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流れの武器屋  作者: はぎま
迷宮・古壁の回廊
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最近振り回されている気がします

 翌朝、秘境からSGドラゴンに乗って王都の門に到着。こそこそと並び王都入りした後は黒ギルドへ。


 コンコン。「おはようございます。トトです」「おー、入って良いぞ」


 ニグレットの部屋に入り、ソファーに座る。ニグレットはバスローブ姿なのでトトは警戒していた。


「そう警戒しなくても、もうすぐトリスが来るから襲わないよ」


「そう言ってパタパタさせるのは止めて下さい…「…トト」なんです?」


 そっと左手を握られ、トトの身体がビクッと跳ねる。



「やっぱり…左腕が無いんだね。こんなになるまで闘って…最深部で何があった?」


「…流石にお見通しでしたか。…ダンジョンの最後に強い奴が居たんですよ」


「やはり攻略したのか…クラスは?」


「不明です。クラス8以上なのは確かですね」


 攻略者は歴史に名を残す事が出来る。名乗り出れば富と名声が得られる物だが、トトはどうせ嘘吐き呼ばわりされるので興味が無い。


 ニグレットは勿体無い…そんな気持ちが出るが、今更かと諦める。自分が知っていればそれで良いと思っていた。



「あのダンジョンはクラス7が限界な筈だけど…昨日聞いていた不壊の勇者と関係があったりするか?」


「ええ、まぁ、そうですね。関係というか不壊の勇者本人と闘いました」


「…よく生きていたな」「ええ、本当によく生きて帰れたと思います」


 不壊の勇者を超える勇者は現れないと言われる程に強く、防御が壊れない勇者として有名らしい。1人で魔王を倒した伝説的な存在。



「じゃあオーランド公爵の亡霊か何かと闘ったのか…それほどまでに(トトは強いのか…)」


「オーランド?そいつが物語上の不壊の勇者なんですね」


「物語上?500年くらい前、ロドリア帝国の姫と結ばれ公爵の位を得た男の物語だぞ…ってどういう事だ?」


「本物の不壊の勇者はターケルと言われている人物ですよ。魔王を倒した後に裏切られて処刑されました。俺が闘ったのは、絶望に支配されたタケルの具現体ですね…成る程。帝国でしたか」


「…」


 帝国に行けば良い。そうは思うが別に破壊活動をする訳じゃない。ただ、帝国は真実を知っているのか気になった。



「それが本当なら公爵家は…トト…具現体は共鳴した者と融合する事が出来ると言われている。もしかして…」


「いや、融合はしていませんよ。力は貰いましたがね…っと来たかな」


 コンコン。「ニグお姉ちゃーん!」力?と聞こうとしたが扉がノックされ、寮から戻ったトリスが入って来た。


「ただい…トトさん!」

 トリスは出迎えたトトにポフッと抱き付き、ぐずぐずと泣いていた。トトは右手でトリスの頭を撫でる。


「トトさんトトさん会いたかった!」

「ただいまトリス」


「ふふっ、トリス。あれやってあげな」


「うん!トトさん!ちょっとしゃがんで!」


「ん?こうか?_んん!」


 しゃがんだトトにトリスがキスをする。ガッチリと首をホールドされているので逃げられない。視界の隅でニグレットが次私な、と人差し指を唇に当てているので、てめぇの差し金かと睨むがニグレットはニヤニヤしていた。


