レベルってあるんですか?
「全部で65株、どれも状態が良いですね。ありがとうございます。それでは金貨1枚と銀貨5枚で宜しいですか?」
「はい、お願いします(初めての金貨!)」
ギルドへと戻ったトトは報酬と麻袋を2つ受け取り、どうしようかと悩む。薬草は明日採るつもり。ギルドの資料室でも行くかな?と考え辺りを見渡した。
「ミ、ミランダさん!これ!お願いします!」
「はい、ゴブリンの魔石ですね。2つで銀貨1枚になります。どうぞ」
「あっあの!俺、剣士のレベルが3に上がったんですよ!」
「あら、おめでとうございます。剣豪目指して頑張って下さいね」
「け、剣豪になったら…あの…あの…「おい坊主!早くしろよ!」…くそ…」
初心者剣士が帰ってきていた。きっと受付嬢に憧れているんだろう。がんばれー、と心にもないエールを送り、資料室に入る。中には誰も居らず、とりあえず職業のリストを手に取った。
「さっきレベルが上がったって言ってたよな…俺にもレベルってあるのかな?」
職業のレベルが上がれば上位職業へ転職出来る。熟練度にもよるがレベルが50~100。例えば、一般職業である剣士の上位職業に剣豪、更に王級職業の剣王、帝級職業の剣帝、伝説級職業の剣聖がある。
「説明には冒険者カードにレベルが記載されている筈だけど…レベルは無い…」
トトの職業欄には武器師と記載されているが、それだけ。資料によると、剣士・レベル1という具合だ。
レベルの無い職業を探してみる。あるにはあるが、学者や研究者といった職業。熟練すればその内レベルも上がるかな?と淡い期待を持ってみた。
「職業…基本的には12歳までの生き方で決まるのか…途中から好きな職業は選べないのかな?一応職業のレベルが上がって条件が揃えば、魔法剣士とか派生職業もあるらしいけど…」
冒険者に適している一般職業は、剣士や斧士などの前衛職業、弓士、魔法使い、回復士、罠士などの後衛職業がパーティーを組む。精霊術士などの特殊職業もあるらしい。
「レベルが無いのは努力でなんとかしろって事かな?それかもう完成されてるとか?…んー…職業って1つだけなのかな?ゲームだとサブクラスとかあるのに」
職業の記載を見てみるが、複数所持している例は無い。
「伝説級職業に勇者とかあるんだなー。俺には関係無いけど…魔物図鑑あるかな?」
魔物の資料を手に取る。有名な魔物の記載の他に、周辺に出現する魔物が挿し絵と共に記載されていた。
「魔物は強さによって1~10のクラスで分けられているのか。周辺はクラス1の魔物、ゴブリン、角ウサギ、大蛙、グレイウルフ。森にはクラス2~3のオーク、フォレストスネーク等……あの豚はオークか。怖いから飛び道具開発したら挑戦してみよう。あんな怖い奴、至近距離は無理」
森で出会ったオークを思い出し、ブルッと震える。銃とか作れるのかなーと思いながら有名な魔物を眺めていく。
「ドラゴンって居るんだな。ドラゴンはクラス5のカテゴリーなんだ…属性が付くとクラス6に上がるってえとファイアドラゴンとか?」
読み進めると、伝説級の魔物はクラス7~10に属するらしい。魔王の文字で目が止まり、クラス8に属しているのを確認。
「魔物の強さの基準は…例外を除き、一般職がパーティーを組んで対応出来るのはクラス3まで。上位職業パーティーで4。王級職業のパーティーで5。帝級職業のパーティーで6。7~は伝説級職業を含むパーティー、又は軍隊なら対応出来る強さ、か」
あくまで基準なので、魔法が効かない特殊な魔物等の例外は存在する。いくら上位職業でもレベルが低いと勝てない事も多く、己を過信して帰らぬパーティーが後を絶たない状況だ。
「それでも見返りが多いから、魔物を討伐する奴が多いんだろうな」
周辺の地理等を調べ、また勉強しに来ようと思いながら資料室を後にする。ギルドを出て固まった身体をうーんと伸ばした。
「レベルが上がらない事も視野に入れないと…今の所、俺が強くなる条件は強い武器。必要なのは素材か……あっ買えば良いんだ」
メイン武器が欲しい。ビクビクしながらの採取は嫌。まだ昼過ぎなので、武器屋等を巡る事にした。