トレジャーハント2
時刻は朝方。トトは目を擦りながら起床。
無理な武装の影響で身体が軋んでいた。
「あー、よく寝た…うわ…筋肉痛…回復効かない…」
少しずつ身体を伸ばしながら動き、テントから出る。外にはホークアイとミランダが既に起床していた。
「おはよう、トト。ゆっくり眠れたかい?」
「おはようございます。トトさん。調子はどうですか?」
「おはよう。ちょっと無理し過ぎて筋肉痛な以外は大丈夫ですよ」
テントを収納し椅子を出して、よっこいしょと座る。
「ミランダちゃんと話したんだけど、トトの事は秘密にしとくつもりだよ。魔武器を複数所持しているなんてちょっと洒落にならないからね」
「おー助かるわ(能力さえバレなきゃ何とかなるかな。ってもう遅いか?)俺はゆっくり過ごしたいだけだからな。勇者様」
「いや、恥ずかしいから勇者様はやめてよ。でも武装って凄いね。能力が跳ね上がる」
「その分疲れやすいから気を付けろよ。とりあえずその剣は貸してやるよ。へっぽこな剣って念じれば変わるから」
ホークアイが光輝く聖剣を持ち目を閉じる。すると、ボロボロの剣に変化した。
「…聖剣なんてどこにあったんですか?普通は教会が管理しているから一般には出回らないのに」
「あぁ、骨董品店に行ったら普通に売ってましたよ。掘り出し物でしたね」
「えぇ…骨董品…」
聖剣は魔武器とは違う括りで教会が管理している。魔物は扱えない勇者の武器としての認識なので、勇者以外が持っていると問題になる程だ。
「それにしてもトトが爆炎の戦士とか、イメージから掛け離れているよね」
「それは否定しない。まっ、これからもクソ男を貫くから宜しく」
「でもムーガスト家から報酬を沢山貰えますよ?」
「いらんよ。ダンジョンのお宝で充分。それにあのツインドリル面倒そうだから会いたくないし」
「くくっ、確かに恋する乙女って感じだったよ。爆炎の戦士さまぁ…って言って。ラライアちゃん可愛いから貰っちゃえば?」
「身分が違うと考え方も違うから無理じゃね?どうせ物語のヒロインになった気分に酔ってるだけだし、鎧取ったらクソ男だぞ?」
身分が高くなると職業に対する偏見も比例する。レベルの無いトトは貴族の眼中にも入らないのが現状だ。
「でもそうかな?1人で魔竜を討伐する人間なんて居ないし、勇者になった私よりも強いでしょ?」
「証明する労力が割に合わん。ってか何処にクソ男と結ばれたい奴が居るんだよ。それよりホーク。勇者になれたなら求婚の嵐だな」
「うっ…それは言わないでよ…正直それで悩んでいるんだから」
「間違い無く貴族達が押し寄せますよね。連日のお茶会やダンスパーティーの誘い…頑張って下さい」
「頑張れないよ…でも五月雨が折れて魔武器所有者から外れるから、中立連合も辞めれるし。自由にはなるかな?」
長年連れ添った相棒の五月雨を寂しそうに眺めるホークアイ。心にポッカリと穴が開いた様な喪失感が見てとれた。
「壊れた魔武器はどうなるんだ?貰えるの?」
「折れた五月雨を中立連合に提出して確認して貰ったら、記念に貰えるよ。魔武器は壊れたら直せないからね」
「ふーん。じゃあ確認が終わったら預かるぞ」
「……直せるの?」
「中立連合辞めたら教えてやる」
「ふふっ、了解」
ホークアイはトトなら直せると確信し、嬉しそうに笑う。その様子を眺めるミランダは羨ましそうに見ていた。
トトはふと収納から黒い槍を取り出し、持つと発狂しそうな重苦しい雰囲気の槍をしげしげと眺める。
「ところで、この魔槍…エビルトルメンタはどうする?報告しないなら欲しいんだけど」
「…そうだね。バレなきゃ良いんじゃない?私とミランダちゃんはそんな邪悪な槍は使えないし。魔竜と騎士の鎧も貰ってよ。良いよね?」
「はい…良いと思いますよ。あの…寒気が凄いので仕舞って欲しいです…」
「ありがと。お礼と言っちゃあれだけど、ホークはその聖剣やるよ「え?良いの?」ああ、ミランダさんもメテオブレイドあげますよ「あっ、ありがとうございます!」…定期的にメンテナンスしたいからたまに借りるのは覚えておいて」
聖剣はまだもう一本あるので、あげても問題は無い。それにホークアイがとても気に入った様子なので、返して貰うのは忍びないからだ。
「で?探索はどうする?魔武器は無かったって報告するのか?」
「んー、それなんだけど…もう少し探索して良いかい?報告にあった魔物を確認しないといけないし。あと、五月雨が折れた理由も欲しいし」
「良いぞー。報告にあった魔物ってどんな奴?」
「遠目だったから定かじゃないらしいけど、ゴーレムみたいな魔法生物って話だね」
「へぇー。ゴーレムか…(欲しいな…加工したら乗り物とかになりそう…)」
王都を拠点にするにしても、他の地域に行く移動時間がネックになる。トリスを連れて行くにしても、安全な乗り物はあった方が良い。
「報告があったのは下の階層だね。ここが地下39階だから、居るのは40階だと思う。でも今日は行けないから、明日挑戦しよう」
「…ホークも筋肉痛?」
「ああ、回復が効かないんだよ」
「慣れたら余裕だぞ。じゃあ俺はお宝探しでもしてるわー。夜には帰るから」
食材等を出し、二人と別行動。休んでても良いが、昨日の闘いで力不足を痛感したので戦力強化を目指す。
「下層だから良いお宝があれば良いけど…作成。えーと…真っ直ぐ行ったらあるか」
地図を見ながら隠し部屋の位置を確認。
へっぽこな剣はホークアイにあげたので、邪妖刀を取り出し装備。
「何気にこれ使うの久しぶりだ…邪気が凄いから人前で使えないんだよな…」
蠢く闇という名前の通り、時折カタカタと揺れる刀を撫でる。
ズルズル。ズルズル。「おっ、魔物…だ」
≪デンデンキング、クラス5、強さ5900≫
「でかいカタツムリ…きしょい…近付きたく無い…無理…ファイアレーザー連射!」
ボボボ。バシュン!バシュン!
