鑑定が出来ました
街を出て、冒険者が向かっていない方向へ進む。そこで何かを思い付いた様に、ふと立ち止まった。
「収納バッグが光金貨で売っていたなら、収納リングを売れば良いんじゃないか?ハンドバッグが50センチ四方の容量で光金貨3枚…じゃあ1.5メートル四方の指輪なら…でも何処で売る?魔導具店で聞いてみるか」
素材入れに使っていた指輪は収納チェーンが出来てから使っていないので、空なのを確認。誰でも使えるタイプにして、少し古ぼけた感じに作り替える。
そして、くるっとUターン。街に入り魔導具店に再び入った。
幸い客の姿は無い。
「いらっしゃい。買い忘れかい?」
「いえ、収納リングってここで売れますか?」
「一応買い取りもしてるけど…収納リング?ダンジョンのお宝かい?」
「あぁ、まぁ、そんな所です。これなんですけど…(なんか罪悪感があるのは気のせいか?)」
店主に収納リングを渡す。じっくりと眺め、鑑定メガネを掛けた時に目がカッと開かれた。
「こりゃ凄い…(リングタイプの収納なんて初めて見た…)お客さん。これはウチじゃ手に余る代物ですね」
「え?(まずい!買い取ってくれない空気だ!)買い取り不可ですか?「ええ」そこを何とか!「買い取るだけのお金無いですし…」なんならそこの鑑定メガネと交換でも良いですから!」
「…え?これと交換?良いんですか?」
「ええ!是非!」
「…分かりました…本当に良いんですか?お客さん大分損しているけど?」
「ええ!気にしなくて大丈夫です!(もう必要無いし)欲しい人に使って貰った方が良いと思いますし!」
なんとかゴリ押しで収納リングと鑑定メガネを交換。鑑定メガネは店主が気を使って一番ランクの高い物を用意してくれた。
半ば逃げる様に魔導具店を出る。ふぅーっと一息。
「危ない危ない。買い取り不可ってどういう事だよ…そんなに高いの?リングタイプだからかな…とりあえず、この街で裏技はもう使えないか」
指輪の値段を聞くのを忘れたが、欲しかった鑑定魔導具を手に入れたので、結果オーライ。
再び街から出て、冒険者が居ないエリアに向かう。
沼に向かう道から少し逸れた荒れ地に到着した。周りは雑草が疎らに生える場所。見晴らしが良く、誰かが来たら直ぐに分かる。
「よし!先ずは鑑定魔導具の加工だな……指輪だと触れた物だけ…ならルーペ付きのナイフかな。レンズを通せば鑑定出来るタイプの……作成!」
ナイフ、魔石、鑑定メガネを合成し、鑑定ナイフを作成。
柄の部分にルーペが付いているタイプで、射程距離は10メートル程。
「出来た!じゃあ早速鑑定しよう。何処まで表示されるのかな?最初は鋼鉄の剣を、鑑定」
≪鋼鉄の剣、ランクD、剣豪レベル8、攻撃116≫
「……ん?剣豪?」
レベルがあるのは分かっていたが、まさか上位職業だとは思わなかった。
「剣の質が原因か?…そうだよな、鋼鉄を作る技術なんてこの世界じゃ珍しいか…でも基準がよく分からない…」
他の武器も同様に上位職業だった。
≪鋼鉄の斧、ランクD、重戦士レベル2、攻撃104≫
≪鋼鉄の槍、ランクD、重槍士レベル11、攻撃122≫
≪クロスボウ、ランクD、狙撃手レベル15、攻撃130≫
≪魔法杖、ランクD、魔道士レベル10、魔攻120≫
「んー、思い付くのは…素材とイメージかな?逆に弱い武器をイメージしたら下級職の武器になると思う…作成」
ボロい剣を取り出し、駆け出し剣士のイメージで武器をイメージ。出来た剣を鑑定してみる。
≪鉄の剣、ランクF、剣士レベル10、攻撃20≫
「出来た!弱いなー。後で武器屋に行って基準を見よう。爆炎の戦斧はどうなんだろ?鑑定」
≪爆炎の戦斧、ランクーー、ーーーレベルーーー、攻撃ーーー≫
「駄目か…鑑定ナイフのランクが足りないって事か。でも高ランクの武器はワクワクするな」
爆炎の戦斧は読み込めず、他に鑑定したい物を鑑定していった。
≪収納リング、ランクC+、攻撃1≫
「C+?C-もあるって事か?」
≪収納チェーン、ランクB、攻撃100≫
「チェーンだから攻撃高いな…」
≪安全ブーツ、ランクE、攻撃10、自動回復≫
「一応能力も記載されるのか…って事は安全ブーツは魔導具なのか?それよりも防御力無いの?」
≪ビニール袋、ランクーー≫
「ビニール袋のランクが高いだと!意味が分からない…」
≪料理本、ランクーー≫
「ランクが高い…もしかして」
≪ノート、ランクーー≫
「やっぱり地球産の物はランクが高いのか。でも収納リングの原料は100円玉だし…うーん…まぁいいか」
調べる事は沢山あるが、一通り鑑定が終わり、魔導銃を作る事にした。
「材料は…属性石と、オークの魔石、斧でいいか。属性を切り換える機能、連射機能、属性を合わせる機能は…材料が足りないか。弾丸の形に回転を付けて射出。形は、デザートイーグルで作成!」
材料が合わさり、有名な自動拳銃の形に変化。鋼鉄製のメタリックカラー。引き金を引き続ければ連射出来るフルオート機能。マガジンの部分に切り替えスイッチがあり、属性を変えれる。
「出来たー!格好良い…その内全属性搭載出来る様にしたいな。鑑定」
≪魔銃デザートイーグル、ランクC+、魔銃士レベル15、攻撃230≫
「強っ!ちょっと撃ってみよ」
少し歩き、1メートル程の岩を発見。
魔銃を構えて撃つ_タンッ!_ガッ!