「……」


 トトは諦めてトリスが離れるのを待つ。


「……」


 少しして離れたトリスは、えへへーと笑いながらトコトコとニグレットに近寄りハイタッチ。


「…」


「トトさんが帰って来たらエッチィ事するって決めてたの!ニグお姉ちゃんが教えてくれたんだ!トトさん嬉しいでしょ!」


「…ああ…嬉しいぞ。ニグさんは駄目だからな「えー!」えーじゃありません…(なんだ?最近ニグさん凄く可愛いぞ)」


 現在駄々を捏ねているニグレットとキスをすると、もう色々と歯止めが効かなくなりそうなので断っておく。


 獲物を狙う目で見詰めて来るので、これは時間の問題かもしれないとビクビクしていた。


 トリスにダンジョンでの事をザックリ説明した後は、トリスの学校での話を聞く。友達が出来たとか、勉強は楽しいだとか。



「トリス、ダンジョンで色々見付けたからトリス専用の収納リングに入れておくな。ほれ」


「指輪…トトさん、私と結婚してくれるの?」


「いや、そうじゃなくて。収納の指輪だからな。聞いてる?」


 トリスはへへへーと笑いながら左手薬指に嵌める。クリアホワイトを使っているので、見た目が完全に結婚指輪なのが悪いのだが…。


「聞いてるよ。じゃあトトさんがプロポーズしてくれるの待ってるからね!これは予約…ふふふー」


「…違うからね」



 トトは結婚をしたら相手が苦労すると思っている。レベルが無い者はほとんど大成しない。弱い下等な存在。そう思っている者が大半で、大成したとしても嫌がらせやいじめ等があると聞くからだが。


 実際そう思っているのはトトだけで、トリスとニグレットは気にしていない。



「あっ、ニグさん。こんな武器あるんですけど、どうです?」


 寝る前に作った腕輪型の武器。魔法水銀で出来たアゾットゼルク・ゴーレムの素材をベースに、魔銀結晶、魔金結晶、オリハタイト、マギマタイトで作成。


≪銀環・アゾットゼルク、ランクS+、銀環の魔女レベル250、攻撃3750、魔法攻撃3750、変形・操作・自動防御・魔力砲≫


「うわ…トト。ありがとう…愛を感じるよ。私も愛してるぞ」


「何言ってんの?トリスを見てくれるお礼ですよ」


 ニグレットが腕輪型の武器を剣や短剣、槍などに変形させているのを見て、便利だなぁと感心。そして満足しているニグレットが、腕輪から指輪に変形させて左手薬指に嵌めた瞬間にトトの顔が引きつった。


「ふふっ、こうして欲しかったんだろ?わかってるからな」


「んな訳ねえだろ。あー、くそ…盲点だった!」


「ニグお姉ちゃん。良かったね!」



 遠い目のトト。にやけるトリスに、どや顔のニグレット。話は尽きず、夕方まで話し込んだ。



「じゃあまた明日な。おやすみ」

「うん!おやすみなさい!」


「トト、おやすみ」

「ニグさんも、おやすみなさい」


 二人と分かれ、黒ギルドを出る。



 ガヤガヤ「ん?なんだ?」ギルドの近くで冒険者達が固まって騒いでいる。通りすがりにチラ見をするがよく見えない。


「アイツ終わったなー」「よりによってあの人が居る時に…」「久しぶりに見るなーアレ」


 近付くと、向かい合う二人の男。ガタイの良い斧を持った金髪の戦士風な男と、大剣を背中に背負った赤茶色の髪のヤンキーみたいな男。なんだ喧嘩かと思っていると「ん?ミランダさん?」見覚えのある人が居た。


 よく解らない状況だが、ミランダが片方の男、赤茶の髪の男を止めようとしているのは解る。



「てめぇ、俺の妹に何の用事だ?あぁ?」


「うるせえな。誰に声掛けようと俺の勝手だろうが!てめぇはすっこんでろ!」


「兄さん、やめてよぉ!」


(あれがミランダさんの兄貴か?ドーグ・サラスだっけ?)


 なんとなく状況は解った。ミランダをナンパしようとした男にドーグが怒っているのだろう。


 トトは結果が解っているので、その場を後にする。その時「あれ?トトさ_」ミランダと目が合った気がしたので、気付かない振りをして全力疾走で宿に逃げ込む。



「おかえりなさいませ」


「ああ、ただいまです。あの、誰か訪ねて来ても不在と伝えて貰えますか?今日は体調が悪いので」


「かしこまりました。ご用の際は直ぐに呼んで下さい」


「はい、了解です。ではおやすみなさい」


 トトはそそくさと部屋に戻った。



「危ない危ない。あそこでミランダさんに話し掛けられていたら、絶対俺に矛先が向く…」


 ドーグは少し苦手なタイプなので、関わりたくない。猫耳ピチピチお姉さんと似た雰囲気だからだ。


「寝よう。明日はトリスと何処かに行こうかなー」





 翌朝。


「おう、てめぇがトトっていうクソ男か。面貸せや」


「…」


 待ち伏せしていたヤンキー(ドーグ)に絡まれていた。

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