表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れの武器屋  作者: はぎま
王都ノール
28/163

依頼を受けてしまいました

 廃坑から出ると、朝日が昇り、太陽が眩しい。


「_眩しい…ちょっとボーッとするな…徹夜とか久しぶりにしたし」


 辺りを見渡す。昨日来た時と変わらず雑草が生い茂る入り口。


 ここに居ても仕方ないので街に向かう。戻る途中に冒険者や商人とすれ違うが、目を合わせずにすれ違い街に到着した。



「んー、お腹空いてないし帰ろうかな」


 街に用事は無いので門を出て街を出る。準備運動をした後、王都に向かって走り出した。



「この武器達を売ればお金持ちだ。売れるかな?…おっ、ゴブリン。にしては大きいな…オーガかな?」


 遠くからこちらに向かってくる影、割りと速く立ち止まるとドンドン迫って来た。


 デザートイーグルを構えて照準を合わせる。


「レーザービームでも試すかな。距離は100メートル」

 キュイン!_パッと光ったかと思うとオーガらしき影は倒れていた。


「すげー!着弾までが段違いだな…」


 駆け足で魔物の元へ行く。そこには頭を撃ち抜かれた体長2メートルを超えるクラス3のオーガ。


「これ納品したら高値になりそう。けど綺麗過ぎる…合成するかな」


 魔石を抜いてデザートイーグルに合成し、王都に向かって駆ける。


「でもこんなにクラス3とか4の魔物が出るなんて、この街道を抜けるのは命懸けだよな」



 呑気なトトは走る。実際1人でこの街道を抜けるのは危険なので、普通は止められるのだが。


「でもレーザービームは回収しに行かなきゃいけないから、弱い魔物は炎の弾がメインかなー」



 渇いた土の上を走る。空を眺め雨が少ない事を感じつつ、少し暇なので武器を強化していく。


≪クリスタル・ガードリング、ランクB、防御晶壁≫


≪クリスタル・フックショット、ランクB、忍者レベル20、攻撃360≫


「進化したら忍者になったけど、攻撃力は意味あるのかな?」


≪仕込み杖、ランクD、侍レベル20、攻撃120≫


「忍者系統の武器って後何かあったっけ?鎖鎌、手裏剣、苦無、撒き菱、忍者刀、手甲鈎…あぁ、鉱山に戻りたくなってきた」


 作りたい物が多い。忍者セットを作れば組み合わせでかなりレベルが上がる。使える武器が多い職業程強い。



「多分職業コンボとかあると思うんだよなぁ…もう少しで王都」


 王都の象徴。王城がチラリと見える。入る事は無いと思うが、一度は入ってみたい。



「んー?あれは、騎士団?軍事演習かな?」


 駆け足の速度を緩め、歩きながら王都に向かっていたが、街道から逸れた草原で規則正しい隊列で剣を振るっている100人程の集団を発見。同じ鎧を着ているので騎士団だと推測。



「へぇー、軍人さんは大変だなぁ。皆剣士や剣豪なのかな?他の武器専門はいない?あっいるじゃん」


 剣を振るっている割合が多いが、槍や斧を振るっている者もいた。


「構え!上段!下段!中段!」「せいっ!」「やぁっ!」「もっと力を込めろ!」「「「はい!」」」


 他の冒険者達も軍事演習を見学していたので、トトも少し近くに寄って体育座りで眺める。訓練に興味があったからだ。



(新人とベテランだと動きが違うなー。教官みたいに回っているのが団長クラスかな?)


「団長格好良いよなー」「お前騎士団試験落ちたもんな」「いつかは入るんだ。諦めないぞ」


(あんな重そうな鎧で訓練とか無理だなー。女性騎士も3割くらい居る。女性騎士だけの部隊とか無いのかな?)



