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流れの武器屋  作者: はぎま
迷宮・古壁の回廊
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絶望の勇者

明けましておめでとうございます。

 円形の闘技場で向かい合うトトと絶望の勇者。帰りたいトトは負のオーラを垂れ流し、絶望の勇者は絶えず白いオーラを放っていた。


「…なぁ、帰って良い?」


『僕に希望を見せてくれるのなら、帰っても良いよ』


「希望って言われてもザックリだなぁ…俺自身希望とかには無縁の男だぞ。そもそも何をすれば希望に繋がるんだよ」


 実に曖昧な願い。答えなど見付からない様な、無茶な願いを押し付けられる。



『ふふっ、僕の意志を継いでくれる存在を探しているんだ。君なら継いでくれそう』


「意志…(世界に絶望した奴が取る行動なんて、碌なもんじゃねえか)断ると言ったら?」


『君を殺して別の人を探すよ』


「…そっか。因みに意志って何?」


『世界の破壊』


「…重たい話だねぇ。正直この世界の破壊に興味は無いんだ。他を当たってくれや」


 トトはため息と共に聖銃を抜き、バシュン!早撃ち。


 トトの放ったダークレーザーは絶望の勇者をすり抜けた。



『気が早いね。僕に手元から離れた攻撃は効かないよ』


「そうかい(飛び道具と魔法は効かないか…呪怨砲も駄目とかキツイ…なんてチート野郎だ)ボス相手に直接攻撃のみなんて、酷い縛りプレイだな」


 トトはちょっと待ってと言い勇者を待たせる。素直に待つ勇者をよそに、装備を見直した。


(飛び道具は使わないけど…レベルを底上げするのに武器ホルダーに装備しなきゃな。あとは近接武器を出来るだけホルダーに装備しないと瞬殺されるか…しかも…あの見た目だけど、勇者だから聖属性なんだよな…仕方無い…面倒だが本気出すか!)


『気が変わったらいつでも言ってよ?』


「変わらんよ。武器作成!100連バレットベルト!武器小型化!」


≪100連バレットベルト、ランクS、攻撃1、武器連結レベル加算・属性加算・不壊、武器師専用装備≫


 マシンガン弾帯の様なベルトを作成。ベルトにある小さな穴に、小型化した使わない武器を次々と嵌めて行く。無理矢理なレベル上げ。武器を元に戻す等、後始末が面倒なのでやらなかったが、死ぬよりはましだった。



『ん?君、どんどんレベルが上がって行くね。凄いや』


「へぇー。良かったら教えてくれよ。俺の鑑定じゃ解らないんだ」


『良いよ。武器師・百式、レベルは…1000を超えてから強さも視れないや。凄いね。是非僕の意志を継いで欲しいよ』


「はははっ、そりゃどうも。俺の強さに限界が無いのが解っただけでもありがたい…お待たせ。準備は多分完了だ」


 バレットベルトに小型化した武器を詰め込み、邪妖刀を構える。



『ふふっ、残念だなぁ。…でも君を殺してその身体を貰えば良いか。その能力も貰えそうだし…それに…まぁ良いか』


 独り言を呟く勇者が白い剣を掲げる。白いオーラが更に溢れ、黒い影だった勇者が白く染まっていった。


≪救世剣・シクザールメサイア、ランクーー、攻撃ーー、ーーー≫


(あれは…魔武器…いや、聖剣?救世の剣を世界の破壊を望む者が使う…か)


