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流れの武器屋  作者: はぎま
第二次女神大戦
149/163

外殻。

 ノワールの連絡を受け、トトとタケルは帝都に転移。待ち合わせた場所にて合流した。


「お待たせしました。あれ…ですよね」

「はい。遠いのでよく見えませんが…オーロラが集まって黒い玉が出来ました」


 四人で帝都の外へ移動。

 トトがイーグルアイを使い、遠くに見える黒い玉を観察。

 黒いオーロラが収束し、黒い玉に吸い込まれている。


「見えにくいけど…完全に出て来ないと攻撃は通じない筈」

「確か、封印が全て解けないと再生するんだよね」

「そうだな……あれに近付くだけでも辛いと思う」


 エネルギーが強すぎて強い力を持っていないと、近付く事は厳しい。この中で、まともに近付けるのはトトぐらいだ。


「トリスの話は、俺が死ぬ時の話がほとんどだったから過程が解らないんだよなぁ…」

「じゃあ、行ってきても大丈夫じゃない? 僕らは臨機応変に行くよ」

「気を付けて下さいね」


 タケルの言葉を受けて、トトは一人で北に転移した。



 北の山脈近く、ビリビリとしたエネルギーの波動を受けながら、間近で黒いオーロラの収束を眺める。


「黒い玉は…なんだろう…宇宙柄だな」


 直径一キロを越える黒い玉には、煌めく星達のようなものが見える。宇宙をそのまま丸くしたような、吸い込まれそうな程に美しい球体だった。


≪銀河の楽園、ーー、ーー≫


「楽園…か。とりあえず全部封印が解けたら、これに消滅兵器をぶっ放せば良いのかな?」


 寝転がりながら、しばらく待ってみる事に。



「ラグナ…聞いているか?」


 語りかけるが、返答は無い。


「お前が助かるには…ラグナの加護を得た女性を器にして、分離した魂を入れる方法しか無い」


 ラグナの加護を得た女性は一人だけ。魂を入れると、元の人格は失われる。


「正直に言うと…アイリスさんが犠牲になるなら、ラグナを復活させる事は出来ない。悪いな」



 宇宙柄の球体…悪神を眺めながら返事の無い会話をしていると、トトの元に近付く者達…トトは振り返らずに悪神を眺めている。


「こりゃお揃いで、俺に会いに来てくれたのか?」


『そやでー!』『やっぱり居たか』『もうすぐねぇ』『タケルは居ないの?』『……』


 女神達が揃って地上に居る事は、女神大戦以来。教会の者が見たら涙を流して跪くのだが、トトは珍しいなぁ…くらいの感想。


『やす兄ちゃん、ありがとうな』

「良いんだよ。ラグナと約束したからな…」


 何をとは言わない。戦う以上、殺し合いだから。


「女神さん達はどう動くんで?」

『もう元々の封印は解いて来たから…ラグナんを中心に、北がウチ、南がヴェーチェ、西がフラマ、東がアクアで初撃を撃つんや。中心でルナちんが神結界を張る手筈』

「神結界?」

『本気で戦えば世界が壊れるから、世界を守る結界やな。ルナちんに限界が来たらウチらの誰かが対応するねん』


 トトは、なるほど…と結界について感心する。考えてはいたが、何とかなるだろうと思っていたから。


『ほな、みんな行こか。やす兄ちゃん、無理はしんとってな』

「あぁ、大丈夫だよ。またね」


 女神達はそれぞれ所定の位置へ向かっていった。


「…」

『…』


 中心に居るトトと、中心で結界を張るルナライトが残る。トトは悪神を眺め、ルナライトはトトの隣に座った。


「…ラグナは…良い姉ちゃんだな」

『…自慢の姉だ』

「ラグナも自慢していたぞ。ルナライトの事…」

『…そうか』


 ラグナとは、時間を作って出来るだけ話をしていた。当然他の女神達の事も聞き、ラグナは楽しそうに思い出話をしていた。


『姉さんは、私の事を何と言って自慢していたんだ?』

「そりゃあ…料理をしたら暗黒物質が出来たり、みんなのお菓子を勝手に食べたり、得意料理が焼き芋と焼きイカだけだったり…」

『ふっ、そんな訳無いだろう。姉さんは話を面白くしようとしただけだ』


 悪神に変化があるまでは、ルナライトと話す事になった。

 神結界を張るのは復活する直前。消滅兵器を使用するのは復活した直後。あと少しで完全に復活する感じがした。


「…そろそろだな」

『…あぁ』

「じゃあな」


 ルナライトが立ち上がり、白い立体魔法陣を展開。

 トトも立ち上がり、消滅兵器を担いで悪神の真下に移動。

 真上に砲身を向け、力を溜める。


『…神結界発動』


