下層探索
「おかえり、トト。結局蟹倒したんだね」
「おかえりなさい…1人で倒せる魔物じゃ無いですよ…」
テントに戻ったトトはお土産にと蟹を取り出し、二人に振る舞う。蟹料理を食べながらご機嫌なトト。
「蟹美味い…はぁ…蟹美味い」
「偉いご機嫌だねぇ。宝箱でも見つけたかい?」
「んー?まぁな。魔武器は無かったぞ」
「良かったね。まだまだ隠し部屋はあるって話だからじゃんじゃん見つけてよ」
「そのつもり。あっそうだ、前に売った刀貸して。調整したいから」
ホークアイから以前売った刀、石切丸、鬼切丸、風狼刀を受け取る。このダンジョンではもう力不足なので、しばらく預かる事に。
「そういや、ホークの魔武器ってどんな能力なの?」
「五月雨の能力は今の所、追加攻撃、素早さ上昇、水流刀技が解っているよ」
「んー?鑑定じゃ解らないのか?」
「ランクが高くなるにつれて、基本的には作った本人じゃないと詳しい性能は解らないんだ。五月雨は他の大陸から流れて来たから作成者は解らない。だから使い続けて探るしかなくてね」
「ふーん。じゃあ攻撃力も解らない?(俺が作り直したら能力が解るけど…やったら問題だよな)」
「そうだね。ランクはS、1000を超えているのは確かだけど」
トトは自分が作った武器の能力は解る。五月雨をいじりたいがここでは我慢。色々バレたらいじらせて貰おうと決めていた。
「じゃあ魔武器の認定はどうやるんだ?」
「中立連合が認めたらかな。結構ざっくりだけどね。基準になる武器と照らし合わせて議論を交わして認定する感じ」
「ふーん。基準の武器ってどんなの?」
「魔王が使っていた武器だよ。剣、槍、斧、杖、弓とか一通りあるよ」
雑談を終え、それぞれテントに分かれて就寝。
トトは1人武器の調整をする。
(お宝の整理しないとごっちゃになるな…とりあえず闇属性の宝石とブラッディクロークとか合成しとくか。持ってるの怖いし)
≪邪妖刀・蠢く常闇、ランクA+、闇堕ちレベル189、攻撃1645、邪猛毒付与・レベル上昇・闇剣技・ダメージ倍加≫
(これで魔武器じゃないってなんなんだろ?レベル限界突破してるし…まぁいいか。次は壊れた武器かな…大剣から)
≪雷虎、ランクB、雷斬りレベル26、攻撃730、雷剣技・攻撃上昇・素早さ上昇≫
(んー、そういや雷属性って風と水の合成だから作ろうと思えば作れたか…)
≪ファウンテンスピア、ランクC、水槍士レベル45、攻撃445、水槍技≫
(復元して少し強化したけど普通?後は…メイジスレイヤーはどうしよっか…銃に合成したら属性弾と魔法破壊が喧嘩しそうなんだよな…やっぱり新しい銃か?)
メイジスレイヤー、クリアクリスタル、魔銀結晶を合成。
≪破銃・マジックスレイヤー、ランクA-、破魔銃士レベル51、攻撃0、魔法破壊・貫通≫
(上出来かな…魔法使う奴が居たら試そう。ホークの武器どうするかなぁ…風狼刀は適当に風属性ぶっ混むか)
≪暴風刀・大嵐、ランクA-、嵐武者レベル76、攻撃1004、風嵐刀技・獣特攻≫
(うーん…こんなもんかな?まだ強化したい所だからお宝次第か)
いつの間にか寝ていた様で、ふと目が覚める。
(んー…話し声?)
「まだギルド員は続けるの?トトと居れば強くなれそうだし、うるさい元パーティーメンバーは居ないよ」
「元メンバーは少し我が強いんで…トトさんと居ると迷惑になりますから…」
「ふーん。それで良いなら良いけど?でもトトはお兄さんと比べないよ?」
「…それは解っているんですが」
(パーティーメンバーに兄貴と比べられるのが嫌で辞めたのかな?)
