素材集め
今日得た物を確認していく。
「赤い奴は良いとして、普通のオークはどう処理しよう…素材にするとしたら…武器と合成したら武器のレベルが上がるかな?」
出来たらレベル上げが楽しめる。オークは狭い部屋では出せないので、明日試そうと決めた。
「後は、集落にあった箱だけどベッドぐらいの大きさだから…あっベッドを収納すれば良いか」
丁度ベッドと同じくらいの大きさなので、ベッドを収納してから箱を出し、中身を確認。色々と乱雑に入っている。
「鉄製の武器や防具は食べれないから箱に入れたのか?道具類もあるし、これはポーションかな?でも素人目には何の薬か分からないんだよな…」
中身は鉄製の剣が1本、魔石の嵌まった杖が一本、鉄製の防具が5着、ロープや解体ナイフ等の道具類、ポーションらしき小瓶が10本、青い石、お金が入っていた。
「正直お金が一番有りがたい。全部で……白金貨2枚、金貨25枚、銀貨15枚、銅貨5枚。良かった…来週まで必死に稼がなくても良さそうだ。そういえばギルドにお金を預けられるっていうけど、ここは信用出来ないから持っておこう」
ギルドのお金の預かりはその場でカードに記帳するので大丈夫なのだが、ここのギルドは信用出来ない様子。
「…どうするかな。後は赤い斧…爆炎の戦斧が戦利品だけど、広い所で出したいから明日だな。それにしても武装って凄いよなー…あんなデカイ豚を一撃で倒したし、魔武器には特別な力があるのかねぇ」
クリムゾンオークとの闘いを思い出す。自分の切り札になる武器を手に入れたが、不安も残る。
「あんまり人前で使えないのが難点だな…色々な方向から狙われそうな性能だし…」
貴族怖い。飼い殺される未来を避けなければならないトトは、もっと力を得るしかない。
「武器を強化しないと。後、俺自身の体力も無いからトレーニングしないとなぁ」
ギルドに修練場はあるが、絡まれるのは嫌なので街の外でトレーニングをするメニューを入れる事にした。
鉄製の剣をベースに鉄製の防具を素材にして鋼鉄の剣を作成。以前の鋼鉄の剣よりも弱い。だが、またボロい武器を沢山混ぜれば元の強さを超せる。
「この世界特有の鉱物で武器を作った方が強いのかな?素材は…明日武器屋のおっさんに聞いてみよ」
箱をしまい、ベッドを戻して横になる。意識しないようにしていたが、身体の疲労はピークに達していた。数分と経たずに夢の中へ。
______
翌朝。
「ん…あぁ…朝か……ん?やべえ…筋肉痛だ…」
目が覚めると身体中に特有の痛み。筋肉がギシギシと軋む感覚。心当たりは1つしか無かった。
「原因は武装か…確かに終わった後の疲労感は凄かったな」
筋肉痛が次の日に来て良かったと思う反面。自分の身体の弱さを実感する。
「さて、薬草でも採りに行こう」
念入りにストレッチを済ませ、軋む身体のまま街の外へ。太陽が顔を出し、朝日が街道を照らし澄んだ空気が気持ちいい。
「この世界は自然が綺麗だ。化学工場も無いし、排気ガスや産業廃棄物も無いから水も綺麗」
朝の澄んだ雰囲気に癒されながら、いつものポイントへ。しかし先客が居た様で別の場所へ行く。
「低ランクの冒険者は森に入れないから、そりゃ薬草採取も増えるか…こりゃ皆採るから値が下がるな。仕方ない、今日頑張ったら来週まで大人しくするか」
比較的魔物が弱いこの街は、森に入れないE、Fランクが3割にもなる。割と実りの良い森に入れない冒険者が溢れていた。
トトは冒険者が居ない薬草スポットを発見。慣れた手付きでかつ急いで採取。筋肉痛なぞお構い無しで採りまくり一時間で200株近くを採取した。
そのまま急いでギルドへ向かう。周りから何急いでいるんだこいつという目を向けられるが、薬草を買い叩かれたくないので気にせずギルドへ入った。
「おはようございます。トトさん。今日は早いですねぇ」
「はい、森に入れない冒険者が薬草採取をしていたので急いで採取したんですよ。明日には値崩れしますよね?」
「…ふふっ。流石ですね。確かに値崩れしてトトさんでも半額以下になります。普通初心者はそんな事考えませんよ?」
「たまたまですよ」
値踏みする視線を受けながら、採取した薬草を提出。
「はい…200株丁度です。そうですね…もう薬草は採らないんですか?「はい」それは残念。では金貨5枚と銀貨5枚でどうですか?「お願いします」了解しました」
「ありがとうございます。そういえば来週って何日後ですか?」
「3日後ですよ。時間は…早朝4時前のギルドが開く前には来てください。そしたら例のお達しする場面が観れますよ」
「あっ、楽しみにしてます」
例のお達しとは受付嬢に内部調査をしていた事を通達するのだろう。
因みにこの世界の時間は24時間、暦もほぼ同じ。なのでトトには分かりやすくて助かっている。
3日後なので、それまでは依頼を受けずに調整に充てる。冒険者ランクは護衛依頼が終わったらEランクに上がる見込みらしい。
用事は済んだので、ギルドを出て武器屋へ。
武器屋に入ると、冒険者の姿が多い。幾つかのグループに分かれて山狩りを行っているので、街に居るグループは武器屋や防具屋に足を運んでいるのだ。
(今日は、20か。買おう。でも毎日こんなに廃棄の武器が出るもんかね?子供が小遣い稼ぎで拾って来るとかかな?)
