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流れの武器屋  作者: はぎま
ヴァイラ王国へ。
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再会。7

 あれからしばらく、トトはトリスと話を続け…時折振り返り、タケルの様子を見る。

 緑の女性…ヴェーチェが沈んだ様子でタケルに話し掛け、優しいタケルはちゃんと話を聞いているようだ。タケルはトトと目が合う度に何かを訴える視線を投げ掛けていたが、最終的には諦めた目をしながら会話をしていた。


「トリス、ありがとう。話してくれて」

「トトさんの為だから…どうせ何を言っても故郷に帰らないだろうし」

「まぁ、全部終わらないとな。約束もしたし」

「ラグナレヴィア様は、一人で何でも背負って…トトさんみたいな女神様だね」


 トリスは笑顔で嫌味を言いながら、トトに邪悪の力が篭った勾玉を渡す。


「もし、トトさんが死んだら…私も死ぬから」

「ありがとう。もちろん死なないよ」


 これで、破壊、混沌、邪悪…悪神の封印された力が揃った。


「みんなとは…もう会わないの?」

「会わない。嫌われちまったからな…」

「…」


 トトが扉の方…タケルとヴェーチェの所へ向かう。

 遠い目のタケルと、トトを警戒して少しビクビクしながらタケルの影に隠れようとするヴェーチェ。


「よう緑の女神さん。お前は魔法で感情を操作出来るんだよな?」

『え、えぇ…』

「じゃあ、この扉の向こうに居る奴らの、俺に対する好意を消しといてくれ」

『なんでよ…意味が解らないわ』

「好意があると、俺を庇って死ぬ奴が居るんだよ。そうなると色々大変なんだ」


 誰かが死ぬ未来は出来るだけ全て潰さなくてはいけない。

 だが、ヴェーチェは顔を顰めて嫌そうにしている。タケルともう感情を操作する魔法は使わないと約束したばかりらしい。


 その前に、トトは違和感を覚えた。

 ヴェーチェに危機感が無い。警戒しているのはトトのせいだが…


「なぁ…ラグナがもうすぐ復活するのは…知っているよな?」

『は? そんな訳無いじゃない。封印はしっかりしているわよ』


「…もしかして…女神達は知らないのか?」

『何を?』

「ラグナが、新しい力を手に入れた事…」


 ヴェーチェの動きが少し止まる。

 新しい力…そんな事は聞いていないとばかりに、他の女神に連絡を取り始めた。


 トトはラグナに出会ってから、他の女神に出会っていない。制約により、ラグナと女神達は話す事が出来ず…情報が後手に回っていた。


『……みんな知らない』

「…まじかよ。あと一週間も無いぞ」

『それだと…時間が足りない』


 ルナライトのポンコツモードはまだ継続中。果たして直ぐに治るのか不安になっていた。


その時、ラグナから連絡が来た。


≪泰人…三日後だ≫

「…はぁ…了解。楽しかったぜ」

≪お別れだ。…ありがとう…≫

「あぁ…ありがとう。ラグナ」


 ゾワッ!__全身に鳥肌が立つほどの悪寒。

 トト以外の全員も感じたようで、少し震えながら動揺していた。


「泰人、復活するの?」

「あぁ…三日後、帝都の北にある山脈辺りだとよ」

『そんな…』

「だから早く感情を操作してくれ」

『解ったわよ! 効果はいつ切れるか解らないからね!』


 焦るヴェーチェが緑色の魔法陣を展開。扉に向かって感情の流れを変える風を放つ。

 魔法が終わったら、立ち上がっていたタケルに音速でキスをしてから天上へと転移していった。抜け目無い行動に、タケルが深いため息を付いている。


「トトさん…始まるんだね」

「あぁ…三日後、帝都の北に復活する」

「解った。みんなに言っておく」

「魔物の大移動みたいに、魔物が大群で発生する筈から…南の帝都にアホークとリンダさん…東にニグさん…西にミランダさん…中央にアイリスさんとトリスかな」


 トトはラグナが復活する北に構える。ノワール、ノーレン、タケルはその時の状況次第。

 タケルがようやくトリスに挨拶をし、話の輪に入ってきた。


「復活するとして…世界全体に魔物が発生するとかは無いの?」


「無いとも言い切れないけど、ラグナの全戦力はラグナの元に集結する」


「全戦力…殻兵獣みたいな奴?」

「そうだな。あれはもう一方のラグナが、違う次元に居た魔物を吸収して使役した存在達らしい…詳しくは知らんが強さもピンキリ」


 殻獣は人の倒せるような魔物では無い。武装してようやく互角に戦えるかどうかの魔物。

 沢山の兵士が死ぬ未来しか浮かばない。


「帝国に戦うなって言っても無駄なんだろうね」

「自分達の国だからな」

「まっ、極力頑張ろう」


 帝国の為に戦う訳では無いのだが、タケルは複雑な心境だ。


「不壊の勇者が、タケルだって証明が出来るぞ」

「別にいいよもう」


 タケルは不壊の勇者については触れて欲しくない様子で、嫌だなぁ…と呟いた。


 ざわざわと外が騒がしくなってきた。トトが窓へ行き空を見ると、黒いカーテンのようなオーロラが見えた。まだ小さいオーロラだが、大きくなるにつれて混乱が起きる。


「トリス、聖女として最後の仕事…なんとか混乱を抑えてくれ」


「無茶言わないでよ。……じゃあ…エッチぃ事してくれたら頑張るよ?」


「あぁ…悪い。ラグナの寵愛が消えていないから出来ない」


「むー!」


 ポカポカとトトを叩くトリスは怒っているが、以前の暗い雰囲気は消えて笑顔が戻っていた。



「じゃあ…後は頼んだ」


「早めに帝国へ行くね」


 トトはタケルと共に転移で王都の外へ向かっていく。



 残されたトリスは、椅子に座って黒いオーロラを見ていた。


「楽しかったなぁ…ふふっ、隠し事しちゃった」


 聖女の間の扉が開き、ホークアイ、ニグレット、リンダ、ミランダ、アイリスがトリスの元に駆け付ける。

 皆トリスを心配している様子だが、トリスは微笑みながら何も無かったと言うだけ。


「みなさん、悪神が復活します。帝国へ行きましょう」


 ヴァイラ王国は精鋭の騎士達を引き連れ、帝国へ向かう。

 国家間と連絡が取れる通信石を使い、帝国に悪神が復活すると連絡。


 再び、神の戦争が始まろうとしていた。



次回から、最終章に入る予定です。


よろしくお願いしますorz

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