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流れの武器屋  作者: はぎま
第二次女神大戦
156/163

武神装。3

 

「おっ、間に合ったなー」


 消滅兵器片手に転移した先…悪神の西位置では黒いドラゴンが大きな口を開け、黒銀色のエネルギーを溜めている場面。


≪核星竜・ムドゥイン、クラス外、強さーー≫


 後ろを向くと、疲れきっているフラマフラムと座り込んで息切れしているノワールとミランダ。


 アクアマリンの所でゆっくりし過ぎた自分を少し責めつつ、話は後とドラゴンに消滅兵器を向け、起動。

 激しい吸引音の後…ボタンをポチッと押す。

 キュィイイイ!__

 巨大なレーザービームが放たれ、黒いドラゴンの口に衝突すると黒銀色のエネルギーが暴発。

 ボオォオオン!__

 大爆発が起きた。


「お待たせしました。さぁ、フラマフラムさんも変身しますかぁ…今までありがとな、爆炎」


 焦熱の竜斧を取り出し、返事を聞く前にフラマフラムへと近付き神剣・フラムブレイドと合成。


≪神麗斧・焦熱炎斧、ランクーー、焦熱神王ーー、攻撃ーー、焦熱大王・神炎技・麗紅・綺羅綺羅≫


「強制武神装・焦熱の麗神!」

『えっ…ちょ…』


 深紅の光が立ち上ぼり、フラマフラムの姿を変えていく。

 無事武神装が成された事を確認して転移を起動。


『これは…凄い…』

「フラマフラムさん、その武器には助けられてきたので…大事にして貰えると嬉しいです」

『…あぁ…もちろんさ。僕が最高のお礼をしてあげるから…死ぬんじゃないぞ。やすキュン』

「くっ…僕っ子だと…期待しています!」



 バシュンッ__

 悪神の南位置へと転移。


 周囲を見渡し、状況を把握。

 虹色の羽を持った巨大な蝶が空を旋回し、赤、青、黄、緑と様々な色の鱗粉が飛来。

 ヴェーチェが帝都に鱗粉が行かないように結界を張り、タケルがヴェーチェの前に立ち鱗粉を弾いている。

 戦力になる者は鱗粉を狙い魔法攻撃を放っていた。


≪核星蟲・メギドバタフライ、クラス外、強さーー≫


 鱗粉が大地に触れると、色によって効果が違う。

 赤なら炎が巻き起こり、青は大地を溶かし、黄色は石化、緑は切り刻まれる等様々。

 周囲の殻獣を巻き込みながら悠然と飛ぶ神蝶や幻獣と呼ばれる異次元の存在に、為す術が無い状況。


「こりゃ…災害級の魔物だなぁ…状態異常とかクラス外で一番厄介だし」


 10センチ程の黒い鱗粉を左手で掴み、まじまじと見てみる。


≪黒死の鱗粉、致死毒≫


「うーん…効果がエグい…仕方無いな」


 トトは神鳥銃を取り出し、「フルロックオン」

 上空に向けて引き金を引く。

 シュパパパパ!__

 細かいレーザーが鱗粉を貫いていく。

 次々と四散していく様子を眺め、ヴェーチェの前に立つタケルの元へ。


「ようタケル。楽しそうだなー」

