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流れの武器屋  作者: はぎま
王都ノール
24/163

商業ギルドへ

 報酬を受け取り、赤ギルドを後にする。


「なんか凄い儲かったな…」

「Aランクになるか、中立連合に入ればもっと稼げるよ?」


「いや、遠慮しとく」


 商業ギルドは近くにある。ギルドが密集している場所なので徒歩1分だ。


 商業ギルドは大きい。先程の冒険者ギルド3つを全て横に繋げた長さ。中に入ると、受付の数が20はある。そこに商人達が並んでいた。


「わぁー、でかいなー」

「国中の商人が手続きをしに来るからね。地方都市でも手続きは出来るけど、ゲン担ぎの意味合いもあって王都に集まるんだ」


「ゲン担ぎ?」

「安らぎの鳥の近くに教会があって、そこで闘いの神とか慈愛の女神とか奉っているんだけど、商業の神も奉っているお陰かな」


「神ねぇ」



 項目毎に並ぶ場所があり、新規商業受付に並ぶ。周りからは商人同士の情報交換をする声が聞こえて来る。仕入れ、取引、噂など様々だ。


 商人の話を聞きながら順番を待ち、30程ボーッと待っていたらトトの順番がやって来た。受付はメガネが似合うお姉さん。



「いらっしゃいませ。新規商業受付です。登録でよろしいですか?」


「はい、こちらの彼の登録をお願いします。あっ私はこういう者です」


「…ホークアイ様。ご贔屓にありがとうございます。上の者を呼びましょうか?「いや、ここで良いですよ。貴女に対応して貰いたいですから」……ふふっ、ありがとうございます」


(お姉さんニヤニヤしてんな…流石は女たらし)


「登録には種類がございまして、商業展開する場所が、1・王都又は何処かの街のみ、2・国内のみ、3・商業ギルドが展開する地域全て出来る三種類がございます。登録料金は1が金貨1枚、2が金貨5枚、3が白金貨1枚でございます」


「じゃあ3で。年会費ありますか?」


「はい、登録料金と同じです。細かい規定は冊子をお渡ししますのでご確認下さい」



 白金貨を払い、身分証を渡す。直ぐに商業ギルドの身分証を貰ったが、手続き関係は別の受付らしい。


 別の受付に並び、必要な書類を揃えて貰い登録は完了した。


 露店エリアでの販売。テナントを借りて販売が可能になった。自分の店を持つ場合は別途手続きが居るらしいが、今の所はこれで充分。



「ホーク、ありがとう。これで冒険者ギルドに入り浸らなくて大丈夫だと思う」


「ふふっ、トトの為だからね。連絡は安らぎの鳥の受付ですると思うから宜しく。じゃあまたね」



 爽やかに笑うホークアイは、ニグレットの仕事が山積みな様でそそくさと去って行った。


 時刻は夕方。一度白い冒険者ギルドを覗く事にした。



「ここはどんな感じなのかな?」


 白ギルドは赤、黒ギルドと違いワイワイガヤガヤと賑やか…いや騒がしいと言っても良い。


 中は広いホール。そこに受付が10もあり、それぞれ長い列が出来ている。依頼ボードには人集り。



(流石王都だなー。おっ?受付にジルがいる。大変そうだなー…笑顔が引きつってるなー…ざまぁ)


 離れた受付にヤムの姿を確認。頑張れと心にも無いエールを呟き他の受付を見る。


(ミランダさんは居ないな。確か事務作業メインなんだっけ?)



 受付から視線を外し、依頼ボードが空いてきたので眺めてみる。


(引っ越しやら子供の世話とか王都内の依頼もあるなー…魔鉄鉱の採取もあるけど純度が高くないと駄目とか…暇な時に見に来よう)


「おらどけ!」ドンッ。「ん?」急に大きな男がトトにぶつかって来たが…男は弾かれていた。


 ざわざわ。「なんだあいつ」「ドムさんが弾かれたぞ」


「てめぇ…」「いや、ぶつかって来たのお前だろ」


「俺が来たんだから避けろ!お前新参か?あぁ?」


 大柄な熊のような男がトトに絡んできた。明らかに男が悪いが、周りは避けないお前が悪いとばかりに眺めている。


(王都はこういうイベントがあるのかー。武器出しておくか…殴る武器はっと)


≪メリケンサック、ランクD+、豪腕レベル25、攻撃150≫

≪スチールナックル、ランクD+、豪腕レベル20、攻撃140≫


「おう聞いてんのか?表出ろ!」

(これが日常なのかなー)


「出たよ洗礼」「不運だなあの男」「あれ?クソ男?」「ん?ジルちゃん知ってるの?」


 ドムと呼ばれた男が親指を入り口に向ける。ギルド内は暴力沙汰は厳禁なのを守っている様だ。


 白ギルドから出て向かい合うトトとドム。ドムは大剣を持ちニヤニヤとトトを見下ろす。


「俺が勝ったら二度とギルドに入るんじゃねえぞ?それと有り金全て置いていけ」


「ふーん。俺が勝ったら?」

「お前が勝つのは万が一にもねえぞ!筋力増強!」



「ドムさんの筋力増強は岩をも割れるからな。終わったな」「おい、あいつ数無しだぜ?くくっ可哀想に」「数無し冒険者かよ。バカだなー」


 喧嘩だと周囲の者が集まってくる。中にはどちらが勝つか賭けている様子。皆ドムに賭けるので賭けにならないのだが。



「おらぁ!スラッシュ!」

「弾き」_ギンッ!_勢いのある攻撃を拳で弾き逸らす。


 ざわっ。


「あん?横一閃!」

「打ち下ろし」_ガンッ!_横凪ぎの攻撃を打ち落とす。



 その後も次々と攻撃を打ち落としていくトトに、周りは違和感を感じていく。


「なんだあいつ…あの速さの攻撃を弾いてるぞ」「まぐれじゃねえか?」「数無しだぜ?どうなってんだ?ドム!ちゃんとやれよ!」


「終わり?」

「はぁ、はぁ、うるせえ!クソっどうなってんだ?」


(対人戦も大丈夫。あっ、鑑定してないや)