 先頭で剣の指導をしている者の中に、冒険者の姿が見える。高ランク冒険者だろうか。


(んー?あれはホークか?無表情だな…あっ女性騎士の方に行ったら笑顔になった。わかりやすっ)


 ホークアイに見付かったら大変なので、立ち上がり演習から離れる。


 王都に無事帰還。徹夜明けで夕方まで走ったのでヘトヘト。そのまま宿に向かい。部屋に帰ってきた。



「ふぃー。疲れたー。寝よう」


 まだ暗くなっていないが、お風呂に入り寝る準備を済ませ眠りに入った。




 コンコン。コンコン。_「んあ?」


 ノックの音で目が覚める。窓を見ると真っ暗。時計は12時を指していた。


「…あー、誰です?」

「あっ、寝てた?帰ってきたって聞いたから起きてるかなって」


 ガチャ。「別に良いぞ。入る?」「悪いね。お邪魔します」


 ホークアイが来ていたので、扉を開けて招き入れる。対面するソファーに向かい合って座った。



「おかえり。無事帰って来て安心したよ」

「ただいま。別に行って帰ってきただけだぞ」


「いや、クラス4のデンジャラス・オーガが出たらしいからね。もう討伐されたらしいけど」


「あぁ、そうなのか(情報が早いな)クラス4ってそんなに頻繁に出るもんなの?ラファーガが出たばかりだろ?」


「実はそれが問題になっててね。もしかしたら魔物の大移動が王都周辺で起こるんじゃないかって言われてる」


 最近のクラス4の報告は6件。ラファーガとデンジャラス・オーガもそれに含まれる。クリムゾン・オークは未確認として報告には上がっていない。



「大移動になったらどうなるんだ?魔物が攻めて来るのか?」


「まぁそうなるね。人間は良いエサだから。だからこの国は今、軍事の強化を図っているよ」


「あぁそれで軍事演習してたんだな。ホークも居たよな?」


「見てたなら声かけてよって、トトなら声掛けないか。そうそう、二日前にデンジャラス・オーガが出たんだけど、その時ムーガスト家の馬車が襲われてね。絶体絶命のピンチに爆炎の戦士っていう人が助けてくれたらしいんだけど、トト知ってる?」


「赤い人?「そうそう。知ってる?」なんか物凄い速度で走ってたぞ」


 知らないと言うと怪しまれるので、情報を少し渡す。別に嘘は言っていない。客観的な視点で話しているだけ。



「へぇー、どんな人だったの?」

「んー。真っ赤な鎧が格好良かった」


「ふーん。…まぁその爆炎の戦士っていう人が今話題でね。ムーガスト家のラライアちゃんが捜しているんだ。多分あの様子なら王女にも言ってるし…まぁ見たら情報宜しく」


「了解。ムーガスト家って貴族?」

「そうだよ。ムーガスト侯爵家だっけな」


 ツインドリルを思い出す。位の高い順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。ツインドリルって偉いドリルなんだなぁぐらいの感想だが、捜しているのならば全力で隠れようと心に決める。



