迷宮・天国への階段。
目の前にいる大きな悪魔。
身体中から黒い角が生えた身体。蝙蝠の様な真っ黒い羽を開き、黒光りした丸太の様な太い手足がその強さを示している。
トトは先頭を歩いて悪魔の近付く。
悪魔は侵入者が来た喜びを表現する様に轟く咆哮を浴びせ、トトに大きな拳を振り下ろして来た。
しかし、その拳はトトに当たらず、シャンッ_という音の後、地面に腕が落ちるという結果に。
困惑する悪魔を尻目に、ノーレンの弾丸が悪魔の頭に直撃。大きく仰け反る。
仰け反る身体の下に潜り込んだノワールが両足を切断。
ドン!_仰向けに倒れた悪魔の首をタケルが救世剣で両断した。
悪魔の沈黙を確認。悪魔の死骸を武器に変化させた時、ガタンという音が鳴り、階段への道とは別の場所に隠し通路が開く。
通路は小部屋があり、金色宝箱が一つ。
「開ける人によって中身が変わるんだけど…誰が開ける?」
「とりあえずノーレン君で」
「そうですね。最初だからノーレンで良いんじゃないです?」
「えっ、じゃあお言葉に甘えて…」
ノーレンが金色宝箱を開け、皆で中身を確認した。
≪聖騎士剣・ダブルクロスブレイド、ランクS、攻撃2300≫
≪聖騎士盾・ダブルクロスシールド、ランクS≫
≪聖騎士鎧・ダブルクロスアーマー、ランクS≫
「騎士系だなぁ」
「ご令嬢を守れというお告げだね」
≪それなりにエッチな本、ランクB≫
≪モテる男の教科書、ランクB≫
≪エッチな水着、ランクS≫
≪初版・気になる人に嫌われない方法、ランクB≫
「…」
「まぁ、思春期だもんな」
「ノーレン、勉強するのよ」
≪結界石、ランクB、クラス6まで対応≫
≪まぁまぁ格好良い服、ランクB≫
≪それなりの靴、ランクB≫
≪ダサくは無いベルト、ランクB≫
「…兄ちゃん」
「…どうした?」
「俺、もう宝箱開けない」
「…分かった」
モテたい少年の夢が詰まった宝箱は、ノーレンには恥ずかしかった様子…ノーレンの気持ちを察して、聖騎士セットをノーレンが装備している剣と合成してあげた。
≪聖剣・ダブルクロス、ランクS+、聖戦士レベル89、攻撃3266、守護聖技、回復魔法、自己修復、≫
「…兄ちゃん、これ…聖剣だよ…」
「頑張れ勇者様」
「ノーレン君、お揃いだねー」
「ノーレンが勇者になるんですか?…頑張れノーレン」
この階に宝箱はもう無いので、階段へ向かい下りていく。
一分程下りると、小さな泉がある部屋に出た。
「これってただの水かな?」
「なんか魔力が回復する水みたいだよ。ここで休憩しろって事かな?」
「ふーん。各階に水場があるって事は、深いダンジョンなんだろうな。そういやタケル、レベル上がったな…何その伸び率」
≪タケル・マツダ、勇者レベル75、強さ7750≫
「前はもっと伸びたよ。でもこの調子なら、一週間で全盛期を超えられると思う」
タケルは地道にレベルを上げていた時期を懐かしそうに話始める。今のようにクラス7をいきなり倒していた訳では無く、仲間達に見守られ、最弱のゴブリンやらを一生懸命倒してレベルを上げていた。懐かしそうに話すタケルは、仲間の話になると寂しそうに笑い、話を切る。
「…よし、次に行こうか」
「…ああ」
通路は再び二手に分かれ、ボス級の魔物がいる部屋と、遠回りする通路になっており、もちろん魔物が居る部屋に向かう。
≪天使11式、ロストエンジェル、クラス7、強さ23807≫
「おー、次は天使だな」
「でも…天使っていうか…ロストデーモンが白くなっただけだよ」
「イメージぶち壊しだな」
白く見上げる程の身体中に、白い角が生え、白い翼が広がりヒラヒラと白い羽が舞う。
人形の様な無機質な顔を向け、光の魔法陣が出現。
魔法陣が白く輝く中、トトが先頭に立ち、天使を見据える。
『_フォトン…レーザー』
天使が手を向け、白いレーザーを放つ。
トトは右手を向け、「…変換」レーザーを受け止めた。
トトが受け止めたレーザーは白い球状の光になり、トトの前に停滞している。
トトが光を左手で握り、天使へと駆ける。
再び天使が魔法陣を展開。魔法が発動する前にトトが天使の脇腹に到達していた。
「_業拳」
ゴキンッ!__天使が横に折れ曲がり、魔法陣が四散。
ノーレン、ノワール、タケルが追撃。
天使は呆気なく沈黙した。
「泰人、今の何したの?」
「あぁ、天使の魔法を攻撃力に変換したんだ。ラグナに武器師の能力を強くして貰ったんだよ」
「…それ凄くない?その攻撃力ってあの光の玉だよね…僕も使えるの?」
「使えるぞー。後でやるよ」
天使を武器に変化させ、ガタンと隠し通路が開く。
小部屋には金色宝箱。
「次は…」
「じゃあ…タケルさん」
「僕?分かったよー」
タケルが宝箱を開けて、中身を確認。
「…」
そして、バタンと宝箱を閉めた。
「…タケル、どうした?」
「…次、行こうか」
「中身は、何ですか?」
「…何も無かったから、次…行こうか…」
「タケル…中身を見せろ」
「…嫌だ」
顔を青くしているタケルに、不審に思ったトト。素早く移動し、タケルを押さえ付ける。
「行けッ!ノーレン!」
「分かった!」「見ないでぇ!」
ノーレンがトトとタケルを横切り、宝箱を開ける。
「…」
そして、バタンと宝箱を閉めた。
「ノーレン?どうした?」
「兄ちゃん、もう…行こう」
「…ノーレン君」
タケルとノーレンが何か通じ合っている中、隙を見たトトが宝箱を開けた。
「…うわ」
宝箱の中には、十体の女神人形。
全て緑色の髪をしたお姉さんの人形だった。
トトは収納しようとしたが、出来ない。どうやらタケルしか収納出来ない仕様になっている。
「タケル、持っていけ」
「…泰人、駄目だ。それは置いて行こう」
「いや、置いて行ったら不幸が起きる」
「…持っていても不幸になったよ」
「それでも、だ。今回は俺が居る。大丈夫だ」
「…泰人」
タケルは少し悩んだ末、渋々宝箱を収納。
「僕は、もう…宝箱を開けない」
「…分かった」
「…次は…姉ちゃんだな」
ノワールは凄く嫌そうな顔をしている。
その顔に、宝箱を開けるワクワク感は既に無かった。