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流れの武器屋  作者: はぎま
迷宮・古壁の回廊
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絶望の勇者2

 

「こりゃ…全身タイツにイチかバチかの浄化兵器の方が良かったかねぇ。…武装」


 勇者魔法インコンプリート・ディフェンスのせいで、半端な攻撃はせいぜい聖剣の攻撃を受け流す程度。


 仕方無く、爆竜の戦斧で武装する。


 深紅の鎧に翼が生え、竜の戦士に変身した。



『なんだいそれは…魔防具換装?魔装?どれとも違う』


「武器を装着する能力だよ。犠牲の爆竜破斬!」


 100連バレットベルトに加えて、武装を展開したトトの能力は勇者を凌駕する。


 ドゴオン!『速い』瞬時に後ろを取り攻撃。少しの手応えを感じながら追撃。


「犠牲の爆竜剛斬!」ボゴオン!『ぐっ』空中に撥ね飛ばす。



「爆竜奥_『させない!飛翔光舞!』ぐおっ!」


 勇者が光が反射する様に空中を移動。すれ違い様にトトを斬り付けた。


「なんの!爆黒竜・煉擊!」

 振り返り様にトトが爆竜の戦斧を黒く燃やす。

 ボゴオオ!『あぁ!』地獄の炎が勇者を燃やした。


『強いなぁ…聖光蘭舞!』

 ガキィン!「嫌みか!爆黒竜・煉弾」ガキィン!ガキィン!ガキィン!


 連擊を弾かれ『ふふっ、聖光烈断』ザンッ!「ぬぁぁ!」パリン。『聖重連擊!』ザンッ!ザンッ!ザンッ!


 トトの身代わりの指輪が連続で鳴り響く。

「ぐぁ!…ヤバい!このままじゃ!爆黒竜・犠牲の暴発!」

 ドゴオン!武器を犠牲にしながら自身を爆破。


 爆破の余波でボロボロと深紅の鎧が剥がれて行く。


「はぁ…はぁ…くそったれ…でも連続攻撃ならダメージが加算されるんだな。数秒の合計ダメージなら何とかなるか…」


『…はぁ…はぁ…ちょっと君は強すぎだよ。僕も全力でやらないと駄目みたいだ』


「全力って…さっさとやられろよ。俺の犠牲技はコスパが悪いんだぞ」



『ふふっ、行くよ。聖光奥義…光の鎧!』

 ガシャン。ガシャン。光輝く鎧が出現。勇者の身体に装着される。細身の全身鎧。顔だけが空いているが、勇者の白い顔のお陰でトトと同じフルプレートメイルに見える。


「あー、くそ。これ以上防御力上げんじゃねえよ…」


 どんどん強くなる勇者に悪態ばかり付くトト。


『さっきのダメージが二万くらい。だから強度四万六千のシールド。それに加えて光の鎧はダメージ半減に防御力上昇…僕は不壊の勇者と言われる程に硬いよ』


「はっはっはー!わざわざご説明ありがとうございますぅ!いきなり爆竜奥義ぃ!」



 光の鎧を纏う勇者の直前で爆発。『なにっ!?』後ろに回り込んだトトが、ガシィッと首根っこを掴む。


「手元から離れたら攻撃が効かないんだよな!0距離でぇ!大量犠牲のぉ!紅の覇爆ぅぅ!」

 至近距離から振り上げた爆竜の戦斧を全力で振り下ろす。

 ザンッ!『ぐあっ!』ボボボボ!後に続く爆破の連鎖。


 ボボボボ!「ぐぅああ!ぶち抜けぇ!」パリン。パリン。パリン。パリン。『がああぁぁ!』ボボボボ!


