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流れの武器屋  作者: はぎま
第二次女神大戦
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もう、思い残す事は無い…

 神結界の外では、ラグナが復活した瞬間を目の当たりにした女神達が手を取り合って喜んでいた。


『ラグナん…良かったなぁ…』

『やっと、揃ったわねぇ。私達』

『ほんと…凄いわね、あの男は…』

『涙が…止まらないぜ…』


 もちろんルナライトが一番喜んでいるのだが、目の前の現実を受け入れるのに時間が掛かり茫然と佇んでいる。


『……』


『ルナちん、行ってきや』

『ルナ、ここは任せてぇ』

『ラグナも待っているわよ』

『ほらっ、行ってこい!』


『うん……ありがとう』


 ルナライトが神結界に穴を開け、闘いの中心へと走っていった。

 女神達は微笑みながらルナライトが走っていく様子を眺め、神結界を張り直す。



「はぁ…流石トトさん……この未来は知らない。次の未来が視えるまで様子見かな」

 その様子を目を細めて眺めるトリスは、ため息を付いて隣に居るアイリスをチラリと見る。


「ラヴィお姉ちゃんだ…本当に…生きていたんだ…」


 アイリスもラグナが復活した事を喜んでいた。

 手に持っている氷の御守りをギュッと握り締め、フラフラと神結界に近付き女神達の元へいく。


「……女神様、私もあの場所へ行きたいです」

『それは難しいわねぇ。力の余波だけで死ぬわよぉ』

「それでも…ラヴィお姉ちゃんに会いたい…です」

『ラヴィ? あぁ…なるほど』


 女神達はアイリスの加護を視て、どうする? と目配せをするが、中に入ると死ぬ確率が非常に高い。入れたら絶対トトに怒られる…それはもう怒られる……怒られたくない女神達は同時に首を横に振った。