後退りながら、炎のレーザーを連射する。当たる度に中身が出るので本気で燃やし尽くす。
「おえっ…マジ無理…跡形も無く消え去ってくれ!」
うねうねとするカタツムリに鳥肌を全開にしながら本気で撃ち込み、やがて真っ黒い塊になった。
「あー、なんか凄い良い匂いする…エスカルゴだと思えば食べれるか?いや無理無理」
収納も解体も嫌なので、顔を歪めながら妖刀に合成。
弱い魔物を撃ち抜きながら、突き当たりの壁を破壊の鉄鎚で破壊。
「ふぅー。宝箱は…あったあった」
小部屋の中には銀色の宝箱。罠は無さそうなので開けて中身を確認。
≪レジストリング、ランクB、魔法防御上昇≫
≪デーモンスレイヤー、ランクB-、攻撃200、悪魔特攻≫
「十字架の剣。悪魔なんて居るんだなー」
≪タイガークロー、ランクB-、攻撃320≫
≪大地の宝珠、ランクーー≫
「おー!なんか凄そうなの出た!」
≪ディープレッド、ランクB≫
≪ディープグリーン、ランクB≫
≪ディープブラック、ランクB≫
≪クリアホワイト、ランクB≫
≪クリアブルー、ランクB≫
「宝石って他に何処で採れるのかな?」
≪不幸なくだかけ、ランクB-≫
「くだかけ?鶏っぽい鳥?」
≪グールパウダー、ランクA-≫
「あっ、駄目な奴だ」
≪オーガヘルム、ランクB≫
≪オーガアーマー、ランクB≫
≪オーガガントレット、ランクB≫
≪オーガグリーブ、ランクB≫
「サイズがでかい…」
お宝を確認し終え、地下38階へ。駆け足で魔物を撃ち抜き、回り道になりそうな場所は壁をぶち抜く。
ドゴンッ!「これなら各階一時間で回れるな!」
38階に到着。特に代わり映えしない景色。
2つ部屋を抜けた先に隠し部屋を発見。壁をぶち抜き進む。
バゴンッ!『グルルル!』
「あっ、お邪魔します」
≪キマイラガード、クラス6、強さ11206≫
「えっ、クラス6?…うおぉぉ!先手必勝!呪怨砲!」
呪怨砲を取り出しバズーカ砲の様に肩に掛けて引き金を引く。
「喰らえ!」ドオオオ!_オオォォォ!_ギャアァァ!_イヤァァァ!_イタイヨォォ!_ハァハァパンツナニイロ_タスケテェェ!_イヤダァァ!_オオォォォ!
「ひぃぃ!何これぇ…」
どす黒い砲弾が着弾した瞬間に溢れる怨嗟の叫び。どす黒く粘着質な空間に塗り潰された。
「……」
しばらくして晴れたが、キマイラガードは黒いペンキを被った様に黒く染まり動かない。
サクッ。妖刀で突き刺しトドメを刺す。そのまま妖刀に合成。
「…恐かった。今度から外で使おう」
壁をぶち抜き隠し部屋に到達。
「銀色の宝箱。やっぱり下層は銀色率が高い?っと罠解除は他の宝箱で作れそうだな。作成」
≪罠解除の腕輪、ランクA-、攻撃1≫
「宝箱の素材ってなんだ?ランクが無駄に高い」
罠解除の腕輪を装備して宝箱を開ける。腕輪が光り、開けても罠は作動しなかった。
≪兎の銀像、ランクB-≫
「動物の像は何の意味が?」
≪精霊石の杖、ランクA-、魔力攻撃580、魔力上昇、火風水土属性上昇≫
「精霊石?なんか凄いな」
≪ガーディアンリング、ランクB、状態異常耐性≫
≪クリアクリスタル、ランクB+≫
≪アイスクリスタル、ランクB+≫
≪ダーククリスタル、ランクB+≫
≪タイムクリスタル、ランクA+≫
「ん?タイムクリスタル?これってもしかして時間属性?」
≪ホムンクルスの種、ランクA-≫
「…なんかぶよぶよしてる…」
≪ルナライトちゃん人形・フルカラー、ランクーー≫
「…ルナライトちゃんって誰?フルカラーって事は他のバージョンもあるの?…まぁ可愛いからいいか」
宝箱を確認し終え、次の宝箱を求めて上の階層へと進んでいった。
「ランクの高い宝箱ほど変なお宝入ってるな…」