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流れの武器屋  作者: はぎま
ヴァイラ王国へ。
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再会。2

 トト達を見ていたノワールとノーレンは、ニグレットとミランダの襲撃を受け、城から移動。

 王都の外へと退避し、人気の無い場所へとやって来た。


「ここまで来れば大丈夫かな」

「結局俺も闘うのかぁ…」


 向かい合い、落ち着いた表情を見せる姉弟にニグレットは怪訝な表情を向けていた。神敵の味方をする者は、同じく神敵として扱う。だが、この二人の目的が知りたかった。


「お前達は、何者だい?」

「私達は、少しだけ強い…ただの一般人だよ」

「ふんっ、そんな訳あるか。神敵の仲間だろう?」


「ふふふっ、仲間だから…何? 殺すの?」

「あぁ…神敵は殺さなければいけない。ミランダちゃん、私はあの素直そうな坊やから聞いてみるよ」

「はい、じゃあ私があの人を…」


 ミランダが踏み込み、ノワールとの距離を詰める。

「__星剣技・スタースラッシュ!」

 煌めく剣閃。ノワールの胴体目掛けて凪ぎ払い、キンッ!__乾いた金属音が鳴り響く。

 ノワールは銀色の剣で受け止め、一瞬の膠着。

 ミランダに場所を移そうと、別の場所を指し示す。


「ノーレン、このお姉さんは任せたよ」

「おう、了解」


 ノワールは走りながら移動。ミランダは無言で付いていった。



 残されたノーレンとニグレット。


「……」

「……」


 見詰め合い、ニグレットがノーレンに歩み寄り…

 着ている服を脱ぎ始める。

「えっ…ちょ…」

 ノーレンは、予想外の行動に硬直。どんどん脱いでいくニグレットを呆然と眺めていた。

 やがて、下着姿になったニグレットが、ふふっ…と笑う。


「坊や、私は女も武器にするんだよ」

「…っ!」


 首筋に、宙に浮いたナイフが突き付けられていた。

 ノーレンは動けなかった自分を恥ずかしく思う一方、ニグレットの下着姿を目に焼き付ける。

 赤く長い髪が綺麗な、姉とは全く違う色気のある美人の黒い下着姿。一生の思い出になると確信していた。

 だが、動いたら死ぬ状況。焦燥感とドキドキが止まらなかった。


「ねぇ、ノーレン君。お姉さんに、色々聞かせて欲しいな…」

「はい、もちろんです!」


 聞かれて困る事は何一つ無い。その気になれば逃げる事も可能なノーレンが取る行動は一つ。胸を寄せて舌舐めずりをする美人なお姉さんとお喋りしたい…


「…随分素直ね。色々教えてくれたら…良い事してあげようか?」

「ぜ…ぜひ…」


 色気のある美人なお姉さんは、思春期ノーレンのハートを鷲掴みにしていた。一応…宙に浮いたナイフは警戒して、密かに防御の結界を身体に密着させているので安全と言えば安全だが…

 ノーレンはハッとして、デレッとした表情を引き締め、モテる男の教科書に載っていたキリッとした表情に切り換える。もう遅いのだが…



「神敵の目的は…なんだい?」

「…悪神を倒す事ですよ」

「…なんだって?」

「悪神はもうすぐ復活します。兄ちゃん達は、邪悪の力を悪神に渡さない為に、ヴァイラ王国に来ました」

「……」


 にわかには信じられない話。悪神が復活するという事は、女神大戦が始まってしまう。多くの者が死に、多くの悲しみが生まれる神の戦争。

 その前に、邪悪の力はハールゲン大陸にある筈…ニグレットは嫌な予感が拭えなかった。


「邪悪の力は…ヴァイラにあるのかい?」

「はい。転移者の聖女が持っていた筈ですが…誰かの手に渡ったようですね」

「……まさか…トリスが!」


 ノーレンの言葉を全て信じた訳では無いが、心当たりがあった。トリスが転移者から受け取った黒い何かを眺めていた光景…

 ニグレットに焦燥感が生まれ、直ぐに城へと向かおうとするが、透明な壁に遮られる。そして、周囲に透明な壁が出現。ニグレットは閉じ込められた。

 ノーレンを見ると、首に当てられていたナイフを持ち、キリッとした表情でニグレットを見据えていた。


「…やるねぇ。これを解いてくれないかい? 急ぎなんだ」

「…すみませんが…それは、出来ません。兄ちゃんが邪悪の力を手に入れるまで…ここに居て貰います」

「…良い事、してあげるぞ?」

「……くっ…それとこれとは…別…です。兄ちゃんの…くっ…邪魔はさせません…」


 ニグレットの誘惑に耐える。そこにキリッとした表情は無く、泣きそうな情けない顔になっていたが…


「トリスに何かあったら…絶対に…許さないよ」

「…分かっています。兄ちゃんは、何があろうと絶対に誰も殺しません」

「ふんっ…神敵が誰も殺さない? 信じられないね」

「……そうですよね」


 ノーレンの表情に影が注し、なんとも言えない気持ちになった時…ノワールがミランダを抱えて走って来た。

 顔を顰め、ノーレンに向かって全速力。


「姉ちゃん、終った…」「何しとんじゃー!」

 バキッ!__「ぐぎゃ!__ノワールの飛び蹴りでノーレンが吹っ飛んでいった。


「ぐっ…ね、姉ちゃん…なんで…」

「なんでじゃあ無いよねぇ…ノーレン? なんでニグレットさんが脱がされているのかなー?」

「い、いや…自分で脱いでたぞ…」

「問答無用!」


 ドゴンッ!__ノワールの回し蹴りで、ノーレンは見えなくなるまで吹っ飛ぶ。ノワールが下着姿のニグレットを見て、色気すげえな…と、戦慄していた。


「ノーレン…あなたに美人なお色気お姉さんは…百年早いわ。男を磨いて出直して来なさい」

「あ、あの、お嬢ちゃん? 私が自分で脱いだんだよ」

「知っていますよ。貴女の事は聞いていますから」

「…誰からだい?」

「それは…その腕に嵌まっている武器を作った人ですよ」


 ノワールがニグレットの腕に嵌まっている魔武器…銀環・アゾットゼルクを指差し、気絶しているミランダの武器…星剣メティオールブレイドも指差す。。


「…知っているのかい?」

「えぇ…頭の良い貴女は、もう気付いているんじゃないですか? どうしても思い出せない人が、彼だって…」

「……認める訳には…」


「ふふっ…それなら、行きましょうか。服を着て下さい」


 パリン__ノワールが手を伸ばし、ノーレンの透明な壁を破壊。

 ニグレットが服を着るまで待ち、ミランダを抱えて城へと向かう。


「姉ちゃん…酷いよ…」わざわざ透明な壁を作った、ムッツリノーレンを置いて…




 ______



 ヴァイラ城。


 城の中に入ったトトとタケルは、直ぐに立ち止まる。

 白い壁の広いホールになっており、騎士達の中心で待っていた人物にトトの顔が綻ぶ。


「相変わらず、可愛らしいですね…」


 赤い髪に小さな身体を持つ女性。

 手には魔武器…雷光剣・プラズマライザーを持ち、少し釣り上がった勝ち気な目でトト達を睨み付けている。

 完全な敵意を向けていた。


「神敵…私が殺してあげるわ」


「会いたかったですよ。リンダさん」



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