王城へ
「トトさんはどうするの?」
「どうって言われても、何も悪い事はしていないからいつも通りかなー。あっ、でもトリスに何かあったら王都を破壊してしまいそうだから何か考えないと」
何かと言っても、トリスが付けている可愛いイヤリングの結界で大抵の攻撃は防御するので、何かある事は稀だがトリスに関してトトは心配性だ。
「ふふふー、嬉しいな。でも私は大丈夫だよー、トトさんに貰った武器あるし」
「あー、あれな…使わない事を祈るよ…」
一応トリス用の武器は作ってある。指揮棒の様なタイプの杖で、マギウサタイト、賢者転職変更の宝珠、詠唱破棄のスキル書、消費魔力減のスキル書、魔銀結晶、魔金結晶、オリハタイトを合成した傑作。
≪天杖・ウサウサ賢者、ランクーー、ウサウサ賢者レベルーー、攻撃ーー、ーーー、クシャトリス専用装備≫
(大人になったら黒歴史になりそうな武器だよな…でも異世界だから良いのか?)
(トトさん…あの杖、ウサちゃんが邪魔なんだよね…でも言えない…)
クルミナが居るのでこの場所で出せないが、立体的で可愛いウサギの顔が握る部分に付いているので、非常に邪魔なのを思い出す。
そして、敢えて触れていなかったが、謝り倒した後、予想通り気に病んでしくしく泣いているクルミナをどうするかとアイコンタクトをしていた。
(とりあえず店を出るかー)
(そうだねー。負のオーラ出してるクルミナさんにも御守りくらいあげたら?)
(あー、確かに負のオーラが凄いな。なんかあったっけ?…)
「うぅ…いつもそう…肝心な時に詰めが甘いのよ…また違う店舗に飛ばされる…今度はどんな嫌味を言われるんだろ…どうせ笑顔だけが取り柄だねとか親のコネで給料良いのかしらねとか…私だって努力してるのに…あー…何もしたくない…誰か優しくて包容力があって私の失敗を笑って許してくれる人が私を貰ってくれないかな…今日はやけ食いだー…」
(トリス、なんか呪文唱えてるからすげぇ話し掛けにくいぞ)
(優しくて包容力があって失敗を笑って許してくれるトトさん宜しく)
(その項目が該当するのはクソイケメンだからな)
「あの、クルミナさん?」
「_ふぉっ!はい!…なななんでしょうか」
「俺達帰るんですけど、クルミナさんはどうします?あっこれどうぞ」
≪守リボン、ランクB、攻撃1、守護障壁・逃走補助≫
「うん?プレゼント?いや頂けませんよ…良いんですか?返してって言われても返しませんよ?…可愛いリボンだぁ。ありがとうございます」
少し雑談した後、大分キャラが壊れてきたクルミナと共に店を出る。帰り際に店内の客からじろじろ見られたが、今更なので無視。
「さて、クルミナさん。お店まで送ります」
索敵をしたら怪しい集団を見つけたので、魔導具店まで送っていく。遠慮されたが、流石に何かあると困るので譲れない。
「明後日出勤ですか?」「明後日は無の日ですよね。出勤ですよ」「じゃあ予定が入らなければ明後日買い物に行きますので…ではまた」
「じゃあねー!」「はい!ではまた!お待ちしてます!」
クルミナを送った後、黒ギルドへの道を歩いていると前方から五人程の集団がやって来た。私服だが、体つきや歩き方からして騎士だと推測。
「トリス、デートはまた今度な」「えー!」
トリスが不機嫌なまま、男達がトトとトリスの前に立ち塞がった。
「何?邪魔なんだけど」
「…ある御方がお前に聞きたい事があるという。同行して貰おうか」
「ふーん。興味無いけど、断ると言っても無駄か。ねえ騎士さん、同行しても良いけどこの子を送ってからで良い?」
「…わかった」
無言のまま黒ギルドに到着。男達が少しざわついているが無視。
「じゃあトトさんまたね。お城の騎士がトトさんを無理矢理連れて行ったって、ニグレットお姉ちゃんに言っておくねー!」
「_なっ!ニグレットだと!」
「おー、ニグさんに宜しくー。別に帰りたくなったら帰るから大丈夫だよ」
「大丈夫でも心配なの。頑張ってニグお姉ちゃんがこの国を見捨てるくらいに言っておくから!」
「ははは、ありがとな」
デートの邪魔をされ、目が笑っていないトリスは本気だ。黒ギルドへ入っていくトリスを見て騎士達は本当なのかと動揺している。受付嬢と仲良さげに話しているのが見え、ざわざわしていた。
「さっ、行きますかー」
「…ニグレットと知り合いなのか?」
「その質問に答える義理は無い。どこに行けば良いんだ?」
「こいつ…下手に出てやってるのに調子に乗りやがって。数無しのくせに」
「……」
「まぁラズ落ち着け。強がってるだけだ。こっちだ、付いてこい」
雰囲気の悪いまま、王城へ。
(やっぱり城かー、行動が早いねぇ。異世界の城ってどんなんだろ?って日本の城しか直に見た事無いから比べる要素が無いんだよなぁ…)
「ここで待て」
城門をくぐり、騎士の詰所前で待たされた。
(着替えるのかな?私服で王城は騎士道精神に反する?)