赤く光り火属性の弾丸が射出された。岩を見ると丸い穴が空き、煙が立っている。
「凄い貫通力…岩に穴が空いた…」
次は青に切り替え、数十メートル先にある木を狙う。
タンッ!_ガッ!
近付いて見てみると、木にポッカリ穴が空いていた。狙った場所に当たり、射程距離も長い。
「大幅に戦力アップだな。クロスボウの出番が無くなるな…いや毒とか射出するのに使うか」
物騒な事を呟きながら、銃の感触を確かめる。
「後は、ミドルポーションナイフと能力アップする指輪かな」
ポーションナイフにミドルポーションを合成。ミドルポーションナイフに変化。
攻撃薬、防御薬、素早さ薬、魔攻撃薬、魔防御薬と収納リングを合成。
≪ミドルポーションナイフ、ランクD、攻撃5≫
「強さを意識していないから職業とレベルは付かないのかな?」
≪戦人の収納リング、ランクB、攻撃1、基礎能力上昇≫
「名前が変わった。基礎能力…そういえば俺を鑑定していないな、鑑定」
≪トト、武器師、強さ5≫
「弱い…のか?おっ、角ウサギだ。鑑定」
≪角ウサギ、クラス1、強さ6≫
「角ウサギ以下だと!俺弱すぎだろ!」
武器が無いと雑魚の中の雑魚。これは気を付けなければならないと肝に命じる。
「なんか一気に不安になってきた…こりゃ、能力を上げまくらないと不味いな」
下手したら一撃でやられる。やるべき事をしなければ死と隣り合わせ。
「次はオークと武器の合成。鋼鉄の剣で試そう。合成」
オークを一体取り出し、鋼鉄の剣と合わせてみる。
≪鋼鉄の剣、ランクD、剣豪レベル9、攻撃118≫
「上がった!残り9体、1体残すか。合成」
≪鋼鉄の剣、ランクD、剣豪レベル15、攻撃130≫
「1ずつ上がる訳じゃ無いか。でもこれで武器のレベル上げが楽になる!」
一々ボロい武器を買わなくても、魔物を合成すればレベルが上がる事に安堵した。
「赤いオークは保留だな。まだ一月は鮮度を保てるし、王都で売るか合成するか考えよう…」
物事は慎重に。そう言い聞かせて街に戻った。
「今日は武器屋に寄って帰るか」
ご機嫌な顔で武器屋に入る。冒険者の姿はちらほら。とりあえずこそこそと、安い武器を鑑定した。
≪鉄の剣、ランクF、攻撃13≫
(職業とレベルが無い。俺が作った武器は職業とレベルが付くのか…にしてもこれが金貨1枚?そんなもんか…?)
店主が冒険者と会話している隙に、光金貨3枚…300万円のメタル工房の剣を鑑定。
≪魔鉄の剣、ランクC、攻撃106≫
「…ん?(弱くね?)」
材質は気になったが、値段の割に攻撃力が低すぎる。
「どうした坊主。その剣に憧れてんのか?」
「いえ、魔鉄が使われている様ですけど…魔鉄が光金貨3枚の理由ですか?」
「良くわかったな!魔鉄の剣を打てるなら一流の証だぞ!坊主も魔鉄を扱える様に頑張れよ!」
「そうなんですね。魔鉄って何処で採れるんですか?」
「魔鉄は王都の北にある鉱山で採れるんだ。だから王都で武器、防具屋で成功するには魔鉄を扱えるのが絶対条件みたいな所があるんだよ」
「へー。ありがとうございます(魔鉄か…)」
武器屋を出て、宿に戻る。着替えて考えを整理する事にした。
「魔鉄で武器作成が次の目標になるのかな?でも鋼鉄の理論で行けば魔鋼になったりして…魔石と合成したら作れないかな?」
ボロい剣を持ち、魔鉄魔鉄とイメージを固める。しかし上手く行かない。
「んー、何か条件があるのかな?とりあえず王都に行ってからだな」
新しい目標が出来たので、期待を胸に就寝する。明日は買い物等の調整。明後日は依頼の日だ。