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流れの武器屋  作者: はぎま
ニーソの街
20/163

盗賊のお宝

  50メートルの範囲を囲む様に点在していたオークの死体を収納し終え、無表情で皆の元に戻る。伸びた前髪で目は隠れているのでその表情は分かりにくいが雰囲気は伝わっていた。



「いやー助かりました!次は私達も頑張りますね!(負のオーラが出てる…ニグ、目を合わせてくれ!)」


「ええ、期待していますよ。ツールさん?ニグさん?」


「いやー、はっはっは!参りましたなぁー!(ホーク…頼んだ…)」


「まっ当然よね。1点アップ」「クソ男も中々やるじゃない。2点アップ」「……」


(なんだあいつら…マジで守りたくねぇ)


 顔が引きつる者による水面下の攻防があったが、トトと受付嬢は知る由も無く出発の準備を終える。


 保存食で軽い朝食を済ませ、一同は馬車に乗り込み進みだした。トトは後方の馬車に乗る。



「すみませんねぇトトさん。ホークは昔から人を試す様な事が多くて…悪気は無いんですよ」


「まぁ良いんですけどね。ニグさんもその姿は仮の姿なんです?」


「ええ、そうですね。お詫びと言ってはあれですが王都に着いたら見せますよ。っとここから盗賊が出ると言われている地域なので気を付けて下さいね」


「はい、索敵とロックオンがあるので、上位職業までなら近付けませんよ」


「…本当に頼もしいですねぇ(レベルが無いと言うが秘密があるのか?)…一緒に組める日を楽しみにしていますよ?」



 ニグの正体は気になるが、王都に着いてからと思い景色を眺める。これから切り開いた森を抜けるそうだ。


 両サイドに広がる森に差し掛かる。街道の幅だけ切り開かれており、森は薄暗い。


 トトは魔銃士のスキル、索敵を発動。すると半径100メートル以内に敵影を感じる。数は10。



「あー、居ますね。仕留めて良いですか?」


「お願いします。あっ、一番強そうなのは1人足だけ潰して残して下さい。ついでなのでアジトを潰しましょう」


「了解しました。ロックオン」


 敵影を確認。ジリジリと近付いている様子。一番遠い者の足を_タタンッ!_撃ち込み_「ヘッドショット」タタタタタッ!_


 次々と消えていく敵影。前方の受付嬢が何事かとトトを見やる。


「何?魔物?」「盗賊だと思いますよ」



 馬車が止まり、トトとニグが降りてツールに説明。ツールが馬車と女性陣の見張りをして、トトとニグが足を撃ち抜かれた者を追う事にした。


「死体は後で纏めましょう。追いますよ」


「はい(人を殺したってのに感情は動かない。これも職業の力か?)左側を真っ直ぐです」



 盗賊目掛けて走る。全速力に近い速度でもピッタリ付いてくるぽっちゃりなおっさんに違和感を感じながら、足の遅い盗賊にたどり着く。


 盗賊は足を抑えながら必死に逃げているが、歩くより遅い。髭もじゃのおじさんだった。


(そういや、他の人を鑑定した事無かったな…鑑定)


≪ギル、剣士レベル38、強さ81、罪人≫


「くそっ!痛え!何なんだお前らは!」


「名乗る程の者じゃぁありませんよ。アジトの場所を吐いて貰いましょうか」


「はっ、誰が言うか!」


「トトさん。私に任せて貰って良いですか?」


「あっ、お願いします(え?拷問するの?)」


 ニグが盗賊に近付き、ニコニコと拷問していく。


 叫ぶ盗賊にトトは引いていた。


(おっさんやべえな…あっそこ痛い!うひゃー)


 やがて、楽にしてくれと叫ぶ盗賊からアジトを聞き出し、ニグは盗賊を引き綴りながらアジトへと歩きだした。



「ニグさん慣れてますね…俺にはハードル高いかな」


「人には得手不得手がありますからねぇ。ホークも拷問は嫌いで私に任せて来ますし…っとここですね。トトさん何人居ます?」


「索敵…5人ですね。全員中に居ます」



 森の奥に大人が余裕で入れる洞窟があった。その中に人の反応がある。洞窟なんてベタだなーと思いつつ、妖刀毒沼も出しておく。


「その武器、刀ですか?それに呪い武器に近いですけど大丈夫なんですか?」


「まぁ…妖刀ですからね。怨念の一つや二つありますよ」


≪妖刀毒沼、ランクC+、侍レベル30、攻撃260、毒付与≫


 左手にデザートイーグル、右手に毒沼を装備。ニグは素手で大丈夫らしい。


 見張りは居らず、洞窟に入る。少し歩くと二手に別れた道。両方に反応があるのでニグは左、トトは右へ。


 ゴツゴツとした道を進み、角を曲がる所で止まる。


(右は二人か。そんなに強く無い感じだなー)