 爆破の連鎖をトトと勇者がモロに受ける。身体中が爆発し砕ける痛み。砕けて燃やされる痛み。精神が壊れてもおかしく無い程の痛みが襲う。


「ぐあああ!まだ死ねるかよ!」

 破壊の鉄鎚を出し勇者にフルスイング。

 バキンッ!シールドが割れる音が響き勇者が吹っ飛ばされた。


 壁に激突。瓦礫に埋もれる勇者を見届け、崩れ落ちるトト。


 武装が解け、身体に火傷が目立つ。

「…ごぼっ…ごほっ…ごほっ…破壊属性なら…シールドを貫通出来るかもしれない…合成」


 破壊の鉄鎚を邪妖刀に合成。

≪邪妖刀・犠牲の常闇、ランクS-、闇堕ちレベル570、攻撃3850、レベル加速・ダメージ倍加・邪技・犠牲技・霊属特攻・破壊属性≫


「もう…犠牲にする武器がほとんど無いな…身代わりも…あと少し」



 ガラッ。『…君は…本当に強いね…』


 ガラガラッ。光の鎧が崩れ、上半身は白い身体が見える。


『その心の強さが…あの時の僕にあれば…』


 その身体には無数のヒビ。


『僕は…死ななかったのかな…』


「…」


『弱い僕は…世界を壊す以外に何も無い』


 光輝く身体のヒビが割れていく。バキバキと白と黒の斑が現れた。


≪破壊の勇者、ランクーー、強さーーー、世界の破壊だけを存在意義とする勇者の具現体≫


「バカ野郎…勝手に盛り上がってんじゃねえよ……おい勇者。早くその力を捨てろ。消えちまうぞ」



 ゆらゆらとトトに近付く勇者。歩く度、地面にヒビが生える。そして、少しずつ身体が崩れていくのが見えた。


『ふふっ、破壊の力を懇願していたのに…いざ手にすると、自分の身体が壊れていく…笑っちゃうよね』


「破壊属性は邪の力だ。お前は光が強すぎんだよ…」


『そうだね。最期に…崩れ去る前に…闘って欲しい』


 光属性と破壊属性が反発した身体。放って置いても消え去る身体の勇者がトトに願いを告げ、トトはため息と共に邪妖刀を構えた。



『ありがとう。死ぬ前に君に会えていたら…いや、何でもない。行くよ。聖光烈壊!』


「…黒刃・邪壊」ギンッ!白と黒の破壊の力がぶつかる。衝突の余波で地面が削れる程の衝撃。


『君も破壊の持ち主なんだね!聖光連壊斬!』

「…黒刃・邪蓮」ギンッ!ギンッ!ギンッ!ザシュッ!「くっ…」


 勇者の連擊が速度を増す。反応しきれず浅く斬擊を受けた。


『はぁ…はぁ…この身体も長くは保たないか。聖光烈壊擊!』

「…返しの太刀」斬!勇者の剣を受け流して合わせる。


「やべえ…血を流し過ぎたな…くらくらする…」


 勇者を斬りつけ、目眩と共に膝を付く。いくら身代わりの指輪があろうとも、流した血は戻らない。先程から超回復のナイフを身体に刺して回復していたが、追い付かない程にボロボロの身体になっていた。



『ふふっ、お互いボロボロだね。…もう、終わりにしようか』


「あぁ…お前のお蔭で散々だ。俺が…止めを刺してやるよ」


 今にも崩れ落ちそうだが楽しそうな勇者と、ボロボロでもう横になりたいトトが対峙する。


『聖光奥義!』「黒刃奥義…」


 二人は駆ける。


『聖なる覇壊!』「煉獄!」

 ドッッ!!聖なる力と邪の力が反発し合いながら爆風を生み。


 闘技場を破壊していく。


『貰った!』ザンッ!「ぐぅっ!」

 トトの左腕が斬り落とされる。


 体制を崩したトトに勇者が追撃。

『終わりぃ!』「まだまだぁ!サクリファイス!」

 トトが左腕を犠牲にした。


 ボロボロと崩れ去る左腕を気にせずに。


 邪妖刀を走らせる。



 バキンッ!



 円形の闘技場は、ただの瓦礫が重なる場所となり。



 二人が衝突した中心部のみがポッカリと空く空間になっていた。



 振り切った状態で固まる二人。



「なぁ…名前、何て言うんだ?」


『…タケルだよ。トト』


 トトの邪妖刀はポッキリと中心から折れ。


 左腕は、肘から先が無くなっていた。


「そっか…タケル。泰人だ…戸橋泰人(とはしやすと)。俺の名前だ」


『ふふっ、泰人…ありがとう。本当に…もっと早く会いたかったよ』


 勇者がボロボロと崩れ落ちる。


 トトは振り返り、暫くその様子をじっと見詰めていた。



「…じゃあな」



 フラフラになりながらも、左腕に超回復のナイフを刺して回復していく。


「…やっぱり再生しないか。どうしよ」


 血は止まり、回復を続ければ命に別状は無い。だが、肘から先が無い左腕を見てため息が漏れた。


「再生する秘薬とかあれば良いけど…」



 とりあえず落ち込んでも仕方無いので、折れた邪妖刀と救世剣を回収。そして、勇者が崩れた場所に行くと白と黒の斑模様の丸い物体を発見。手に取って眺めた。


≪破壊の力・こんな世界壊れてしまえ、ランクーー、破壊・ーー属性、理不尽な世界に絶望した異世界の勇者が、最期に残した物≫


「……駄目な奴だ。何この悲しい力…あぁ…くそ…想いが流れてくる」


 涙が止まらない。前触れも無く人間に異世界から召喚され、人間達の為に自分の心を犠牲にして魔王を討伐し、後に勇者の力を恐れた人間達によって討伐された青年の想いが流れてくる。


「…辛かったよな。信じていた者に裏切られるなんて…こんな物、クソ男の俺に託すなよ…どうしろってんだ」


 世界を破壊したくなる程に、裏切られ、絶望を感じた心。



「過ぎたる力は世界を滅ぼす…か。悪いが想いは引き継がないからな。…んー…持っていたら想いに呑まれる…武器に変えてしまおう。作成」


 折れた邪妖刀、金剛結晶、破壊の力を合成。武器に変えてしまう。右手しか無いので、いつもより倍以上時間が掛かった。



≪破壊神剣・こんな世界壊れてしまえ、ランクーー、全てを破壊する者ーー、攻撃ーーー、ーーーー≫


「右手だけだと不便だなー…っと少し落ち着いたか。うわっ…なんかラスボスの後に闘う裏ボスみたいな能力だな。神剣だし…」



 どす黒い片手剣。SSランクだと推測する聖竜剣よりも遥かに強い力を感じる。呪怨砲よりも負のオーラが凄いので、常人が持つと瞬時に心が壊れそうだ。


「ん?あれ?収納出来ない…」


 トトは焦る。こんな物を持って街は歩けない。人々がばったばったと倒れるのが目に見える。


「えーっと…えーっと。あっ!良いのがあった!」


 禁術・千手の鎖、クズな剣、ついでに絶望の宝珠、絶望の盾を破壊神剣に合成。


≪超絶クズな剣、ランクG、攻撃1、絶望的なクズ装備可能≫

「おっ、やっと出来た…誰得な剣だな」



 収納は出来ないので、鞘に入れ背中に背負う。


 その時、ポロリと氷の御守りが落ちた。


「あっ…ヤバい…氷の御守りが焦げてボロボロになっちゃった…どうしよう…謝るか」


 ボロボロの御守りを収納し、辺りを見渡す。


 円形の瓦礫で出来た部屋。奥に扉が見える。


「ん?先があるのか?」


 トボトボと奥に行き、扉を開けると下り階段が出現。


 もう魔物は出ないだろうと当たりを付けて、階段を下って行った。

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