「気負いしなくても良いんじゃない?20点の男だから恋愛にも発展しないし?」
「からかわないで下さいよ…」
会話が聞こえない様に顔を埋めて眠りに入る。
(寝よ…なんだかなぁ…利用されるのは嫌だなぁ…)
朝の時間になりテントから出たトトは、ボーッとダンジョンの天井を見上げていた。
(破壊の鉄鎚を使って床をぶち抜けば早く下層に行けるんじゃね?…でも強い魔物が上に上がって来るか?…良い方法無いかなー。下層からぶち抜くかなー)
「…トトさん、おはようございます!」
「あぁミランダさん。おはようございます」
「あの…トトさんはホークアイさん以外と組む事はあるんですか?」
「いえ、無いと思いますが…あるとしたら…(ニグさんの顔が出てきた…組みたくねぇな)…んー…(トリスを鍛える?護身は必要だよなぁ)…1人居ますよ」
トリスを連れて歩く以上、面倒事も視野に入れなければならない。その為にトリスの強化は必要不可欠。
「そっ、そうなんですね。あの、迷惑じゃなければ…また御一緒しても良いですか?」
「時間が合えば構いませんが…猫耳お姉さんみたいな人とは関わりたく無いので、それは覚えておいて下さい」
「あ…はい…すみません…」
「……ミランダさんはどうなりたいんですか?ギルド員のままでも安定した生活ですよ?」
「…強くなりたいんです。ドーグ・サラスの妹としてでは無く、私個人を評価して貰いたくて…他の皆と比べたら詰まらない理由ですが…」
「理由は人それぞれですよ。俺にも優秀な姉が居ましたから、ミランダさんの気持ちは分からなくもないですし…」
ふと姉と比べられてきた事を思い出す。何でも出来た成績優秀な姉。トトは努力しても目付きの悪さで素行が悪いと思われ、成績は悪かった。
(数学と科学で100点何回取っても5段階で3だったなぁ…)
「トトさんはお姉さんが居るんですね。…比べられたりしたんですか?」
「ええ、それはもう……(元気かなぁ…)」
「トトさん?」
「いえ、何でもありません。っとホーク?起きてたなら話に入れよ」
「ふふっ、おはよう。トトの家族が気になってねぇ。お姉さん美人かい?」
「ああ、俺が言うのもあれだが美人だぞー。性格以外は完璧だ」
故郷には帰れない。1ヶ月程離れただけで、それだけでこんなにも懐かしく思うのか。
雑談する中、ため息を押し殺す様に吐き、気を使うホークアイと心配そうに見るミランダに笑顔を向ける。
「トト、笑うと何か企んでいる様に見えるよ」
「うるさいなぁ…行くぞ」
「ふふっ、仲良いですね」
準備を済ませ、階段を降りる。地下25階から39階まで行ける罠があるので楽に進める。
「ミランダちゃんお願い!」
「はい!パワーアップ!」
「水流連撃衝!」
「グギャァ!」
斬!ホークアイが両手に持つ刀で魔物を斬り刻む。
「行きます!剛断撃!」
ザシュッ!ミランダの一撃により魔物は沈黙。
それをボーッと眺めるトト。
「なぁホーク、ミランダさん」
「ん?なんだい?」
「今更なんだけどさぁ…」
「なんでしょう?」
「レベルってどうやったら上がるの?」
「「……」」
何言っているんだこいつは…という目でトトを見るホークアイとミランダ。この世界の常識に疎いトトは首を傾げて沈黙が起きる。
「俺レベル無いから気にしなかったんだけどさ。ミランダさんは強くなりたいって言うんだけど、そもそもどうやったら強くなるか知らないんだよ」
「トト…今までハブかれてたんだな…」
「トトさん…」
何か同情されているが、そんなものはいらないとばかりに早くしてよと言うトト。
「…戦闘職業の場合は闘う事がレベルアップに繋がるんだけど、強い魔物を倒したり、厳しい修練を積む、自分に合った武器で闘うとか色々あるよ」
