再会。
翌朝、トトとタケルはヴァイラ城へと向かい、ノワールとノーレンは高い所…監視塔の屋根に待機していた。
作戦は、正面突破。
作戦という言葉が要らない単純なものだが…このヴァイラ城を良く知る者は、正面突破なんて出来る者は居ない…そう豪語する程の強固な守備。
第一門、第二門、第三門と大きな城門が構え、各門に配備された屈強な騎士が出迎える。
第一門。白く大きな城門の前に検問があり、落ち着いた雰囲気でやって来た訪問者…トトとタケルを城門騎士が鑑定したのだが…明らかな不振人物。
≪ドド、クソ男、強さ5≫
≪タケル・マツダ、ーー、ーー≫
これは城門騎士が視た鑑定結果。
追い払うのが基本だが…これで、はいさようならとはいかない。
「何者だ! 怪しい奴め!」
「タケル、鑑定が視れないのは怪しいぞ」
「泰人に言われたくないよ。クソ男で強さ5とか…底辺の底辺過ぎてヤバい奴だよ」
「実際そうだろ」
城門騎士が応援を寄越し、徐々に騎士が集まって来る。
騎士を集める事は、邪悪の力を誰が持っているか調べる為であり、決して目立ちたいという訳では無い。
集まって来る騎士を一瞥し、邪悪が無いと確認すると強い殺気を放ち、騎士達を昏倒させた。
バタリバタリと倒れる騎士達を跨いで、先へと進む。
「泰人、客観的に見ると完全に悪役だね」
「おう、神の敵が乗り込んで来た訳だから悪役だな。何の罪も無い騎士達を凪ぎ払うクソ男」
左手を添え、第一門の重い扉を押し開ける。
第二門の前。騒ぎを聞き付けた騎士達が武器を構え、二人を威嚇。
トトは甘いねぇ…と呟き、殺気を放ち昏倒させた。
城が騒がしくなってきた。
賊が現れた! と叫ぶ騎士。
ふと上を見る…監視塔が既に制圧されており、顔を出したノワールが軽く手を振っている。
ノワールに手を振り返し、第二門を押し開けた。
「おっ、やっとお出迎えか」
第三門の前、輝く聖剣を持つ勇者…ホークアイが立ち、こちらを睨み付けている。
周りの騎士達は、既に殺気を当てられ昏倒していた。
タケルは一歩引き、トトとホークアイの再会を静観している。
「神敵…やはり来たか」
「お邪魔するよ。目的を達したら帰るから、通してくんない?」
「そんな事…させると思うか? 武装・輝きの勇者!」
聖剣が輝き、ホークアイが光に包まれる。
白い鎧を纏い、白いマントが拡がる。
頭にサークレットを装備した勇者の姿に武装。
対してトトは、ホークアイの武装が終わるのを待っていた。
ホークアイは光を纏いながらトトとの距離を詰め、聖剣を振り下ろす。
ガキンッ!__「_何!」
左手で受け止められ、驚愕するホークアイ。
トトはそのまま聖剣を掴み、ポイッとホークアイごと放り投げる。
空中で体勢を整えたホークアイが、警戒するように力を増していった。
「はっはっはー! こんなものか! 勇者とはぁ!」
「お前は私が倒す!__聖竜の力よ!」
「…無駄だよ、ホーク……行け、光喰らいし輝天の龍」
左手をホークアイに向けると、ホークアイに絡み付く白い龍。
光のエネルギーを吸収し、光の鎧が輝きを失っていく。
「ぐっ…あっ…なん…だと…」
「悪いな…眠っていてくれ」
ドンッ!__ホークアイの鳩尾に掌底を放ち、意識を飛ばした。崩れ落ちる身体を支え、そっと横に寝かせる。
「泰人…大丈夫?」
「あぁ、昔話をするような雰囲気じゃねえからな」
少しだけホークアイを眺め、第三門に向かう。
「そっか。泰人を思い出さない方が幸せかもね…」
「…だな。嫌われた方が助かるし」
「ふーん…本当に?」
「あぁ。俺を嫌ってくれれば、俺に何があろうと…助けない筈だから」
「…ほんと、君は馬鹿だねぇ…」
第三門を押し開ける。
その時、監視塔の方から剣戟の音が聞こえた。
上を見ると、ノワールとノーレンが城から離れ、それを追う二人の影。
「あれは、ニグさんとミランダさんか…」
「ノワールちゃんに気付くなんて流石だね。まぁでも大丈夫でしょ」
「ノワールさんはタケルより強いからな。でもニグさんが居るから…ノーレンは不味いかも…」
「なんで? 闘いなら負けないでしょ」
「ノーレンは…お色気に弱い…」
「あぁ…思春期にあの色気は不味いね…」
第三門をくぐり抜け、城の入り口に到着。騎士達、魔法士達を昏倒させながら、城の中へ入る事に成功した。