 ルナライトが結界を発動させる。立体魔法陣が大地に入り込むと、淡く光りだした。

 そして、北南東西から光の柱が上がる。


「初っ端から総攻撃って事ね。了解」


 激しい魔力の吸引音を響かせながら、黒いオーロラが途切れるのを待つ。

 悪神はどんどん大きくなっていき、トトの視界には宇宙が広がっていた。

 圧倒的なエネルギーに、これは勝てるのか…と不安になっていると…

 やがて、黒いオーロラが途切れる。

 悪神の存在感が増し、胸を締め付けられるような圧迫感に襲われ…

 女神達の方を見ると光の柱が輝きを増していた。


「そいじゃあ…やりますかぁ…ポチっとな」


 消滅兵器のスイッチを押すと、魔力の吸引音が消え…

 キイィィィィイ!__甲高い音と共に極太のレーザービームが放たれた。

「うおっ! 眩しくないぞ!」


 レーザーが悪神に衝突。少し悪神を上に押し上げ、球体を下から包み込むように広がっていく。

 トトが女神達の方向を見ると、光の柱が伸び悪神の真上に繋がっている。トトからは何も見えないが、衝撃はビリビリと伝わっているので真上から総攻撃していると推測。


「ん? 亀裂?」


 レーザーを放ちながら、ピキピキと亀裂が発生している様子を眺める。亀裂が下から上へと伸びていき…悪神の欠片がパラパラと落ちている。

 そして…

「割れる…」

 バキバキバキバキ!__亀裂が上まで到達。悪神の大きな欠片が落ちてきた。


「なんだ…割れた…いや…剥がれた」


 大きな欠片が落ちてきたが、頭上の悪神は球体のまま変わらない。気持ち小さくなった気がするが。

 レーザーの射出が終わり、消滅兵器のクールタイムの間、悪神の欠片を鑑定。


≪銀河の殻、ーー≫

「殻…卵の殻? …あれは」


 大きな欠片が変型していく。人型、獣型など様々…

「殻が魔物に…殻獣ってそういう事か…」


 変型した魔物は北南東西…女神達の元へと向かっていく。

 中心に居るルナライトの所にも向かっているが、ルナライトの攻撃によって倒されている。


「数が多いな…俺の所に来ないのは幸いなのか?」


 女神達に襲い掛かる殻獣達。人の居る帝都周辺には向かっていない様子だが、この先どうなるか解らない。

 先ずはタケル達に状況を伝えなければいけなかった。


「タケル、そっちはどうだ?」

≪泰人、帝都はまだ大丈夫だけど…魔物がヴェーチェに集中している≫


「了解。タケルはヴェーチェルネードと一緒に戦ってくれ。他のみんなは?」

≪解った。ノワールちゃんとノーレン君は近くに居るよ。勇者パーティーは作戦通りの位置≫


「ノワールさんは西…フラマフラムさんと合流。ノーレンは東…アクアマリンさんと合流してくれ」

≪了解。伝えとく!≫

「何かあったら直ぐに報告よろしく! 転移で駆け付ける!」

≪了解!≫


 タケルとの通信を切り、次々と生まれる殻獣を減らそうと神鳥銃で撃ち抜いていく。


「ったく壮大な奴だなぁ…北はティラちゃんだけど…」


 北の方角を見ると、大きな猫が破壊光線を殻獣に浴びせている様子が見えた。


「…ティラちゃんは問題無し。東西南は大丈夫…となると一番危ないのはここか…」


 ルナライトの元に、一番多くの殻獣が集結していた。

 まだ消滅兵器は使えないのでルナライトの元へ行く事にした。



『…ホーリィレイ・バースト』

 ルナライトが光の攻撃を駆使し、襲い掛かる殻獣を倒している。


 トトが到着した時には、全方向から殻獣が襲い掛かってきていた。

「危なっ、時空結界!」

 ガキンッ!__ルナライトを包む小さな結界が発生。殻獣の攻撃を防御。

 深紅の斧を取り出し…「__焦熱火炎!」

 ゴオォォオオ!__周囲の殻獣を焼き付くした。


「ふぃー、調子悪そうだけど大丈夫か? ルナたん」

『…悪いな。問題無い…ルナたんはやめろ』

「ほんとか? ラグナと戦いたくないから力が発揮出来ないかと思ったけど…」

『……』

「んだよ…図星か。仕方ないな…焦熱火炎!」


 再び迫り来る殻獣達を焼き払う。

 まだ悪神の欠片は残っており、新たな殻獣が生まれてきていた。


「ルナたん、一緒に戦うぞ」

『…ルナでいい』

「ルナ、一緒に戦うぞ」

『…なんか恥ずかしい』

「…」


 トトがルナライトを見ると、もじもじしながらトトを見ていた。


(そういえば…ルナも呪われていたんだっけ…なんだろう…この不安に襲われる感じ…)



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