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流れの武器屋  作者: はぎま
迷宮・古壁の回廊
45/163

重力鎚

『グゴ…ガ…セン…メツ』


 ズン_身体が徐々に重くなっていく。

「うっ…キツいな。ミランダちゃんレビテーション使える?」


「いえ、使えないです。スピードアップなら使えますが…」


「長期戦になると潰されそうだよなぁ…とりあえず、ウォーターレーザー」


 バシュン_ゴーレムの手前でレーザーの軌道が下に向かい、地面に墜ちた。



「あー、やっぱり近付く程に重力は強くなるか…(俺は飛行が使えるからまだ動けるけど…)」


『グギ…グラビティ…ウェーブ』


 ゴーレムは重力鎚を振りかぶり空中から地面に叩き付ける。

 ドンッ!ドッドッドッ。指向性の黒い波。


「当たったら駄目だ!散開!」



 ドッドッドッ。トト達はバラけてグラビティウェーブを躱した。


「ふぃー…当たったら重力に潰されるって訳か…ホークのせいで準備が足りないな…ミランダさん!上からの攻撃なら効きそうだから隕石落下はいつでも出来るように!」


「はい!」


「じゃあ私達は隙を作るか。飛ばすよトト!武装!」


 ホークアイは聖剣を掲げて武装と叫ぶ。


 しかし何も起こらなかった。



「…あれ?武装!…トト!助けて!」


「アホーク!自力で出来るか確認しとけ!まだ聖剣がホークの魔力に馴染んで無いんだよ!_やばっ!」


 ドッドッドッ。ホークアイの元へ向かおうとするが、ゴーレムが顔の無い頭を向けて攻撃してくる。



「トトさん!大丈夫ですか!」

「大丈夫!こうなりゃ!武装!」



 爆竜の戦斧を取り出し武装。


 紅に染まった竜の戦士に変身し、ゴーレムに向かって駆ける。


「おりゃぁ!爆竜破斬!」

 ガキンッ!なんとか辿り着くも身体が重く失速。


『ガグ…』

 重力鎚で受け止められ。


「まだまだ!爆炎!」

 ゴオオオ!トトの炎が巻き起こり、ゴーレムもろとも炎で包む。



「_っ!重力が弱まった!ミランダちゃん行くよ!」

「はい!」


『グラビティ…クラッシュ』

 ゴキンッ!「ぐはぁ!」パリンッ。ゴーレムの攻撃がトトに直撃。


 身代わりの指輪が音を立てる中、壁までぶち飛ばされる。



「隕石落下!」

「シャイニングスラッシュ!」


 ドオオオ!ドンッ!回り込んだミランダとホークアイの攻撃。


 隕石は直撃し、「くっ、硬い」ホークアイの攻撃は硬い装甲に阻まれ。



「追撃!爆竜炎斬!」

 ドゴンッ!爆竜の戦斧が肩から胸に駆けて食い込ませた。


『グガ…ギ…グラビティ…ウェーブ』

 ドウン!「ぐあ…」パリンッ。ドウン!パリンッ。


「トトさん!隕石落下!」

 ドオオオ!『グラビティ…クラッシュ』ドゴンッ!重力鎚で空間を叩く。


 グイッと隕石が逸らされた。



「ぐっ…はぁ…はぁ…やっぱり強えな…」


 ゴーレムの身体は隕石でへこみ、爆炎で溶け、爆竜の戦斧の斬り付けで肩から胸が裂けている。


「トト!倒せそうか!?私とミランダちゃんの攻撃は余り効果が無い!」


 ゴーレムを中心に、部屋の入り口付近にホークアイとミランダ、出口の階段側にトトが膝を付いていた。



「このまま押しきれれば…」


『ギグ…サイ…セイ』

 ゴーレムが光に包まれ、ダメージを受けた部分が回復していく。


「まじかよ…再生……ホーク!退却だ!」


「了解!」


 ホークアイとミランダが入り口から脱出しようと後退る。

『グラビティ…ウォール』

 ズンッ!バキバキ!「きゃあ!」「ぐあ!」パリンッ。パリンッ。パリンッ。


 しかしゴーレムが逃がさないとばかりに、重力鎚を勢い良く振るうと入り口に重力の壁が現れる。


 ホークアイとミランダがどんどん重力に押し潰され、身代わりの指輪が音を立てていく。

「やばい!おい!全身タイツ野郎!こっちだ!爆竜破斬!」


 ドゴンッ!焦るトトの一撃。重力鎚で受け止められたが、重力は少しだけ軽くなった。


「今の内だ!入り口が駄目ならお前達は奥にある40階の転移陣から帰れ!俺の事は気にするな!爆炎!」


 ゴオオオ!ゴーレムとトトが炎に包まれる。

「トトさん!」

「トト!…くっ…ミランダちゃん!行くよ!」


「待って下さい!まだ闘えます!」

「私達は足手纏いだ!トトなら絶対に戻ってくる!」

 