騎士服に着替えた二人の騎士がトトを先導する。人数が減っているのはレベルが無いから安心という事だろうか。
トトはそれよりも、待たせたなくらいは言えよと思っていた。
(へぇー、豪華な装飾だしRPGの城みたいだなー。要塞型の城とかあるのかな?)
城の正面から入らず、側面から入り通路を歩く。それだけで良い扱いはされないだろうなと漠然と思うが、されたら王国を見切れば良いだけ。
(つまらない展開なら帰ろう)
なのでこの後の展開が楽しみになっていた。
「ここだ」
やがて豪華な通路に出て、会議室の様な部屋に通される。
そこに待っていたのは、侍女を従えた女性と言うには少し若い15、6歳に見える、緑色の長い髪にドレスを着た少女。
「やっと来た。非公式の場だから跪かなくていいわよ。貴方の名前は…ドドって言うのね。何?クソ男って」
(貴族?王族?なんか知ってて当然みたいな空気だけど誰?)「…どうも、ドドです。礼儀とか知らないんで宜しく」
「貴様!」「やめなさい」「ですが!」「良いの。今だけはお客さんだから」「…はい」
(今だけは、ねぇ。この場に居る全員が俺を見下した目をしているから、目的と違う人間だったら始末する気なのか?だとしたら…つまらない展開かな)
この部屋に居る、騎士が数名、侍女が数名に一番偉そうな少女がトトに向ける目はいつもの見下した感じなので、がっかり感が凄い。
「用件は?」
「これよ」
侍女がトトに見せた水晶の杖。ここまでは予想通りの展開。
「これが何か?」
「これを作った人を教えて欲しいのよ。黙秘権は無いわよ?」
騎士が威圧を放つ中で、何やら魔力を感じる。まるで嘘を言ったら駄目な気がした。
「トハーシが作った作品だね」
「…トハーシ?ふーん。嘘は言ってないみたいね」
トハーシ。自分の名字を言っただけなので嘘では無い。
「トハーシは今どこに居るの?」
「さあ、この世界のどこかには居ると思うぞ」
騎士から険悪な雰囲気が流れてくる。これが終わったら虐められる未来を容易に予想出来る。
「…まぁ良いわ。これの他にトハーシの作品は持っているのかしら?」
「持っている」
「譲りなさい」「断る」
もう騎士達はいつでも抜剣出来る様に構え、侍女達からは厳しい視線を受けていた。それでも暴走する者が居ないのは忠義なのか。
(やばいなぁ…破壊神剣が我慢出来ないかも)
「…何故かしら?対価は払うわよ?」
「例え対価を貰っても、帰り道で闇討ちに遇いそうだからねぇ。でしょ?騎士さん?」
「…」「…警護はさせるわ」
「見下してくる相手に警護されてもねぇ…」
悪い雰囲気のまま、平行線を辿る。
そして少し経った時、扉が開かれた。
「入るぞ。むっ?クリスタはここに居たのか、探したぞ。…ん?これはどういう状況だ?」
「お兄様!」
長身の20代前半になるであろう男性が入って来た。少女と同じく緑色の髪をした爽やかなイケメン。
(兄妹かー。兄妹ねぇ…なんかデジャヴだなー)
状況を説明する者がトトの不利になりそうな感じで説明していく。それを黙って聞くトトと男性。
「状況は解った。ではこうしよう、私は丁度これから時間がある。今から私と闘い、私が勝ったらトハーシの作品を譲って貰う。私に勝てたら、そうだな…どんな望みでも叶えてやろう」
「…どんな望みでも…それは軽々しく言わない方が良いぞ。とりあえず話の解りそうな人が来たから言うけどさ、俺はこの国の人間じゃないから君達の名前すら知らないんだ…教えて?」
「「……は?」」
この場所の人間が呆気に取られる。何故知らない。1ヶ月に1度は国民の前で演説しているというのに。それでなくとも、鑑定すれば名前くらいは解るのに何故しない。
当然そんな事を知らないし、鑑定する気も無いトト。もう面倒だから帰りたいが、また急に城に連れてこられるのはもっと面倒。
「は?さんね。じゃあは?さん、人目の付かない場所で闘うなら良いよ」
「…私の名前はアラン・ノール・ニューロード、第一王子だ。妹は第二王女クリスタロス・ノール・ニューロード…では特別訓練場に案内しよう」
「…はいよ」
こうして、城の奥へと案内されていった。