「ふーん、ありがと。因みにミランダさんはなりたい職業はあるんです?」
「兄がドラゴンスレイヤーっていう職業なので、それに負けない職業にはなりたいと思います!」
「決まって無いのね。じゃあ実験に付き合ってくれたら武器貸すけど…どうします?」
「実験…ですか?」
「そうそう。この武器を使いこなせたらなれる職業がある筈なんですよ。本当になれるかどうか試したいんだけど、俺じゃあ無理だから」
≪メテオブレイド、ランクA-、メテオブレイダーレベル98、攻撃1090、魔力攻撃1090、火土光闇属性、隕石落下、魔力上昇≫
「「……」」
「これ…魔武器ですよね?」
「違いますよ。ランクはA-なんで魔武器じゃありません」
「確かに…A-だけど…」
ランクはA以上じゃないと魔武器とは認められない。しかしランクが低くても高性能の武器があるのは事実。
職業の場所はトトしか見えないので、二人はメテオブレイダーという職業は解らない。
「これは何の職業になれるって言うんだい?」
「メテオブレイダー。超火力の職業だと思うよ」
「知らない職業…」
「やります?別に俺はどちらでも良いですが」
「…やります。やらせて下さい!」
別にこんな前置きは要らなかったのだが、ただであげるよりは実験と言った方が受け取ってくれる。
ミランダにメテオブレイドを渡す。ホークアイが物欲しそうにこちらを見ていたが無視。
メテオブレイドを眺めながら歩くミランダは少し危なっかしい。
「_ミランダちゃん魔物だよ」
「はい!」
(そういや隕石落下ってダンジョンでも使えるのかな?)
≪アーマー・ドラゴン、クラス5、強さ7650≫
体長15メートル。鎧の様に金属を纏ったドラゴン。
竜の鱗と合わせて金属の鎧が高い防御力を示している。
普通の攻撃はまず通らないが
「隕石落下!」ドゴオオ_
1メートルの隕石が出現。
オオン!_ドラゴンに直撃。
「…ほえ?」
一瞬にしてペチャンコになった。
「……」
「……トト…私にも何か頂戴」
「…魔武器あんだろ」
「…えっ?嘘…」
「どうしたの?ミランダちゃん。副作用とかあった?」
「いえ…魔法剣士のレベルが上がって…職業が…変わりました」
「え?もう?何になったの?」
「メテオナイト…帝級…」
魔法剣士は上級職業の派生。次の職業は王級になる筈だった。
(才能…か。すげえな)
「…トト。やっぱり何か頂戴。身体で払うから」
「野郎からその台詞を聞くとは思わなかったな。魔武器あんだろ…ん?(そういや聖剣の出来損ないがもう一本あったな)…ホーク…適性のある属性は?」
「水、風、光だよ!」
「そうか…良いお宝あったらな」
「頼んだよ!」
ホークアイはお宝に期待している訳では無く、トトが作った武器が欲しいのだが、ミランダが居る手前お宝という事にしている。実際はもう遅いのだが。
隕石落下の音はデカイので、魔物は集まってくる。ミランダはそのまま纏めて魔物を隕石で葬り去っていった。
「隕石落下!」_ドゴオオン!
「ホーク、楽で良いな」
「…そうだね。あっ、ミランダちゃん次右に曲がった小部屋が39階に行く罠だから!」
「はーい!」
やがて罠がある場所に到着。「いくよー」ガコンッ。罠を起動。
数分滑り落ち、ザザッと降りた先は広い空間。
その中に佇む一体の魔物の姿。
漆黒の鎧を纏い、漆黒の槍を持つ騎士。
「…ホーク。あれか?」
「…多分。でも報告と違う。騎士じゃない」
「じゃあ別件?」
「恐らく…ごめん二人とも。逃げられそうに無い」
出口は漆黒の騎士の向こう側。
「やるしか無い…か。クラスは?俺のじゃ遠くて解らねえ」
「クラス……7」
「…帰ったらそのイケメンフェイス殴ってやるからな」
「ふふっ、無事帰れたらね」