≪ドム、剣豪レベル5、強さ355≫


(オークリーダーぐらいか…もう終わらそう)


「くそ!ダブルスラッシュ!」

「打ち砕き」_ボキッ!_大剣が砕け。

「正拳」_ドンッ!_鳩尾に攻撃を受けドムが吹っ飛ぶ。


「「「おおお!」」」


「ぐ…がっ…」

 パタリと白目を剥いて倒れるドム。

 トトはふぅーっと息を吐き、その場を後にする。


 その場の者達は興奮していた。

 数無しが上級職業を殴り倒したと。


「すげー!なんだあいつ!」「強え!」「数無しなのに!」


(王都は退屈しないかなー)


 夕方の大通りを歩き宿に帰る。


「おかえりなさいトト様。こちらが鍵です。お食事は1階奥に食堂がありますので、そちらでお願い致します」


「ありがとうございます」



 鍵を受け取り2階の角部屋へ。ホールにはお金持ちの家族やら商人が居る。服買わなきゃなーと思いながら階段を上がり210と書かれた部屋に入った。


「うわ…すげえな。流石高級宿…」


 中は思っていたよりも広く、ベッド、ソファー、テーブルと椅子があり、隣の部屋にはトイレと洗面所。そしてお風呂があった。


「おー!やった!お風呂がある!」


 飛び上がる程に喜び、早速お湯が出る魔導具を起動。


 10分程で湯が溜まり、備え付けの物で身体を洗ってから湯に入った。


「あー…生き返る…3週間振りくらいかな?…王都最高だ…」


 暫くお風呂でゆっくりしてから上がり、綺麗な服に着替える。


「黒い服ばっかりだなー…ホークなら服屋に詳しいだろうから聞いてみるか」


 さっぱりした気持ちで部屋を出て食堂に向かう。少し場違いな感じは否めないが、冒険者風の格好をした者も居るので気にしない事にした。


「ようこそ」

「あっ、(どうすれば良いかよく分からねえ…)お勧めでお願いします」

「かしこまりました」


 適当な場所に座りおすすめを頼む。周りを見ると家族連れや商人が談笑している。商談をしている者もいた。


(家族かぁー…恋人欲しいけど…この世界の女性って怖いんだよな)


「お待たせしました。本日は良い素材が入りましたので、こちらをご用意させて頂きました。風狼のステーキでございます」


「あっ、どうも(風狼?)ラファーガですか?」


「左様でございます。パンはお代わり自由ですので。では」


 トトとホークが討伐したラファーガが食卓に上がる。狼を食べる事に抵抗はあるが、ここで出されているので大丈夫かとフォークとナイフを手に取った。



「匂いは良い匂い…食べてみるか…_っ!美味い…臭みもないし身が締まっているのに固くない…流石高級宿だな」


 パンも柔らかく、お代わりをしながらステーキを直ぐに平らげた。


「はぁー…美味しかった…「あっトト。一緒に良いかい?」おうホーク。仕事は終わりかー?」

「なんとか今日の分は終わりだよ。はいこれ、ギルドカード」


 ホークアイが特別枠用のギルドカードを渡してきた。赤いカードでランクがDと書いてある。


「ん?Dランクだけどなんで?」

「あぁ、ラファーガを納品したのと、盗賊も討伐したからね。Dに上がる条件は人を殺す覚悟があるかだから、ついでに上げて貰ったんだ」


「そうなんだ。なんかわざわざ悪いな」

「良いよ。好きでやってるから。あっ、すみませんお勧め下さい「かしこまりました」後は何か報告あったかな?まぁあったら伝えるよ」


 ホークアイも風狼のステーキを食べ、二人でワインを飲みながら談笑していた。



「あぁそうだ。服屋はどこにあるの?」

「東区に沢山あるから見ておいで。他のお店も東区だから。露店もあるから出店してみたら?トトなら許可証あるから露店エリアでいつでも販売出来るよ?」


「お店回ったら検討しておくよ」



 談笑しているが、周りの視線が気になる。ホークアイは有名なので無理もないが、時折聞こえる地味男という単語に精神を削られていた。


 そこに家族連れの子供がこちらにやって来た。金髪幼女がトテトテと来てホークアイを眺めている。


「ホークアイしゃま!ふぁんなんです!握手してくだしゃい!」


「ふふっ、可愛いレディだね」

「……」


 トトに目もくれない幼女は頭を撫でられご満悦。キャッキャと笑い席に戻って行った。


「なぁホーク。守備範囲ってどれくらいなの?」


「…さりげなくアホークって言わないでくれるかな?まぁ愛があれば年齢は気にしないね」


「あの子は?」「行けるに決まってるじゃないか」


「…そうか」


 夜も更け、食堂に人が居なくなって来た時に解散。


 トトは部屋に戻り、ふかふかのベッドの上で横になると直ぐに眠りに入って行った。




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