裏世界の王。
女神達の神結界に囲まれ、隔離された空間。
トトから発せられる悪気が外に漏れないお陰で、全力で闘える。
≪裏世界の王、ランク外、攻撃XX、魔法攻撃XX、破壊・混沌・邪悪・零魔法・反物質・概念攻撃・超再生・裏禁術・裏奥義≫
「…零魔法・ダメージゼロ」
透明な膜がトトを包み、ダメージを無効化させる。
そして、咎人の剣、核星剣ルゼルを合成。
少し黒ずんだボロボロの剣が出来上がった。
≪咎星剣、ランク外、咎人、攻撃9999、神格破戒・再生・メガエナジー・増幅≫
ユラユラと揺れながら、銀河に向かって歩く。
足取りは重いのか軽いのか解らないが、迷いの無い歩きで銀河の前まで到着。
『くくっ、表と裏の王か。決して交わる事の無い存在が闘う……対消滅でも使えば決着が着きそうだな』
銀河とトトの背丈はそう変わらない。
黒く煌めきを持つ正のオーラと、黒く淀んだ負のオーラ。
何も知らない者が見たら確実にトトが悪だと思ってしまう程に、対称的な力を持っていた。
「こんなところで反物質なんて使わねえよ、挨拶代わりだ…」
トトが真っ黒い左手から白黒の斑模様のエネルギー…破壊の力を出現させる。
「封印解除零式・破壊の暴走」
破壊の力を解放。
バキバキバキバキ!__
空間ごと壊す無差別の破壊攻撃が放たれる。
破壊の力が銀河に当たり身体を破壊するが再生していく。
腕、脚、胴体…頭をも破壊するが一瞬で再生。
銀河は無機質な表情を変えずに攻撃を受け続ける。
『使いこなすか…アストラル・グラビトン』
ズンッ!__破壊のエネルギーが超重力で押し潰される。
トトも重力を受けるが平然としながらどす黒い魔法陣を展開。
「禁術・混沌変異」
トトの肩から黒い大蛇が生まれ、
キシャァァ!__
銀河に噛み付き巻き付いていく。
トトがユラユラとした足取りで銀河の眼前に移動。
無造作に咎星剣を振り下ろす。
黒い大蛇もろとも切断したが、
ガキンッ!__寸前で銀河の翼に阻まれた。
「やっぱりこの剣は怖いか」
『神格は有限だからな』
トトが咎星剣を引き、上半身のバネを使って渾身の突き。
銀河が身体を捻り手刀を繰り出す。
ダメージゼロを突き抜けトトの胸を斬り裂くが、超再生の能力で元に戻る。
そのまま怯む事なく銀河の伸びた右手を斬り落とした。
『神秘技・ギャラクシースターズ』
ドゴゴゴゴ!__
落ちた右手から無数の星が飛び出てトトに連続して衝突。
トトの身体が空高く跳ね上げられた。
「身体が…重力付与か…」
銀河は右手を拾い上げて右腕に付けると、空を指差しその指を振り下ろす。
『神魔法・ギャラクシーコメット』
夜空に虹の環が出現。
環の中心から出てきた虹色の流星が空中に跳ね上げられたトトに衝突。
ドゴォオオ!__
轟音と共に虹色の光が大地に飛び散った。
ドサッ__トトが流星に撃たれ無防備な状態で墜落。
「強えなぁ……」
神結界外から叫び声が聞こえるが、トトは聞こえない振りをしながら夜空に浮かぶ虹色の環を眺める。
身体はボロボロ……しかし高速で再生し、ユラユラと立ち上がった。
腕を組む銀河の表情は相変わらず無機質で、身体が力に馴染むように段々強くなっている事が解る。早く仕留める事が一番だが、トトは中々上手くいかない現実に仮面の中で苦笑していた。
『御主はなぜ闘う? どう転ぼうと御主の居場所なぞ無いというのに』
「…確かに俺の居場所は無い。元々…この闘いが終わればこの世界を去るつもりだったからな。闘う理由は…この世界を好きになってしまっただけさ」
トトが空を見上げながら、どす黒い立体魔法陣を展開。
魔法陣から濃い紫色の液体が滴り落ちている。
「…神級邪悪魔法……」
銀河も上空に上がり、鮮やかな虹色の光を放つ立体魔法陣を展開。
夜空を照らす虹色が、幻想的な光景を映し出す。
『気が合うなぁ。神級魔法…セイクリッドフォース・ジ・ヘヴン』
カラン__カラン__
天界から鐘の音色と共に聖なる光が降り注ぐ。
空を見上げ、その様子を眺めるトトは地の底から這い出るような力を召喚していた。
「…ダークネスフォース・ジ・アビス」
オォオォォォオ!__
深淵から這い上がる暗黒の力。
聖なる光と衝突し、浄化と侵食の鬩ぎ合いが始まった。
『人を超えるか…戸橋泰人』
銀河が更に二つの立体魔法陣を展開。
聖なる光を重ね、力が倍増していく。
聖なる光が強くなりトトの身体が浄化され始めた。
それでも動じずトトも立体魔法陣を二つ展開。
「神級破壊魔法…ジェノサイド・ゾーク。神級混沌魔法…カオス・ディザスター」
バキン!__バキン!__
ガラスが割れる音が響き聖なる光が破壊されていく。
更に混沌のエネルギーが魔法陣から溢れだし銀河を呑み込んでいく。
「裏奥義……」
どす黒いエネルギーの球体となった銀河に向けて咎星剣を構える。
咎星剣から黒いオーラが溢れ出し、共鳴するように混沌のエネルギーが荒れ狂う。
「神殺し」
ゆっくりと咎星剣を振り下ろした瞬間…
ドゴォォオ!__
天まで届く黒い柱が銀河を貫いた。
攻撃の余波で神結界はひび割れ、バキバキと割れていく。
女神達が抑えきれない程の、神格を壊す咎の力が暴れ狂っていた。
「…はぁ……もっと、力を……」
______
神結界の外。
集結した女神達が抑えている位置で、タケルは戦況を見据えながらトトには届かない声を出していた。
「泰人! もうこれ以上は無理だ!」
何も出来ない自分に腹が立つ。
ただ見ているだけなんて耐えられなかった。
東、西、南位置から戦闘に参加したメンバーが集まってきている。
ノワールとノーレンはトトが無理をしている状況に涙し、ニグレットとミランダは唇を噛み締め戦況を見据えている。
リンダはへたり込み茫然と闘いを見詰め、ホークアイは悔しそうに拳を握っていた。
アイリスは落ち込んだ表情で悔しそうにしている。
トリスは焦った表情で落ち着かない様子だった。
その時、黒い柱が上がり神結界にひび割れが出来る。
「__っ! みんな! 伏せろ!」
バキバキバキバキ!__
神結界に大きな亀裂が発生。
『直ぐに結界を張り直す!』
『まだ行けるぜ!』
『任せてぇ! 神結界!』
『いくで! 神結界!』
『神結界! ……え?』
女神達が神結界を張り直し、なんとか持ち直したところで…ヴェーチェが呆然と立ち尽くす。
亀裂から神結界内に入り込んだタケルの姿があった。
「……ヴェーチェ、ごめん。約束は守れそうに無い」
『タケル、駄目だよ……戻って来て! 神結界に隙間を作るから!』
「いや、もう決めたんだ。僕は泰人を独りに出来ない。泰人は命を削って闘っているのに…見ているだけなんて耐えられない!」
タケルが応龍神剣を掲げ、力を解放する。
「__龍神降臨!」
タケルはヴェーチェの呼び止める声を振り切り、金色のオーラを纏って駆け出した。