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流れの武器屋  作者: はぎま
第二次女神大戦
159/163

あぁ…しくじった。

 

『くくっ……素晴らしい。わざわざ身体を合わせた甲斐があった』


 黒い柱が収まり、銀河は身体中に亀裂の入った状態で無機質な顔を歪ませ笑顔を見せる。

 トトが想像以上に悪の力を使いこなしていた。

 自分よりも。


「ダメージはある…か。お前は次元世界の宇宙になってどうするんだ?」


『遊ぶのさ』

「遊ぶ…碌な事じゃねえのは確かだな。まぁ良いや。聞いても仕方ない」


 トトが咎星剣の切っ先を銀河に向ける。

「不幸ダメージ」

 ドクンッ__銀河の身体が跳ね、少し驚いたようにトトを見据える。

 謎の攻撃を受け、ポロポロと身体の欠片が落ちていた。


『何を…した』

「俺が受けた不幸をダメージに変える…概念攻撃」

『それは…知らない攻撃だ。無効結界』


 銀河が虹色の光を取り込む。

 トトが再び…「不平等ダメージ」

 概念攻撃を放つと、銀河の身体が跳ねる。

「敵意ダメージ」

『くっ…何故無効化されない…』

「理不尽ダメージ」


 バキン!__トトが受けた理不尽をダメージに変えた所で銀河の腕が落ちる。

 そして、

「応龍奥義…」

 銀河の背後から金色のオーラを纏ったタケルが駆けて来る。

 一瞬トトとタケルの目が合い、お互いに呆れた視線を交わす…

 タケルは応龍神剣を天に向け、力を解放した。


「龍神天勝!」

 金色の軌跡が銀河を通り抜け、銀河の翼が落ちる。

 更に銀河の左肩から右脇腹にかけて両断。

 ズルリと上半身が落ちた。



「…タケル、龍神降臨は使うなって言っただろ」

「泰人に言われたく無いね」


 移動してきたタケルが満面の笑みで右手を上げ、トトも嫌々ながら右手を上げる。

 パチン。ハイタッチを交わし、銀河へと向き合った。



 銀河は既に元の状態へと戻っている。

 身体の一部が落ちても、個々で活動する事が出来るので再生は早い。だから攻撃し続ければ好機があると判断している。


「作戦は?」

「ガンガンいこうぜ」

「了解」

「身体が千切れても錬金術で治してやるから時間を稼いでくれ」


 タケルの身体はホムンクルス。

 トトの錬金術で回復と再生がこなせるので、暗に捨て身で行けと言うトトにタケルが苦笑しながら応龍神剣を構えた。


『龍神の力か。偽りの身体では長くは持たないぞ』


 そんな事は解っているとばかりに、タケルが縮地を使い一瞬にして銀河の眼前に移動。

「龍神天舞!」

 金色の軌跡を縦横無尽に駆け巡らせる。

『甘い』

 銀河の身体がブレる。

 超高速の斬撃が至近距離でも当たらない。

 焦るタケルは更に斬撃速度を上昇させる。

 一秒間に数十回もの斬撃を放つ程の速度だが、全て躱されていた。


「当たら…ない」

『殺気で解る』


 銀河が手刀を繰り出しタケルが間一髪で避けるが…「__ぐぁっ」蜘蛛のような翼で両腕を貫かれた。


 トトがその隙を突き銀河の後ろに転移。

 銀河の頭に手を添える。


「お待たせ。裏魔法・シンクロニシティ」

『何を…まさか』

「……見付けた。分離!」


 銀河の頭から光る玉のような物が現れ、トトが収納から出したソウルキーパーにそれを入れた。


 その瞬間…「ごふっ…」

 翼の一つがトトを貫く。


 それでもトトは黒い仮面の中で不敵な笑いを浮かべる。


≪ソウルキーパー、ランクSS、魂の保存・ラグナレヴィア≫


「ははっ…ざまぁみろ…」


『ぐっ……奴は私の奥底に押し込んでいた筈…何故分離出来た…』


「俺の助けたいという想いと…ラグナの生きたいという想いが合致した結果……まぁただの偶然だ。不幸ダメージ」


 ドクンッ__銀河の身体が跳ね、翼の拘束が緩んだ隙にタケルを掴んで後退。

 錬金術でタケルの両腕を治した。


「あー…痛かった……間一髪助けてよ」

「お前はヒロインじゃねえから無理だ」

「それ理不尽。で? どうするの?」


「作戦続行。一分よろしく! 零魔法・ダメージゼロ! 予備動作ゼロ!」


 タケルに零魔法を付与。

「了解! 縮地! __龍神天舞!」

 縮地を使い銀河との距離を詰め再び連続攻撃。

 予備動作無しの攻撃で全て躱されていた剣閃が当たり始める。


『ギャラクシー…』「__させないよ!」