「そりゃもう最高に楽しいよ。ここが最後かい?」

「まっそうだな」


 タケルの後ろでトトを警戒しているヴェーチェをチラ見。

 なんとか鱗粉から帝都を守っている様子だが…かなり辛そうにしている。


「おいヴェーチェルネード、その鈴貸せ」

『…これだけは解る。私にだけ態度が悪い』


「あぁ? 早く寄越せや。いつまでもタケルを盾にしてんじゃねえよ」

『……性格悪いって言われない?』


 ヴェーチェが緑色の鈴をトトに渡す。

 トトは収納から天王弓・ウェザークイーンを取り出し、ヴェーチェベルと合成。

 緑色の指揮棒が出来上がる。


≪天神杖・ヴェーチェルタクト、ランクーー、天神ーー、攻撃ーー、天の理・神速領域・征天空≫


「ほらっ、早く仕留めねえとぶっ飛ばすぞ」

『なんだろう…凄くお礼を言いたくない』


「いらねぇよ。自分達の世界なら自分達で守れや」

『くっ…正論……終わったら…もう一度闘ってくれない?』


「あぁ良いぜ、ボコボコにしてやる」


 トトはフッと笑いながら、天神杖の触れる。

「強制武神装・お天気女神さん」


 ゴオォォ!__緑色のオーラが立ち上ぼり、強い風が巻き起こる。

 再び降って来た鱗粉がヴェーチェの風で四散していく。


『なに…これ…強すぎ…』

「まぁ、使いこなしてみろや…それと…」



 ボオォオオン!__

 トトが何か言おうとした時に、西位置の方から爆音が発生。

 巨大な火柱が上がっていた。

 黒いドラゴンが焼け落ちていく様子が見える。


「ひゅー、豪快だねぇ。北、東も大丈夫。中心は…そろそろ俺の女神様がお目覚めかぁ……」


「…泰人」

「ん? どした?」

「……あの力を…使う気かい?」

「あぁ…そうだなー。俺が堕ちたら殺してくれ」


「…出来る訳無いじゃないか」

「堕ちたら、だよ。最善は尽くすさ」


 最善。それはトトにとってなのか、世界にとってなのか…

 戦況が少し落ち着き、ヴェーチェが遠い目をしながら核星蟲の元へ向かった。


 タケルと少し話していると、背後から誰かがトトに抱き付く。


「トトさん!」

「おっ、トリス。頑張っている所ちゃんと見てたぞー。凄いな」


「へへへー! 私だって闘えるからね!」


 トリスは嬉しそうにグリグリとトトに頭を擦り付ける。

 その様子をトリスを追い掛けて来ていたアイリスが眺めていた。

 トトがその視線に気付き、一瞬目が合うが直ぐに逸らしてヴェーチェの戦いを眺める。


「…」

「おー、悪いな。もう会う事も無いって言ったのに来ちまって」


「…悪神が復活した時に、誰かの記憶を見た」

「…記憶?」

「王都ノールで、私の隣に座るお前に似た男が居た。あれはお前か?」


 誰かの記憶…恐らくラグナが観ていた記憶がアイリスに入って来たと推測する。抱き付いているトリスを見ると、トトを見詰めて、またイチャイチャするの? と、薄く笑っていた。


