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流れの武器屋  作者: はぎま
迷宮・古壁の回廊
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秘境を探索

 朝日が射し込む少し乾いた大地を歩く。


 沢山の鉱石を発見し採掘したトトは、落ち着く為に地上を散策していた。周りを断崖絶壁の高い山に囲まれた秘境と言っても良い場所。



「農業バイトで入ったレタス畑くらいの広さだから…5ヘクタールくらいかな?もっとあるか?」


 黄色くキラキラと光る砂の地面が大半を占めており、奥に木が密集している場所が見える。


「木があるって事は水源かな?」


 行ってみると20メートル程の、半円の形をした透明度の高い池があった。魚が見えるので、池底の奥から何処かの水源に繋がっているのだろう。


「釣りも出来る…ここ良いな」


 動物の姿は無く、魔物も居ない。空を見上げると、何かが飛んでいるのが見えた。


「鳥かな?イーグルアイ」


 銃聖の能力で複数居る鳥らしき姿を拡大。姿を捉え、鑑定出来そうなのでしてみる。



≪イエロードラゴン、クラス6、強さ14650、雷を操るドラゴン≫


≪ブルードラゴン、クラス6、強さ15003、水氷を操るドラゴン≫


≪ブラックドラゴン、クラス6、強さ16852、闇を操るドラゴン≫


「この上は竜の巣?ここには降りて来ないのは理由があるのかな?」


 ふと目に付いた黄色い砂。


≪聖浄砂、ランクB、聖浄化する砂・空気も聖浄化する力を持つ≫


「へぇー。凄い砂だな。この砂があるから、あの高さまでは安全なのか…なんでこんな所にあるのかは知らないけど、もしかしたら世界でトップレベルの安全地帯かも」


 魔物が来ない。人も来ない。水と魚があり、植物の育つ環境がある。


 すっかりこの場所を気に入ったので、空間テントを設置。拠点化を進める。



「家はテントで充分。他に何が要るかだけど…移動手段かな」


 街には行くので、交通の便は必要。どうしたものかと考えた。


「飛行機があれば楽か…でも竜の巣を通らないと行けないし…間違いなく攻撃される。ご近所さんと仲が悪いのは避けたい…竜…あの竜に乗せて貰う…怖いから却下。俺が竜になる…無理。竜を仲間に…魔竜か!」