 魔法を発動するところでタケルが銀河の腕を斬り落とす。

 斬り落ちた腕から無数の星が飛び出して来るが、タケルが全て斬り落としていく。


「あと少し! あと少しもってくれ僕の身体! 一分一秒でも長く!」


 タケルの命の炎が燃えるように、金色の光が輝きを増していく。



「…タケル、ありがとう」


 トトがソウルキーパーに入っている光の玉を見詰める。

 ゆらゆらと揺らめく儚い光。

 銀河に全てを持っていかれ、ラグナに残っているのはただの魂だけだった。


「ラグナ、俺はずっと考えていた……ラグナを復活させる方法を」


 ラグナの加護を持つアイリスを器にして復活させる方法があった。トリスから聞いた未来の一つでもある…だがそれは選ばない。


 武神装・裏世界の王を解除。

 元の状態に戻り、閻魔に結界を張ってもらう。


「きひひっ、零結界」


 結界の中で身に付けていた天使と悪魔の剣が入った百連バレットベルトを外し、ソウルキーパーと合わせる。


「武器作成」


≪天獄剣・ラグナレヴィア、ランクGOD、天獄ーー、攻撃ーー、天使化・悪魔化≫


 レベル百以上の剣が百本合成された白と黒の神剣。


「先ずは軸……お前に無いものは、身体と神気」


 ラグナレヴィアの名前を確認し、神鳥銃ルージアと合成。

 白と黒のメタリックな色の剣。


≪天獄鳥剣・ラグナレヴィア、ランクGOD、天獄鳥ーー、攻撃ーー、防御無視・神種特攻・天獄鳥召喚≫


「神獣の力で神気に馴染みやすいように…お次は」


 トトが左腕の義手…金魔業龍拳を外し、天獄鳥剣と合成。

 真っ黒い剣に変化。


≪天獄金鳥・ラグナレヴィア、ランクGOD、黄金滅主ーー、攻撃ーー、防御無視・神種特攻・天獄金鳥憑依・錬金術・分離・幸運≫


「俺の力が通じやすい左腕…錬金術の効果を付けて…これで身体を作る」


 器が無いなら作ってしまえば良い。

 トトが収納からラグナレヴィアちゃん人形・ウエディングドレスバージョンを取り出し…


「さぁ…お目覚めだ…合成!」


 真っ黒い剣とラグナレヴィアちゃん人形が合わさり、白と黒の光が溢れだした。

 徐々に光が人型を成していく。


「気分はどうだい? 俺の女神様」


「…最高」


 トトが右手を差し出すと、白いレースの手袋…ウェディンググローブを嵌めた手がそっと右手を掴む。

 ウェディングドレスの姿で現れた黒髪の女性が、全ての者の視線を釘付けにした。


「悪いな。手作りの身体で」

「これ以上無いプレゼントだよ…泰人」


 ヴェールから覗く黒い瞳はトトを真っ直ぐ見詰め、溢れる涙が零れ落ちている。

 自由に動く身体を手に入れ、ラグナは興奮するように頬を赤らめていた。


「まだ終わっちゃいないぞ」


 泣くのはまだ早いとばかりに、収納から虹色の玉…復活の宝珠を取り出しラグナの胸に当てる。


≪復活の宝珠、ランク外、失ったものを復活させる宝珠≫


「泰人…駄目だ…それは泰人の為に使う物だ」

「もちろん、俺の為さ。復活の宝珠よ、復活させるのは…ラグナレヴィアの神格」


 復活の宝珠が起動。

 虹色の光が溢れ、ラグナを包む。


『くくっ…神を創るか…戸橋泰人』


 新しい女神が誕生した。


≪天獄神ラグナレヴィア、強さXX、防御無視・神特攻・錬金術・分離・幸運・武器召喚≫


『泰人…馬鹿…なんで私に使った…』

「…」


 ラグナがトトを睨み付けるが、トトは何かに気付いたように深いため息を付いている。


 この間にも閻魔は攻撃を受け続けているのだが…

「きひっ、まじやべ」

 トトは混乱してそれどころでは無かった。


『泰人?』

「あぁ…くそ…しくじった」

『なっ、何か問題あったのか?』

「あぁ…大問題だ。ラグナ、俺の呪いを解いてくれ」


 ラグナの女神人形を合成してしまった事に、トトは後悔している。

 女神人形を加工すると、呪いが降り掛かる事を忘れていた。


『呪い? ……ふふっ…一から十まで言ってくれないと解らないなぁ…』

「……ラグナの人形を加工しちまったせいで……」

『せいで?』

「……ラグナが好きで好きで堪らない。だから早く呪いを解いてくれ」


『……ふふっ…絶対嫌』


 ラグナの口元が弧を描き、トトが遠い目でそんなラグナも可愛いな…と、呪いに侵されていた。


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