「あっ、そうだ。これ買う?ラファーガの魔石使ってみたんだ」

「ん?刀?……」


≪風狼刀・嵐、ランクB、風武者レベル40、攻撃520、風属性、獣特攻≫


「ホークには世話になってるから言い値で良いぞー」


「…トト、君はなんていう物を作っているんだ…こんな貴族の家宝になりそうな武器…黒金貨何枚分だ」


「え?いらないなら俺が使う「いらないとは言って無いよ!むっちゃ欲しいよ!」じゃあほれ」



 ホークアイは緑色の刀身を難しい顔で眺めている。深いため息の後、トトに黒金貨5枚を渡した。


「え?こんなにいらんよ」

「いや、これぐらいはする。もっと出したいんだけど、多いとトトは受け取らないからね」


「まぁそうだけど…ありがとな。因みに高ランク素材で払っても良いぞ。その刀も強化出来るし」


「……分かった。けど、これ以上強くなったら魔武器に足が掛かるよ。そうなったら面倒事になるから自重してね」


「はいはい。その時は逃げるから宜しく」



 はははっと笑っているが、実際笑えない。ホークアイは立場上トトを監視しなければいけないし、トトは自由が無くなる。


「なんかトトに付いて行けば退屈は無くなりそうだね。…逃げる時は言ってね。私も行くよ…純粋に友としてね」


「…その時が来たらな。でもニグさん怒るんじゃないか?」


「いや、ニグは大丈夫。中立連合も一枚岩じゃないからね。ニグも面白そうだからって付いてくると思うよ」



 深く聞くと巻き込まれそうなので聞かないが、中立連合も色々ありそうだ。


 その後は少し雑談して、ホークアイは出ていった。


 トトも再び眠りに入る。




 翌朝。少し疲れが残る身体を伸ばして宿を出たトトは、冒険者ギルドに向かっていた。


「冒険者活動は定期的にしないとな…赤ギルドに行けば良いのか」



 南区にある赤い冒険者ギルドに入る。受付に並ぶ冒険者を眺めつつ、奥にある特別枠受付へ。


 受付には仕切りがあり、軽い個室の様になっているのでプライバシーが守られているのだろう。ベルを鳴らして少し待つ。



「お待たせ致しました。トトさん」

「あぁ、ミランダさんはここの事務だったんですね」


「はい、ご無事で何よりです。あの後、ここに配属されました。特別枠の受付も担当しているので宜しくお願い致します」


「はい、宜しくお願いします。今日はどんな依頼があるのか見たかったんですが」


 ミランダは元気そうで笑顔をトトに向けている。トトは気まずい雰囲気なので、少し困惑して無表情で対応。



「はい…あの、ニーソの街ではすみませんでした。冒険者の査定方法を誤って教育され、トトさんの評価点数が低い点数になってしまっていた事を深くお詫び致します」


「点数ですか(たしかミランダさんは20点…)…まぁ誤っていたなら直して頂ければ良いですよ」


「ありがとうございます。ニーソの街では、容姿、性格、財力、職業等偏った評価でした…本来冒険者の評価は、依頼達成率、日常態度、強さ、将来性で点数を決めます。トトさんは高得点ですよ」


「そうですか…それは良かったです(って事は…俺は男として20点って事か?…酷な事を言いよる)…では、何もしなくても良い依頼ってありますかね?」


「……いえ、そんな依頼はありませんよ」



 ミランダはトトのやる気が著しく低下している理由が分からない。王都へ向かう馬車でジル、ヤムの会話を適当に相槌を打っていたのを聞かれたせいなのだが…。


 もう帰りたいトト。折角なので何か依頼を受けて貰いたいミランダ。



「…では、王都内の依頼リスト見せて貰えますか?」


「はい、こちらになります」


「……(引っ越し、ペット探し、食堂のホール…ほんと、派遣のバイトみたいだよな。…なんだこれ?)…あの、この赤い戦士の情報ってなんです?」


「これは、今日上がってきた依頼でムーガスト侯爵家が赤い戦士の情報を集めているんですよ。有力情報提供者に白金貨5枚。小さな情報でも金貨が出ます」


「そうですか…(あのドリル厄介な事しやがって)赤い戦士さんにとっては迷惑な話ですよね。…また今度来ます」


 やる気が急降下。益々人前で武装が出来ない。勘違いした奴が捕まえようとしてきそうだと、ため息が漏れた。



「あっ、あの、じゃあ簡単な護衛依頼があるんですが…トトさんに受けて貰いたくて…」


「…一応聞きましょうか(もう帰って寝たい)」


「はい。ギルドで働いている女性は、帰り道で襲われる危険があるので寮で暮らすのですが。王都に実家がある人は送ってくれる人居れば帰れる事が出来るのですよ。そこで、トトさんにお願いしたくて」


「ギルド員の送り迎えですか?報酬の元は個人ですか?」


「いえ、ギルドから出して貰えます。週に1~2日なのですが…」


 週に1~2日。お金は武器屋で稼げば良いので、帰りたくても帰れないギルド員は少し可哀想かなと思う。地球に帰りたくても帰れないトトには少し共感出来る依頼。



「まぁ、それぐらいなら良いですよ。時間帯を教えて下さい」


「あっ、ありがとうございます!午後の4時にこちらに来て頂いて送って貰い、次の日の朝5時に迎えに来て貰う形になります」


「了解しました。あっ、ギルド員さんってどんな方ですか?」


「私です」


「……すみませんもう一度お願いします」


「私です」


「……」


 やると言ってしまった以上後には退けないトトの目からハイライトが消えていく。


「…依頼は何曜日ですか?」


 地球と同じく1週間に曜日はある。

 属性で表し、日月火水木金土→光無火水風土闇になる。

 因みに今日は風の日。


「あの…出来れば今日からお願い出来ますか?風の日と闇の日は残業が無いので…」


「…了解しました。では4時に来ますね」


「ありがとうございます。助かります」



 依頼を受注し、赤ギルドを出る。時刻は午前9時。


「買い物して武器屋でもするかな…」


 気晴らしをしよう…そう呟きながら王都を歩く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