≪黒召槍・エビルトルメンタ、ランクS+、攻撃2000、闇風邪属性、闇風魔法、闇嵐槍技、ーー召喚≫


 収納の肥やしになっていた黒召槍を取り出す。しかし黒召槍が嫌がっている様な感覚。


「もしかして聖浄砂と合わない?まじかよ…仕舞うか」


 魔竜に乗るというのは、良いアイデアだったが聖浄砂のお蔭でここでは使えない様だ。



「えーどうしよう。聖浄砂に影響されない存在。正直飛行機とかだとこの世界で違和感バリバリだしなぁ…仕方無い…竜型の飛行機を作るか」


 時間が掛かりそうなので、予備の候補だった竜型飛行機を作る事に。


 先程採掘した鉱石達、精霊石の杖、アゾットゼルク・ゴーレムの魔石、重力鎚・クレイジーグラビトンを合成。竜をイメージしながら作成していく。


「あー…時間掛かる…」


 人が乗れる程の大きさを作らなければいけないので、相当な時間を覚悟していたが終わらない。


 集中もしなければいけないのが厄介だ。先にボディを作った方が早かったかもしれないと思った時には、夕方になっていた。


「あれ?終わらないぞ…まだ追加で合成したいのに…」


 少しずつ形になっていく。普段作っている武器より遥かに集中しなければならず、体力は限界に近い。怪しげな体力回復ドリンクを飲みながら作成。


 やがて夜になり、再び朝がやって来た。



「…やっと出来た…まだカスタムしてないから…ドノーマルだけど…」


≪戦術兵器・SGドラゴン、ランクーー、ーーー、ーーー、ーーー≫


 全長10メートルの2人乗りドラゴン。朝日に照らされ白銀に輝いている。


 背中にハッチがあり中に入れるが、疲れすぎて中を確認する気が起きない。トトはそのままパタリと睡眠に入る。


 それを眺めるSGドラゴンは3対の翼を拡げ、無機質に佇んでいた。





 ______





 王都にて。日が沈み、王城に行っていたニグレットが黒ギルドに戻る。


「おかえりなさいませ。ニグレット様」


「ただいま。何か報告はあるかい?」


「本日の来客は5名程。伝言はこちらです」


 受付がニグレットに伝言を書いた紙を渡す。商人や貴族の使いの中にトトの名前を発見。



「ふふっ、トトは今何処に?」


「朝と夕方の2回訪ね、帰られました。行き先までは解りかねます」


「ありがと。ちょっとトトの宿まで行ってくる」


 軽い足取りで宿へ向かうニグレット。


 直ぐ宿に着き、受付にトトの事を聞くと出掛けているという。



「居ないのかい…折角襲ってやろうと思ったのに」


 ため息を付いて宿を出ようとすると、少し離れた場所のソファーに座る女性の姿が目に付いた。


 ニグレットはその女性の対面に座る。


「あっ、ニグレットさん…」


「やぁミランダちゃん。トトの帰りを待っているのかい?」


「はい。帰還のお祝いをしたかったんですが、出掛けたって言うので…」


「トトの事だから週末まで戻らないと思うよ。ミランダちゃんはこの後暇かい?」


「ええ、はい。もう帰って寝るだけなので」


「じゃあそこの食堂で飲むか」


「え?あっ、あの」


 半ば連行する形でミランダを連れて食堂へ。高級ワインを頼み、ニグレットとミランダと向かい合って座った。


 顔見知り程度の仲だったので、ミランダの表情に緊張が見える。ニグレットは有名人なので無理もないが。



「楽にして良いよ。お互い目的は同じなんだからさ」


「目的…ニグレットさんもトトさんと組みたいんですか?」


「ん?まぁ組みたいと言えば組みたいかな。組み合いたいとも言えるし」


「そうだったんですね!トトさんの攻略スピードは早いですし、頼りになる存在ですから、成長度合いが違うんですよねぇ」


 ニコニコと話すミランダに、ニグレットは微妙に話が噛み合わないなと首を傾げていた。


 真面目なのか、トトを恋愛対象として見ていないのか解らないが、ミランダに関してある噂があるのは有名だ。


 兄のドーグ・サラスがシスコンのせいで、妹のミランダが恋愛出来ないという、ニグレットにとってどうでもいい噂。



「私も冒険したいがまだ忙しくてね。色々聞けると嬉しいよ。そういえば、ドーグはそろそろ帰って来るのかい?」


「そうですね。魔物の大移動が起きる前には帰るって手紙が来ていました」


「ふーん。騎士団が来月、王都周辺に起きそうだって言っていたな」


 今は9月の後半。10月に起きるかもしれない魔物の大移動で軍部は忙しく、ニグレットにも情報は入る。



「確か段階を踏んで来る事が多いんですよね?第1波、第2波、第3波って」


「そうだな。普通は第2波で終わるけど、過去の記録では第4波まで確認されている。今回は第3波まで来ると踏んでいるから、軍部は忙しいらしいぞ」


 大移動と言っても、実際は突如現れる複数の魔力溜まりから魔物が溢れ出す災害。


 そして魔物の大移動には1度で終わらず段階がある。第1波はクラス4の魔物が出る事が多く、第2波がクラス5、第3波がクラス6、第4波になると何が起こるか未知数。


 軍部の忙しさに比例して、北区にある職人街もてんやわんやの状態。商人も同様に稼ぎ時なので忙しく、同様に都民の大半は忙しい。こうしてのんびりしているニグレットを見て、ミランダは忙しくないのかな?と疑問に思っていた。



「そうだ。帰って来るまでトトの部屋に泊まろう」


「いや、ダメですよ。トトさんに怒られますよ」


「あー、大丈夫大丈夫。それくらいじゃ怒らないから。トトは宿に帰っても独りぼっちだからな。人肌恋しい筈だ。ミランダちゃんもどうだい?」


「いや、あの、私にはレベルが高いと言いますか…」



 急にあたふたするミランダを見て、ニグレットがニヤリと笑う。この宿のオーナーとニグレットは知り合いなので、トトの部屋に泊まるのは簡単。


「泊まるだけだから大丈夫。もう冒険者だから何処に泊まっても良いんだろ?それに高級宿にただで泊まれるんだぞ?という事で行くか!」


「えっ?ちょっ!ミランダさん!」


 ニグレットは高級ワインを片手にミランダを連行していった。





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