 落ち込むアイリスに、少し気まずい空気になったところでトリスが女神達に近付いて来た。


「女神様、良いんじゃないですか? アイリスさんは死にませんよ」

『いや、死ぬだろ。神結界が壊れる程の攻撃だぞ?』


「問題ありませんよ。トトさんが絶対に守りますから」


 トリスが自信ありげに宣言すると、まぁ確かにそうだなぁ…と、女神達は納得するような雰囲気に。


『まっ、ええんと違う? 星読みの聖女トリスちゃんが言うんやから死なんやろ』


『はぁ…知らないわよぉ。泰人君って怒ると容赦無いから』

『ヴェーチェもボコられたしなぁ…』

『えー、次は殺されるじゃないのさ…』


 女神達は渋々神結界に穴を開ける。

 アイリスが一礼し、穴を潜って走っていった。

 そして、再び穴が閉じられる。


『あら、てっきり貴女も行くんだと思ったけど…』


「あぁ、私はいつでも行けるのでお気になさらず」


『…なぁトリスちゃん。何か企んでいるんか?』


「いえいえ、企んでいませんよ。ただ…トトさんの事を想っているだけです」


 トリスは薄く笑い、スタスタと神結界の前に立つ。

 そして、祈るように目を閉じて……


「……視えた」



 ______




 トトとラグナが見詰め合っている近くでは……


「くひひっ、おめでとう。そろそろ限界だお」


 閻魔の結界が限界を迎えていた。

 ピシピシとヒビが発生。

 いつまでも見詰め合っていると取り返しの付かない事態に陥るので、また後でとアイコンタクトを交わして銀河に向き合う。


「閻魔、ありがとう。ラグナ、闘うぞ」

『初めての共同作業だね! 泰人…左腕は?』

「あー…そうだな」


 トトが思い出したように収納から禁薬・エリクサーを取り出し飲み干す。

 すると左腕の部分が光に包まれ生身の腕が再生した。


 トトは久しぶりの感覚に、口元を弛ませながら左手を動かし確認。

 ラグナも嬉しそうに微笑み、トトの左手を持ち薬指を指でなぞっている。

 またイチャイチャしだした二人に閻魔が負のオーラを浴びせているが、二人の世界は壊れない。


『泰人、女神のペアリングは能力共有の力があるんだ。だから着けて』

「へぇー、能力共有は凄いな」


 トトが女神のペアリングを取り出し、ラグナの左手人差し指に嵌めようとしたが、左手が素早く動き薬指に嵌められる。

 そして気付いた時にはトトの左手薬指に指輪が嵌められていた。


「ねぇ…取れないんだけど……」

『そうだね』

「謀ったな」

『能力共有は本当だよ』


 ラグナの微笑みにトトは許してしまいそうになるが、物事の順序を語ろうとした所でルナライトが走ってきてラグナに飛び付いた。


『姉さーん!』

『ん? ルナ!』

『姉さん姉さん姉さん!』


 ルナライトがラグナを抱き締め、やっと会えた喜びを爆発させている。

 ラグナもルナライトの頭を撫で、再会を喜んでいた。

 その時…


「やぁすとー! 助けてー!」


 タケルがボコボコになりながら、放物線を描いて飛んでいく。

 ラグナはルナライトにまた後でと告げ、トトの隣に立つ。


「タケルは…そろそろ不味いな。本気で行くぞ!」


『うん! アレやって!』


「そのつもり。閻魔!」


「きひっ、私にも妹が出来たのか…」


 嬉しそうに揺らめきながら、閻魔がラグナの元へ。

 トトがラグナと閻魔の肩に手を置き…


「行くぜ、俺の最高傑作。強制武神装・裏世界の女王!」


 ドオォオォオ!__

 ラグナと閻魔に黒い稲妻が落ち、ドーム状にエネルギーがほとばしる。

 強大なエネルギーの波動に、空間がピキピキと軋んでいた。



『やっ、泰人…姉さんは悪神の力を使って大丈夫なのか?』


「大丈夫。俺と閻魔が制御してんだ。ルナもラグナと一緒に闘うなら槍貸してみ」


 ルナライトが神槍・ルナハートをトトに渡す。


≪白神槍・ルナハート、ランクGOD、攻撃8760、魂の保存≫


「これは…そうか。ラグナを助ける為に作った槍か…」

『泰人のお蔭で使わずに済んだ…ありがとう』


 収納から消滅兵器・Ωを取り出し、神槍と合成。


≪消滅神槍・ルナハート、ランクGOD、攻撃XX、消滅神技・魂の保存・ルナカイザー≫


「攻撃力測定不能だから三万くらい行ってるだろ。ほれっ」

『ありがとう。この恩は必ず返す』

「期待してるよ。俺はタケルの様子を見てくる」


 ラグナを包んでいたエネルギーが収束。

 ウエディングドレスが黒く染まり、妖艶な美しさを醸し出す。


≪裏世界の女王・ラグナレヴィア、ランク外、攻撃XX、魔法攻撃XX、

 破壊・混沌・邪悪・零魔法・反物質・概念攻撃・超再生・裏禁術・裏奥義・能力共有・防御無視・神特攻・錬金術・分離・幸運・武器召喚≫


『姉さん…綺麗…』

『ふふっ、ありがとう。ルナ、行こうか』


 トトがタケルの元へ向かい、ラグナとルナライトが銀河に挑んでいった。

 ラグナとルナライトが銀河と激しい闘いを行っている様子を見ながらタケルの元へ到着したが、トトがよろけて膝を付き…「ごふっ…」血を吐いて胸を押さえる。


「…まずい…な…痛いどころじゃねぇ……タケル、大丈夫か?」

「やす…と。ちょっともう…戦えないかも…」


 お互いボロボロの状態に、フッと笑いが込み上げる。

 トトは血を吐き震え、タケルは身体に無数の穴が空いている。

 限界を超えて戦い、まともに戦える状態ではなかった。


 先ずはタケルを錬金術で治し、トトは自分に零魔法・痛覚ゼロを発動する。

 タケルの身体は治ったが、しばらく動ける状態ではなく横たわってトトを見ている。


「はぁ…はぁ…思い残している事が…後一つあるんだ」

「なんだい。世界を救う事?」

「いや…それは、女神達の仕事だ。まぁ…怒らず聞いてくれ」


 収納から、複雑な魔法陣が刻まれた球体…転移武装・テレポートリップと黒いカード…次元同盟パスを取り出した。


「泰人…何をする気だ?」

「……強制転移武装」


 タケルが魔法文字の刻まれた紫色の全身鎧に包まれ、動こうとするが動けずもがいている。

 更に黒いカードを転移武装に合成。


≪転移武装・テレポートリップ、ランクSS+、攻撃0、次元転移・想見転移・地球行き≫


「駄目だ…駄目だ駄目だ! 一緒に帰るって言ったじゃないか!」


「先に行っててくれ。後で行くからさ……転移したら、俺の家に着く筈だから…俺の姉ちゃん、戸橋遥に会ってくれ。そしたら、婚約者の所に連れていってくれるから」


「何言っているんだよ! 泰人も一緒に帰るんだ!」


 タケルがトトに手を伸ばし、トトはタケルの手を握手するように握った。


「タケル、お前は充分戦った。だから、幸せになれ……楽しかったよ。兄貴が出来たみたいでさ」


「泰人…」


「また、会おうぜ…地球でな。強制次元テレポート」


 タケルの下から紫色の魔法陣が現れ、トトがタケルの手を離して一歩下がる。

 全身鎧のお蔭か、タケルの表情は解らない。

 解っていたら絶対に泣いていたが、トトは最後に笑顔を向け…バシュンッ__タケルは転移していった。


「…ありがとな」


 深呼吸をして、よろよろと戦いの音がする方向へと向かう。




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