『この剣が気になるかい?ふふっ、これは僕が死ぬ前…魔王を倒した時に使っていた剣なんだ。人間共の希望が詰まった真の聖剣さ』


「死ぬ前って事は、幽霊みたいなもんか?…合成」


 霊弓・ファントムスレイヤーを邪妖刀に合成させる。


≪邪妖刀・犠牲の常闇、ランクS-、闇堕ちレベル562、攻撃3810、レベル加速・ダメージ倍加・邪技・犠牲技・霊属特攻≫



 全体的に黒いトトと、白い人型になった勇者。黒と白、対照的な二人。


『行くよ。白光刃』

 白い勇者は光の速さの如く。


「来いや。黒闇武刀!」

 トトは侵食する闇の様に。


 ガキィン!闇の心を持つ光と、ささくれた心を持つ闇がぶつかる。



『ふふっ、互角か。流石だね。白光刃雷』

 バチバチ!白雷の斬撃。

「すげえだろ!黒闇武雷!」

 バチバチ!黒雷の斬撃。


 バチィン!「うおっ!」雷が弾け両者闘技場の端まで飛ばされる。



『やるねぇ。足して行くよ。白光刃・氷雷』

 バチィ!白雷を纏う氷の斬撃。

「…楽しそうだな。黒氷・闇雷刃!」

 バゴンッ!『むっ?』闇の雷を纏う漆黒の氷撃で斬り飛ばす。


 トトは右手に持つ邪妖刀を振り切った状態で勇者を見据える。左手には白雪杖・クロウカシスが握られていた。


「…斬った手応えはあった。霊体なのか、魔物なのかよく解らない存在だな」



 斬り飛ばされた勇者が起き上がる。斬撃痕は無く、先程と同じ白い人型。


『今のは効いたよ。六千も減った』


「その割にはピンピンしてんな。勇者さんは霊体なのか?」


『説明は難しいな…僕は具現体という身体で、死ぬ前の能力を引き継いでいるんだ。因みに僕は、HPが0にならないと身体が無くならないからね。0になるまで五体満足で闘えるんだ。良い能力でしょ?』


「…HPって…なんかRPGみたい(厄介な能力だな…それにしても素直な奴だ)…最大HPはどんなもんで?」


『10万だよ。死ぬ前はもっとあったんだけどね。聖光剣!』


 ドンッ!救世剣を掲げる勇者の白いオーラが増し、キラキラと輝く。闘技場の明るさが増す程に輝きが溢れていた。



「…力が上がった。…こんなに素直で勇者らしい奴が世界を壊したいだなんて、余程の事があったのか。俺も、ホークに出会わなければコイツの意志を継いでいたのかな」


 邪妖刀を左手に持ち換え、右手に爆竜の戦斧を持つ。黒いオーラに赤が混じり、赤黒いオーラに変化。


 輝く白と赤い黒が拮抗し、ピリピリと張り詰めた空気。



『君もまだ上があるんだね。正直言うと楽しいな。僕の意志を受け継ぐ素質がある者じゃないと、こうして接する事が出来ないから。聖光烈衝』


 シュンッ!「おぐっ…速っ」瞬時に間合いを詰められトトの身体に突き刺さる剣。


 パリン。身代わりの指輪が音を立てる。


「なめんな…爆炎破斬!」

 ボンッ!爆竜の戦斧で勇者を凪ぎ払う。

「まだ終わらんよ!サクリファイス!」

 吹き飛ばされた勇者を追い掛けながらバレットベルトに触れ、小型化した武器を犠牲に武器を強化。


「お返しだ!黒炎覇王撃!」

 黒い炎を纏う斧。

 勇者の脳天から覇王の一撃を込めて振り下ろす。


 ドゴオオン!救世剣を弾き勇者を両断。


 直ぐに追撃。ギィンッ!持ち直した勇者に弾かれ、後退し距離を取った。



『危ない。消滅する所だった。一撃で二万もダメージ食らうなんて初めてだよ』


「やっぱりHP制は厄介だなぁ。普通は両断されたら死ぬだろ」


『死ぬ間際でも闘えるこの能力だから、魔武器を複数持つ魔王に挑めたんだ。ふふっ、これが破れるかな?…勇者魔法!インコンプリート・ディフェンス!』


 勇者の身体に薄い膜が出現。スッと勇者の中に吸い込まれる。



「勇者ってこんなに強いのか。サクリファイス!」

 勇者に詰め寄りながら武器を犠牲に。


『聖光烈斬』「黒闇武業!」ガキィン!聖なる斬撃を闇の斬撃で逸らす。

「爆炎剛撃!」ボンッ!勇者に直撃。


「くっ硬い…シールドか。ぶっ壊す!爆炎連斬!」

 ボン!ボン!ボン!ボン!連続で勇者に攻撃を加えるが、シールドを破壊した様子は無かった。


 爆炎破斬の爆風で距離を取りつつ、勇者の様子を伺う。


 勇者からは相変わらず、余裕の雰囲気が見てとれる。



『フェアじゃないから教えてあげるよ。勇者魔法インコンプリート・ディフェンスは他の魔法が使えなくなる代わりに、自分が受けたダメージ分のシールドが発生するんだ』


「…まじかよ。…黒炎覇王撃以上の攻撃を与えないとダメージが無いのか?」


『そういう事。僕が受けたダメージは二万六千…頑張ってね』



 トトの口から何回目になるか解らないため息が漏れた。


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