「…んな訳ねえだろ。俺とあんたは敵同士。並んで座る事も歩く事もねえよ。他人のそら似だ」


「そっ、そうか…安心した。お前だったらどうしようかと思っていた所だった」


「そりゃ…良かったなぁ。トリス、行ってくる」

「気を付けてね。あの力は使っちゃ駄目だよ」


 抱き付いていたトリスが離れ、アイリスを見ると何か言いたげに睨み付けている。


「…なんだよ」

「この腕輪は…何処で手に入れた?」


≪友情の腕輪・極、ランクーー、状態異常無効・全属性軽減・幸運・結界≫


 アイリスが睨みながら腕に嵌めている銀色の腕輪をトトに突き出す。

 トトが新しく作った友情の腕輪。


「知り合いに貰った」

「その…知り合いは何処にいる」

「遠い所に行ったよ」

「…そう…か」


 アイリスが俯き、明らかに落ち込んでいるが今は戦闘中。

 掛けてあげられる言葉は少ない。

 トトはため息を吐き次元を旅する円盤を持ちながら、アイリスから視線を外し悪神の方に向く。


「あー…そうそう。そいつからアイリス・フォートって奴に伝言を頼まれていたんだっけ」

「…教えてくれ」


「氷の御守りが欲しいから、クソみたいな男に渡しといてくれってさ」

「……」

「まっ、俺に義理は無いからご自由に」

「……自分で渡す」

「そっか」


 視界の隅で肩を竦めるタケルを無視して、転移を起動。

 バシュンッ__トトは中心位置へと転移していった。


「……」



「ねぇタケルさん。大人になったら、素直になれないものなの?」

「どう…だろうね。お互い頑固者だったら…有り得るんじゃない?」


 両手で顔を抑えて泣いているアイリスを見て、ムスッとした表情で言うトリスにタケルは苦笑する。


「はぁ……好きなら好きって言えば良いのに。後悔しますよほんと」


「大体の人は失敗や後悔を重ねて成長するから……トリスちゃんみたいにドン底を経験しない限り、急に変われるものじゃないよ」


「ふーん。タケルさんは…ドン底から這い上がって変わりました?」


「変わったよ。というより……変えてくれた、かな」


「私と同じですね。タケルさんにとって、トトさんってどんな人なんです?」


「まぁ…恩人以上の存在で……意地でも芯を貫き通す生意気な弟、かな」


 上を見ると、核星蟲が稲妻に貫かれてゆらゆらと落ちてくる。

 そこに竜巻が起き、再び上昇し稲妻に貫かれている。



 トリスとタケルがヴェーチェと核星蟲の戦いを眺めていると、帝国軍の方から走って来る男…オーランド公爵がやって来た。


「はぁ、はぁ、タケル・マツダ殿でよろしいか?」

「ええ、そうですが……オーランド?」


 タケルの記憶にある男に似た人物に、懐かしい感覚が湧き起こる。

 オーランド公爵は地面に膝を付き、タケルに頭を下げ出した。

 タケルは困惑し、トリスは面白そうに眺めている。


「私の先祖が起こした裏切りにより、貴方様を処刑に追いやりました……どうか、私の首を落として下さい!」

「えっ、やだよ」


「落とす価値も無いという事ですか……解りました、自害します」

「いや、そうじゃなくてさ…別にもう怒っても憎んでもいないし」


 タケルは怒っていないが、急に首を差し出して来た事が凄く嫌だった。それで解決するなら具現体の時にやっていたからだが…

 面白そうにしていたトリスが、思い付いたように前に出る。


「じゃあ…この女神大戦を語り継いで、記念碑に英雄の名前を刻んで下さい。勇者パーティーを率いた不壊の勇者って……」


「…分かりました。永遠に語り継いでいきます!」


 トリスがまだ戦いがあるからと言ってオーランド公爵を無理矢理下がらせる。

 オーランドはまだ話したい様子だったが、終わったらまた来ますと言って去っていった。


「英雄は僕じゃないでしょ…」

「これで良いんですよ。トトさんは歴史に残してはいけませんから」

「え? どうして?」


「トトさんは…神の武器を簡単に作れる存在ですよ。他の世界に居る神々が戦争を起こしてまで手に入れようとします」

「……なるほど…戦争の火種になりうる、か」

「はい。それこそ…トトさんの故郷からも拒否されるかもしれません」


 戦争が起きるくらいなら、トトが来るのを拒む事もある。地球にさえ居場所が無かったら、トトはどうなるのか…タケルの中に焦燥感が生まれる。


「僕も…中心に行ってくるよ」

「はい。私も後で行きますね」


 核星蟲が落ちていく様子を確認し、タケルは中心位置へと走っていった。



「さようなら…タケルさん」


 トリスはポツリと呟き、アイリスの元へ向かう。

 アイリスは座り込んで、心ここにあらずという雰囲気で悪神を眺めていた。


「アイリスさん、私達も行きませんか?」

「……あぁ」

「みなさんも連れて行きます?」

「……あぁ」

「……あの彼の事好きなんですか?」

「……大嫌いだ」

「はぁ……」

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