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流れの武器屋  作者: はぎま
ニーソの街
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森は立ち入り制限だそうです

「んー…居ないか。ギルドに行けば分かるかな?」


 一時間程探したが助けた女性は見つからず、とりあえず疲れたので帰り道に薬草を詰みながらギルドに戻る事に。途中冒険者にすれ違う事も無く、魔物も居なかったのですんなり森を出た。


 帰りながら摘んでいた薬草は40株程採れたので、腰を伸ばしながら街を目指す。



「先ずは護衛依頼を受けて…薬草と、オーク2体ぐらい出しとけば良いか。赤いオークは素材に出来そうだし…後はまた剣作らないとなぁ」


 街に入ると、冒険者や衛兵がフル装備をしている。トトは特に気にせず歩く。


 街の様子がおかしい事に気付かず、少し重い足でギルドに入った。


 中は重装備の冒険者が多く、爆発について議論を交わしている。


「ふーっ疲れたー。……イケメンハゲおっさんは居ないか(他の受付はピンはねされるし…仕方ない…薬草だけ納品するかな)」


 気は進まないが、ツールが居ないのでは仕方ない。痛みやすい薬草だけ納品する事にした。


 とりあえず3つある適当な受付に並ぶ。



(確か…魔物は魔石を入れっぱなしにしてれば、鮮度は長持ちするって講習でやっていたから少しくらい置いといても大丈夫だろ)


「おい、あれ薬草野郎じゃね?」「うわー。帰ってきたかー帰って来ないに賭けちまった」「俺は儲けたぜ!」「何?警戒指定なのに森に入った?バカじゃないの?」


(騒がしいな…森が警戒指定?そういえば朝ギルドに寄って無いから聞いて無いや)



 冒険者の話を流し聞き、次に作る武器の事を考えながら順番を待つ。


「次の方どうぞ」

「はい、これお願いします(この人は確かミランダって人だな)」

「薬草ですね。確認させて貰います(薬草って呼ばれてる人だけど。顔は前髪で半分隠れてるからよく分からない…服装は地味。20点ってとこかな?)…40株で銀貨6枚になりますがよろしいでしょうか?」


「あっはい。お願いします(銀貨6枚だから25%減…ピンはねは3割以内だからセーフなのか?美人だけど、なんか見下されてる気がする。どうせ15点とか点数付けてるんだろうな…)」



 受付嬢との恋ってどうなれば成立するんだろうな…と考えながら報酬を受け取る。ついでにツールの依頼を確認する事に。



「あのー。ツールさんから依頼を貰っているんですが、受けられますかね?」


「はい、少々お待ち下さい…。(何?特別指名依頼?Fランクの薬草が?)申し訳ありませんが、また後程いらして貰って構いませんか?ツール本人から話をしたいそうなので」


「了解です。ありがとうございました(美人と話すと緊張するよなー)」




 受付嬢から探る様な視線を受けながら報酬を受け取り、ギルドから出ようと入り口へ向かおうとすると何やら集団が入ってくる。


 ベテラン風な冒険者が揃っている。例の爆発の調査団が帰って来たのだ。


(あっ、ツールさんが居る。何だろう?発表がある?)



 トトは何が始まるんだろうと、壁際に寄り事の次第を見届ける。


 冒険者達が注目する中、壇上に上がったギルドの係が話を始めた。


「皆さん、例の爆発音の調査を行って来ました。その場所は魔物が集落を作っていた場所と思われ、そこで激しい戦闘があったと思われます。オークは見られましたが大きな魔物は確認出来ておりません。つきましては、森の立ち入り制限と冒険者Dランク以上の者による山狩りを行いたいと思います。ご協力宜しくお願いいたします」



 ざわざわ、ざわざわ。

 冒険者の反応は様々だ。協力するか相談する者、喜び勇んでいる者、嫌そうにしている者。様々な話が飛び交っている。


 強制召集では無いものの、断ると信用に関わる為断りにくいのが現状だ。


 森に制限がかかり、Dランク以上なら入れる。トトはFランクなので森には入れない。



「以前から言われている外見特徴から、クラス4の魔物の可能性があります。皆さん連携を取り合って行きましょう」


「おう!」「よし、俺が一番乗りだ!」「うわークラス4かよ。やだなー」「いてて、お腹が痛え」「報酬出るよな?」



(んー?大きな魔物?あのオークかな?……でも…なんかもう止められない雰囲気だ…俺が言ってもバカにされるだけだし…全部素材にすれば証拠は残らないか?)



 特に悪い事はしていないのだが、ここでしゃしゃり出ると良くない未来が待っている気がして大人しくしていた。


 ツールがチラチラこちらを見ているが、トトは全力で目を逸らす。前髪で目は隠れているから分からないのだが。



「ねえ!ブルは見なかったかい?あたいのパートナーなんだ!」


「いえ、見ていません。このアクセサリーは落ちていましたが見覚えは?」


(ん?あの人は…良かった。助かったのか)


「これは…ブルの…くそっ…なんてこった…」



 トトが助けた女性は生きていたので心残り無く安心する。パートナーを亡くしたのは残念だが、手の届く範囲で助けられたので話し掛けずにそっとしておこうと思っていた。


 山狩りに行く冒険者が受付に並び、依頼を受理していく。それをボーッと見ながら終わるのを待っていた。ツールと話す為である。



(このまま帰ると嫌みが凄そうだから待っていよう…あのイケメン腹黒そうだし)



 ホークアイの爽やかな笑顔を思い出すが、それと同時に獲物を狙う様な視線を思い出してぶるっと震える。


 もうすぐ夕方。夜の山狩りは危険なので、森の入り口で待機し朝になったら決行する手筈の様だ。


 トトには関係無い訳では無いが、参加は出来ないので冒険者が雑談するのを横目に聞いていく。



(もし、俺の闘いが原因なら…皆に心の中で謝っておこう…)


 徐々に冒険者が捌けて来たので、ツールの受付に並んだ。



「はい、次の方どうぞ。おっ、トトさん、朝に森に入ったと聞いて心配していたんですよ。無事で何よりです」


「はははっ、なんとか無事でした。ところで、昨日言っていた依頼を受けようと思いまして」


「ああ、そうでした。トトさんはFランクなので、特別指名依頼とさせて頂いてます。特に意味は無いんですが、ただの箔付けなので気にしないで下さい」


「はぁ、了解です」


 冒険者カードを提出して、依頼を受ける。来週から1週間の護衛依頼。



「はい、これで完了です。あと、一応聞いておきますがオークには遭遇しましたか?」


「しましたよ。木の上に居たので気付かれずに済みました(逃げの一手!)」


「そうでしたか。それはそれは…(…何か知っていそうだが、気のせいか?)…冒険者が何人も殺られた様なので、森に入るのは控えて下さいね」


「了解しました。(目が怖い…森には行かないでおこう)薬草採りながらゆっくりしようと思います」



 用件は済ませたので、挨拶をしてギルドを出る。ふーっと深呼吸しながら、宿屋へ戻る。着替えて少し軋んだ身体をほぐしながら今日の出来事を思い返した。



「バレたらどうしようかとヒヤヒヤしたな…とりあえず戦利品を見よう」




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