔物の大移動。2週間後に起きるかもしれないと聞いたが、王都の人々はいつも通りの生活を送っている。


 情報が上手く回っていないのか、王都だからと安心しているのか解らないが、人々の表情に暗い物は見えない。



 宿には戻らず、北区の丘に向かう。ベンチに座り、夕陽に照らされた王城を眺めた。


(やっぱりアイリスさんは忙しいのかな?)


「隣…良いですか?」「…どうぞ」


 隣に誰かが座る。アイリスでは無いので、目を合わせる必要も無い。トトは隣の人を気にせずボーッと王城を眺める。



「綺麗な景色ですよね」

「そうですね」


「…あの、ここにはよく来られるんですか?」

「はい」


「…くっ…私も、たまに来るんですよ。この景色が好きで」

「そうですか」


「「…」」沈黙が起きる。隣の人がイライラしている様子だが、何か嫌な事があったのかなくらいにしか思わなかった。


 トトは宿に帰ると誰かが居そうなので、秘境に行くか悩んでいたので隣には気を向けていない。だが、チラチラこちらを見ているのは解っていた。



「ここで会ったのも何かの縁なので、相談に乗って貰えませんか?」

「…俺は相談に乗れる程出来た人間じゃありませんよ」


 そこで初めて隣を見る。「ん?」見た事がある顔。


(魔法士のお姉さんだ…)以前貴族を助けた時に居た魔法士のお姉さん。魔法士の服ではなく、白っぽいワンピースを着ている。こめかみがヒクヒクしているので、トトに相談したい程、切羽詰まっているのだろうかと思うが。


(可愛い…けど…あの時と何か違う?…あっ)


 もう会う事は無いと思っていたが、何故目の前に居る。


 そして、何故相談しようとしているのだろう。


(目が…違う)見下す様なその目で。


「お願い…します」



 爆炎の戦士の時は潤んだ瞳が印象的で、心に残った。


 だが今は、騎士や王族と同じ見下す目をしている。



(爆炎の戦士が特定された?だとしたらこの目にはならないと思う。なら、誰かの差し金か、この人が俺に何かをしようとしているか…)


 真っ先に王族の顔が浮かぶが、果たして直ぐに約束を破るものなのだろうか。


(まだ断定するのは早い…なら)


 乗ってやろう。それからでも遅くは無い。


 トトは視線を王城に移し、「一応、聞きましょうか。俺はドドです。お名前は?」「ありがとうございます!マリアと言います!」話を聞いてみる。



「無理を言ってすみません。男性の意見を聞いてみたくて…あの…少し前に…凄くアピールされて、仕方無く付き合った人が居るんですが…」


(姉ちゃんが言っていたなー。相談女、地雷女には気を付けろって)


「最近、突然横柄になって…あの…その…暴力を…」


(うん、嘘だな。手口は異性関係や人間関係の相談だっけ?この場合、NGワードが模範解答だよな?)

「…酷い事をする奴ですね。俺ならマリアさんの様な人には絶対手を上げませんよ。別れないんですか?」


「別れた方が…良いですよね…」


「男は別れ話をすれば必死になるものですよ。それでも暴力を振るうなら犯罪、暴力事件です。衛兵に突きだしましょう」


「ドドさん…そうですよね…」

(こういう場面でドドって言われると笑いそうになるよなぁ)



「ええ、頑張ってください。応援していますよ」


「ありがとうございます。こんなに優しい事を言ってくれたのは両親以外ではドドさんが初めてです」


「……(すげえな、なんか怖いぞ)そりゃ光栄ですね…では、暗くなるので帰ります」


 トトは精神を削られたので、もう帰りたい。すっと立ちあがる。



「ドドさん…また、会ってくれますか?頼りになる男性と…またお話したいなって…」


「それはすみません」

「…好きな人とか居るんですか?」


「…ええ、そうですね。では」


 手を捕まれそうだったので、スッと躱す。そのまま丘を下り大通りを歩く。


「よく好きでも無い相手に平然とキラーワードを言えるよなぁ…女って怖い…監視されてそうだし…仕方無いけど、しばらくあの丘には行けないな」


 ダンジョンから戻った後、アイリスには会えていない。だがあの丘に通い続けたら、監視されアイリスが落ち着く場所が無くなるんじゃないかと思っていた。



「会いたいけど、城に会いに行っても迷惑だし…その前に門前払いか」


 携帯電話があれば楽なのにと不満を溢すが、仕方無い。


「あーあ。なんで話に乗っちゃったんだろ…不利益しか無いのに。はははっ、こりゃクソイケメンに八つ当たりだな」



 尾行されているので、死角に入った瞬間に全力逃走。人目が少なく、隠れやすい貴族街に逃げ込む。



「…あれ?見失った…まぁいいかー。…数無しのクセに私の誘いを断るなんて…ふふふー、絶対落としてみせる。でもあの調子なら団長より良い物くれそう。ふふふー」


 マリアはフッと笑い、夜の街に消えていった。




「…撒いたか。ふぅ、女性に追われるのは怖いな…」


 貴族街は閑静な住宅街の様な場所。ただ流石貴族という具合に1つ1つの家がデカイ。


 暗くなっているので、巡回の兵士以外は居ない。


(へぇー。静かだし、住むには割と良いなー)


 人は居ないので観光気分で歩いていく。


(同じ建設会社なのかな?造りは似ているっと…誰か居る?)



 後ろを振り返りながら小走りで駆ける人が居た。


「はぁ、はぁ…1人で出るんじゃなかった…なんで誰も居ないの?」


 何かから逃げる様に走っているが、不思議と巡回の兵士は居なかった。何か周囲に魔力を感じる。人を遠ざけ、声も届かない様な魔法が掛かっていた。


 そして逃げる人が黒い服を来た数人に取り囲まれる。


「いや…」


「…お覚悟を」


 黒い服を来た数人の中で一番背の高い者が剣を構える。

 そして逃げる人に剣を振り下ろした。


 ギンッ!「むっ、何者だ!」「いや、見ちゃったから助けなきゃなーっていう無駄な使命感?」


「ひっ…貴方は…」


 剣を左手で受ける。黒い服の人が警戒。とりあえず無力化するかと「ぐっ…」「な…あ…」「ぐぁ…」背の高い人以外の意識を威圧で飛ばす。背の高い人も威圧で動けない状態。


「どっちが悪いか知らないけど、目の前で殺しは目覚めが悪いからねぇ。聞いて良い?」


「助けて下さい…ドド様!」


「ん?…えっ?第二王女さん…1人で何してんの?」


 よく見ると昼に見た顔、第二王女のクリスタロス。


 トトの顔が明らかに嫌そうになった。

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