「嫌です!私も「ディープスリープ」あ…と…」


 ホークアイがミランダを眠らせ、担ぎ上げて40階の階段まで走る。途中身体が重くなるが、炎が増して身体が軽くなった。


 ダンジョンの階段の近く、5階毎にある転移陣へ急ぐ。戦闘状態の魔物は階段まで追ってくるからだ。


 部屋の出口に差し掛かったホークアイ。


 振り返り、力不足な自分に悔しさが込み上げて来る。



「ホーク!駄目だったら転移石を使う!王都で会おう!」


「_くっ、分かった!絶対戻って来るんだよ!死ぬなよ!」


「当たり前だろ!早く行け!」



 階段まで到達したホークアイは眠らせたミランダと共に転移陣を起動。バシュンと転移していった。



「よし…逃げれたな。爆破!」


 ボンッ!爆風を利用してゴーレムから離れる。



『グゴガ…セン…メツ』


「いやー、参ったな。強すぎるぞ」


 完全回復したアゾットゼルク・ゴーレム。対するトトはプスプスと煙が立ち、自動回復が追い付かない火傷を負っていた。



『グラビティ…ウェーブ』

 ドンッ!ドッドッドッ。「うおっと危ねえ…」ドンッ!ドッドッドッ。重力の波が次々とトトを襲う。



「転移石は何処に転移するか解らないから正直使いたくない…ならば…最終奥義!」


 トトは爆竜の戦斧を構えて最大限に力を込める。



『グラビティ…ウェーブ』

 ドンッ!「うおぉぉぉ!爆竜…」


 ボゴンッ!爆竜の戦斧を力一杯地面に叩き付け。


 部屋全体に炎が溢れる。


「逃走!」

 炎で視界が無くなり、その隙に階段に向かって全力疾走。


「はっはっはー!ざまぁみろー!」

『…』


 笑い声が響き、炎が晴れた時にはトトの姿は無く。


 完全に見失ったゴーレムは。


『ソウサク…カイシ』


 ふよふよと階段に向かって進み出した。




 ______



 ダンジョンの入り口に転移したミランダを担ぐホークアイ。


 外に出ると既に夜になっており、冒険者達のテントが並んでいた。


 収納からテントを出し、その中にミランダを寝かせるホークアイの表情は優れない。


 友を犠牲にして助かってしまった罪悪感。そして、肝心な時に力を発揮出来なかった役立たずの自分を責めていた。



「……」


「ん…んぅ」


 ダンジョンの入り口をじっと見詰めるホークアイ。やがて朝になり、ミランダが目を覚ました。



「ここ、は。_っ!トトさんは!ホークアイさん!トトさんは何処ですか!?」


「…まだダンジョンに…すまない…私が役立たずなばかりに…」


「…そう…ですか……謝らないで下さい。私の方が役立たずでしたから…すみません、あの時我が儘言って」


「…いや、ミランダちゃんが正しかったよ。何とかして皆で脱出出来れば良かったんだ」



 重く暗い雰囲気。暫く沈黙が続く。



「トトは駄目なら転移石を使うって言ってた。王都で会おうって」


「…分かりました。正直分かりたくありませんし、ずっとここで待っていたいですが、ここで燻っても仕方ありませんよね」


「ああ、王都で待とう。絶対に帰ってくるから」



 重い腰を上げ、テントを収納してダンジョン定期便の馬車に乗り込む。



「帰ったら中立連合を辞めるよ…鍛え直さなきゃいけないんだ。代わりの人間が来るまではやらなきゃいけないけどね」


「ふふっ、奇偶ですね。私もギルド員辞めようと思うんですよ」


「そう…決めたんだね。じゃあ次に組む時は同業者として、だね」


「そうですね。…あの…トトさんとパーティー組みたいんですけど、口説くの手伝って下さいね」


「…難しいと思うけど…善処するよ」



 ホークアイとミランダにとって、トトとは短い付き合いだ。だがそんな時間なぞ関係無い程の信頼関係があった。


 トトは絶対に帰ってくる…繰り返す言葉が馬車に響いていた。

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