 そっと覗いてみる。二人の盗賊が酒を飲んでいる様子。デザートイーグルの標準を合わせ、「ヘッドショット」_タタンッ!_「ぐわっ!」「ぎゃっ!」仕留める。


「ふぅ、終わった。ニグさんの所へ行こう」


 物色は後にして、ニグの所へ向かう。来た道を戻り、左の道へ。


 丁度辿り着く所で盗賊の反応が索敵から消える。


「ニグさん。こっちは終わりましたよ」


「おや、早いですね。こいつがボスなんですが、賞金首でしたので報償金が入りますよ。やりましたね」


「へぇー、いくらなんです?」

「狂戦士の賞金首で白金貨5枚です。とりあえず物資等あるので回収お願いします。ここの物はトトさんが全部貰って良いですから」


「え?良いんですか?」


「ええ、盗賊を討伐した者が全て貰えます。運ぶ手間もありますし、トトさんの功績ですから」


 ボスが居た部屋に物資等が積まれている。保存食、小麦粉等の食料、お酒。商人から奪ったであろう書物や反物、属性石、武器防具。割りと溜め込んでいた様で色々出てくる。日用品、照明の魔導具、送風魔導具、時計の魔導具、宝石、インゴット、お金。


「凄いお金持ってますね。光金貨って初めて見ました」


「私は収納の容量に驚きですね。その容量に指輪型は国宝級ですよ?」


「え、まじすか…(やり過ぎたかな)秘密ですよ」


 ボスの報償金はニグ、他は全部トトが貰って良いと聞き感謝を伝える。お店の開店資金が出来ましたねと言わんばかりの視線に笑顔で答えた。


 道を戻り、トトが担当した右の道へ行く。盗賊の死体を確認してもらい、報償金は無いので埋める予定だ。寝泊まりしていた場所なので、毛布等あったがいらないので放置。武器防具を回収する。


 処理を終え、アジトを出た二人は馬車の元に向かう。


「今回は居ませんでしたが、盗賊に捕まった商人等がいると物資について交渉等もありますから気を付けて下さい」


「了解しました(落ち着いたら戦利品の確認かなー)…あれ?」


「どうしました?」


「馬車の方に大きな反応?「きゃああぁぁ!」_っ!ニグさん!急ぎましょう!」


「ええ!」


 女性の叫び声が聞こえ、トトとニグは急いで戻る。ニグは全速力で走り先に行ってしまった。トトは遅れながらも馬車の元に到着。


「グオオォォ!」「待っていましたよ!ニグ!トトさん!」


 闘いの音が響く。


 前方の馬車の中で気を失っているジルとヤム。ミランダは二人を守る様に寄り添い、武器を構えている。


 後方の馬車は横転していた。


 ツールは馬車を守る様に立ち、両手に持つ武器で魔物の攻撃を受け流す。



「トトさん!牽制して下さい!「はい!」ホーク!上位種か!」


「ああ!やっと反撃出来る!ニグ!馬車に乗って彼女達を!」


「わかった!気を付けろよ!」


 ニグは馬車まで走り御者席に飛び乗る。馬に鞭を打ち走らせた。


 トトは逃げる馬車を追おうとしている魔物に「ヘッドショット」_タンッ!_攻撃「グオオ!」意識をこちらに向ける事に成功する。


 馬車は遠ざかっていった。



「グルルルル!」


「悪いですねぇトトさん。道連れみたいになってしまって」


「いえ、仕方ないですよ。ボーナス下さいね。ところでコイツはなんです?」


「コイツはクラス3ウェアウルフの上位種。オークがあんな所に居たのはコイツが原因ですね」



 緑色の体毛に包まれた狼男。


 その大きさは4メートルを超え、引き締まった身体。


 ギラリと光る長い爪。獰猛な牙がその強さを物語っている。



「クラス4、カルネージ・リカントロープ…」


「うへぇ…クラス4かよ…」


「その変異種ですかね。本来灰色の体毛ですから」


「ああ…嫌な予感」


「確か異名は…」


 突然強風が吹き荒れる。


 魔物から発せられる魔力の風。


 木々は揺れ、緑の葉が落ちていく。


強く吹く風(ラファーガ)ですね」


「はぁ…そうですか…勝てるんです?」


「本来なら勝てますよ。ただ…実は私…」


「…なんです?」


「今、ギックリ腰なんですよ」


 テヘッと笑うハゲのおっさんを。


 本気で殴りたいと思った瞬間だった。


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