冒険者達の馬鹿にする慣れた視線を浴びながら、ボロい武器を購入。剣8本、杖2本、斧2本、槍3本、弓2本、ナイフ3本。
混んでいるので、武器の素材については聞けず近くの防具屋へ。
防具屋も混んでいたが、お買い得コーナーに人は居ないのでゆっくりと眺める。
(皮製の防具って臭そうだよな…使い古した野球のグローブとか臭かったし…正直中古の防具は無理だ)
武器なら大丈夫だが、防具の中古は血や汗などが染み付いている。目の前にある中古の皮の胸当てを見ながら思う。脇汗ダイレクト染み込み防具は無理だと。
(皆中古の防具を買ってるけど、ちょっと引く俺は潔癖なのか?毎日着ている防具だぞ?毎日染み込む脇汗が秘伝のタレ状態なんだぞ?)
少し気分が悪くなったので、銀貨1枚のガントレットを3つ購入して防具屋を出る。
その後は雑貨屋で日用品を買い、薬屋に入った。
「いらっしゃい。何の薬が欲しいんだい?」
「あの、今日はこれが何か教えてもらいたくて」
収納から出しておいた戦利品のポーションらしき小瓶を渡す。
すると店主がささっと小瓶を分けてくれた。
「ポーションが5本、毒消し3本、ミドルポーション1本、攻撃薬」
「攻撃薬?」
「一時的に攻撃力が上がる薬さね」
「あっ、なるほど。ありがとうございます。じゃあ防御薬とかあるんですか?」
「あるよ。防御薬、素早さ薬、魔攻撃薬、魔防御薬。それぞれ銀貨5枚さね」
「へー。じゃあ1つずつ下さい」
金貨2枚を払い、能力アップの薬を購入。薬屋を出て、隣の魔導具店へ入った。
「いらっしゃーい」
「どうも」
中はコンビニ程の大きさ。棚が置かれ、綺麗に魔導具が並べられている。
照明や魔導コンロ等の家庭用魔導具。魔物避け結界や虫除け結界の外出用魔導具。使い捨ての魔法が込められた魔導具等様々だ。
(鑑定の魔導具ってあるかなー…おっ、あった!高いなー…)
カウンター近くには、高価な魔導具。収納バッグは50センチ四方の容量でも光金貨が数枚飛ぶ。鑑定士の魔導具は変なメガネ、物の価値や魔物のクラスが分かるだけの簡易的なメガネでも光金貨1枚…日本円だと100万円だ。
これ以上の性能は無く、王都に行けばある様だ。
「手が出ない…こりゃ素材を探した方が良いかな。すみません属性石ってありますか?」
「左の棚にあるよー。大きさや種類にもよるけど、ランクFなら大体銀貨5枚からだよ」
物や武器防具にもランクはある。冒険者ランクと一緒でFが最低、SSが最高。トトは自分の武器ランクを知らないが、爆炎の戦斧はSランク以上であって欲しいと願っている。
左の棚にある属性石を確認。赤、青、黄、緑の石が置いてあり、それぞれ値段が張り付けてある。
(宝石の原石みたいだな。あれ?この青い石って戦利品にあったな。青色属性の属性石だったのか)
この世界の魔法は色で分けられている。赤は火属性。青は水、氷属性。黄色は土、鉄の属性。緑は風という具合だ。
属性石を吟味し、とりあえず赤、黄、緑を1つずつ購入。
後は欲しい物はあるが手が出ない物ばかりで、王都に行ったら良い物があると期待した。
「これで魔導銃が作れる。人目の付かない場所に行こう」
ご機嫌な顔で街を出る。ギルドの横を通ったら、薬草を抱える冒険者が溢れていた。