武神装。
『ニャんで口調が変わったニャ? ……まぁ良いかニャ』
まだ瓦礫の残る北の砦跡にて対峙するテラティエラと核星獣。小柄な少女と巨大な狼という…端からみたら明らかに勝敗が決まりそうだが、纏うエネルギーは…テラティエラの方が強かった。
テラティエラは格闘主体のスタイルで、武神、戦神と呼ばれながらも商業の神としての側面を持つ。
対する核星獣・ユーサネイジア。安楽死という名を持つ大狼…痛みを感じる事も無く死を運ぶ、他世界の絶対種と呼ばれる存在。
絶対種とは、太古より存在し進化をする必要が無い程に強いエネルギーを持つ種族。
『この犬コロ…星の核で強化されたんかニャ。まっ…余裕やにゃ! ちょうぶしんにゃんき! ……あれ?』
テラティエラから黄金のオーラが溢れ出し、周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
それを見た核星獣が青いオーラを放ち、魔力を高めていった。
『…凍れ』
核星獣から青い魔法陣が出現。濃密な魔力が辺りを支配し、周囲の気温が下がる。
『破滅の吹雪…フィンブルザード』
核星獣を中心に青黒い吹雪が広がる。
吹雪が瓦礫に当たると粉々に砕け散り、触れるものを破壊していく。
『こにゃいなもんウチには効かんニャ!』
そして突進を始めたテラティエラの場所まで吹雪が到達。テラティエラに吹雪が触れるが壊れる事は無かった。
青黒い吹雪を突き抜けながら、テラティエラのオーラが拳に集中。
『__神速!』一気に加速し、核星獣の脇腹に両掌を当てる。
『__ちょうぶしんこほう☆』
ドォオフ!__『グオォォ!』核星獣が横向きに弾き飛ばされ、神速で追い付いたテラティエラが下に潜り込む。
『__ちょうぜつれっしょう☆』
突き上げた拳が核星獣の腹にめり込み爆発。上空に吹き飛ばす。
『くらいにゃ! __ちょうネコパンチ☆』
上空に上がった核星獣を黄金のオーラを纏った拳で叩き落とす。当たった瞬間凄まじい衝突音が響き、一瞬にして大地に墜落。
大きなクレーターが出来上がる。
『にゃんで技に星が出るん? これ絶対やす兄ちゃんの仕業ニャ…』
空中に停滞しているテラティエラが両手を上に向け、黄金の魔法陣を展開。グラグラと大地が揺れる。
『グッ…なんだ…この力は…一介の女神が持つ力では…』
核星獣が負けじと青いオーラを立ち上らせ、力を解放していく。
『にゃははははは! 凄い! この力は凄いにゃ!』
黄金の魔法陣が強い光を放ち、共鳴するように核星獣周辺の大地が黄金に輝きだした。
核星獣が大きな口をテラティエラに向け、力を溜めていくと青いエネルギーが収縮。
『__グオォォオオオ!』
核星獣の口から放たれた青の巨大なレーザー。周囲を凍らしながら突き進む。
『行くニャ! ウチの最強魔法! __ギガテラブレイク!』
黄金の光が降り注ぎ、神結界を突き抜ける程のエネルギーが大地に落ちる。核星獣のレーザーを簡単に打ち消し、核星獣を黄金の光で破壊していく。
『グオォォォォオ!』
核星獣はエネルギーが強すぎて何も出来ず、ただ身体が壊れていくのを見る事しか出来なかった。
『はぁ、はぁ、疲れた……ウチが一番乗りニャ』
黄金の光が収まり、テラティエラの周囲には何も無くなっていた。
テラティエラのここでやるべき事は終わった。武神装を解き、中心位置へと歩こうとして、ガクリと膝を付き…両手が地面に付く。
『う…わ……あぁ……』
武神装には副作用があった。
『なんや……この…羞恥心は……ああぁぁぁぁ! 恥ずかしいぃぃ!』
猫語を喋り、技に星が付く……武神装中では感じなかった恥ずかしい感情が一気に押し寄せ、テラティエラはしばらくその場から動けなかった。
______
悪神の中心位置。
核星獣・ルゼルタイタニアの猛攻に、トトとルナライトは防戦一方。
変わらず楽しそうに笑う核星獣に、トトも笑顔になっていた。
『__メガエナジーフォース』
黒いエネルギーが周囲に放たれ、「変換」トトが黒いエネルギーを攻撃力に変換。
「おらよ__追跡弾!」
攻撃力を乗せた弾丸を撃ち、核星獣に当てる。核星獣の身体に穴が開くが直ぐに再生。
ルナライトが追撃の神槍撃。槍が核星獣に突き刺さるが貫通には至らない。
「__っ! __ルナ!」
『泰人! どうした!』
驚いた表情のトトに、ルナライトも焦りを見せる。周囲の警戒レベルを上げたが……
「ティラちゃんがめっちゃ可愛い!」
『あぁ!? 集中しろし!』
ルナライトは嬉しそうなトトを睨み付け、核星獣に再度攻撃。
トトも追撃を試みようとした所で、通信が入った。
≪兄ちゃん! こっちヤバい! __極壁!≫
「あー了解。ちょっと踏ん張ってて」
≪トハシさん! 負けそうです!≫
「了解です…」
≪泰人ー! もう無理ー!≫
「まじかよ…」
東西南が危険な状況。だがここを離れたらルナライトが殺られる。選択肢は一つ……
「閻魔! ここ頼んだ!」
「きひひ、御意に…」
黒いローブを深く被った閻魔がふわりと出てきて、核星獣の前に立つ。
「ルナ! ちょっとみんなの所に行ってくる!」
『嫌! こいつ怖いし!』
「大丈夫だ! 閻魔の性癖は聖女だけだ!」
『そういう問題じゃないし!』
泣きそうなルナライトを横目にトトは転移していった。
『…弱そうな奴が出たな』
「きひひ、遊ぼう」